上場一周年を祝う丸の内の大宴会場で、株式会社アスターリンクの社長・相沢琢磨は、才色兼備の女性最高幹部・水上水希との婚約を電撃発表した。会場の末席でその言葉を聞いていたのは、創業期の極貧時代から七年間彼を無償で支え続けた同居人・神谷咲だった。「今の二人は、もはや同じ未来を歩く相手ではない」――報道陣の前で過去を冷酷に切り捨てられた咲は、かつて贈られた細いプラチナリングを静かに外す。 彼を立てるために素朴な女を演じ、口を閉ざしてきた咲。だが彼女の正体は、日本屈指の名門企業・神谷ホールディングス創業一族の長女だった。咲が去った直後、三十億円規模の大型資金調達が突如暗礁に乗り上げる。焦る琢磨が目にしたのは、七年前の事業計画書に残された咲の鋭い鉛筆の筆跡と、大物投資家が口にした信じがたい事実だった。自分を社長へと押し上げた真の存在に気づいた男の前に、幼馴染の九条礼司を伴い、自らの足で立ち上がった咲が現れる――。