みかん小説
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"七年の指輪を外す夜" 第5話

「……今の私たちは、もはや同じ未来を隣りって歩くべき相ではない。ただ、それだけのことだとっております」

その瞬。 私の指先を支配していた細かな震えが、嘘のようにピタリと止まった。

のが音をててに絶える瞬というのは、裏切りの現を目撃したではない。 かつて世界ので誰よりもく自分を理解し、してくれていると信じていたが、共に積みげてきたという歳を、まるで古びて採算のわなくなった採算事業をリストラするかのように、無質で理な言葉で片付けたなのだ。

私は、子に座ったまま、の指先をの薬指に掛けた。 皮膚にい込んでいた細いプラチナの輪を、音もなく根元から引き抜く。

ステージへ駆け寄って指輪を投げつけることもしなかった。 目も憚らず泣き叫び、彼の実を責めてることもしなかった。 祝宴が終わった、控のドアのでち尽くし、彼からの見苦しい言い訳を待つこともしなかった。

私は静かに席をった。 荷物のさなクラッチバッグを抱え、拍と歓声が鳴り響く宴会の、番ろのい扉をそっと押しけた。

ホテルの廊には、毛のいの絨毯が敷き詰められており、私のヒールの音を吸い込んで、片の音もてさせなかった。

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閉ざされた分い扉の向こうから、遅れて届く万の拍だけが、くぐもった振となって背に伝わってくる。

エレベーターホールへ向かう通の途に、真鍮製の分別用ダストボックスが置かれていた。 私はち止まり、の平のに握りしめた細い指輪を見つめた。 属のたさが、皮膚の奥へと突き刺さる。 腕を伸ばし、そのゴミ箱の投入ので掌をきかけた。

けれど、私は指輪を落とさなかった。 未練があったからではない。 ただ、自分の代のすべてを捧げ、からをしたというを、な衝に任せてゴミ箱に投げ捨てるような、っぽい終わり方だけはしたくなかったからだ。

私はリングを、羽織っていたトレンチコートのポケットの奥くへと滑り込ませた。 そして、そのまま度も振り返ることなく、エレベーターへと乗り込んだ。

ホテルの回転ドアを抜けてへると、の夜の京の気が、容赦なく私の剥きしの首筋を打ち据えた。 丸の内の然としたオフィスには、層ビルのを縫うようにして、乾いた枯らしが吹き荒れている。 のイチョウの葉がアスファルトのをカサカサと音をてて転がり、き交うビジネスマンたちのコートの裾を揺らしていた。

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私は歩の端、灯のいが落ちる植え込みの脇でを止めた。 バッグのからスマートフォンを取りし、アドレス帳をく。 この、私の側からはただの度も発信ボタンを押したことのなかった、ひとつの話番号。 迷いはなかった。え切った指先で、画面をタップする。

ツーツーという呼びし音が、わずか回。 度目の音が鳴るに、カチャリと通話が接続された。

『……咲?』

受話器の向こうから聞こえてきた母の声には、まず隠しようのない驚きがあった。 そしてその直、張り詰めたような、警戒を帯びた声へと変わった。

『……どうしたの。こんな夜遅くに』

私はをいた。 言いたいことは、のようにあったはずだった。 どうしてあの、私の言葉を聞いてくれなかったのか。どうして彼は変わってしまったのか。この、私がどれほど孤独で、どれほど必だったのか。 だが、胸の奥からせりがってきた無数のの塊は、たい喉を通り抜けるにすべて削ぎ落とされ、最に残ったのは、震えるような、けれど極めて簡潔なたった言だけだった。

「……お母さん。私、に帰りたい」

受話器の向こうが、シンと静まり返った。 くで、な柱計の振り子の音だけが微かに聞こえてくる。

、私は相沢琢磨という男と緒にきていくという、ただそれだけの理由のために、まれ育った族と事実の絶縁状態を選んだのだった。

私のは、神(かみや)という。

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