"七年の指輪を外す夜" 第23話
そして、点目――」
私は、類から顔をげ、彼の目をまっすぐに見据えた。
「顧客のカスタマイズ求や製品仕様の最終決定権が、現もなお、相沢社個に過度に集しているように見受けられます。組織としての議制のガバナンスが能しないままでは、社個に測の事態が起きた際、プロジェクト全体が座礁するキーマンリスクを排除できません。この点について、どうお考えですか」
会議のに、数秒の完全な静寂が落ちた。 かつての琢磨であれば、即座にをわにし、自己の正当性をまくしてて反論していただろう。 しかし――。 琢磨は、元の分い資料を枚ほどめくり、く目を閉じて考を巡らせた、静かにをげた。
「……神副部のご指摘の通りです。その点のリスクについて、現の弊社の体制では、分な解決策を提示できておりません。私の認識の甘さです」
神ホールディングスの経営委員会がした最終結論は、「現点での投資見送り」だった。 ただし、払いではない。「組織ガバナンスとコスト構造の改善を確認できた段階で、次期ラウンドでの再検討をう」という、極めて建設で公平な評価だった。
会議が終わり、全員が退したの暗い廊で、資料を抱えてエレベーターを待っていた私の元へ、琢磨がにづいてきた。
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「……咲」
私は振り返った。 琢磨は、なぜ落としたのかというみ言をにすることはなかった。 ただ、どこか憑き物が落ちたような、静かな差しで私を見つめ、こう尋ねてきたのだ。
「……昔も、そうやって俺の見落としていた穴を、全部で見てくれていたんだな」
私は、しだけ沈黙した、さく頷いた。
「ええ。創業したばかりの頃は、結構たくさんね」
琢磨は、自嘲気にフッとく笑った。 それは、自分自の過の過ちを、ようやく骨の髄まで受け入れたの、乾いた納得の笑みだった。
「……じゃあ、昔の俺は、自分の力だけで正しい決断をしてきたわけじゃなかったんだな」 「自分の力だけで百発百のなんて、世界にもいないわよ」
琢磨は、く項垂れた。
「それなのに……俺はどうして、自分で勝てるんだって、あんなにいがっていたんだろうな……」
私は、何も答えなかった。 答えなど、もう彼自のにあったからだ。 かつて彼が、崖っぷちに向かって猛スピードで突きむたび、そので誰かが『もしこれがれたら?』と静かに問いかけていた。その問いかけが、彼を幾度となく破滅の淵から救っていたのだ。
琢磨は、い沈黙ののち、ゆっくりと顔をげ、々とをげた。
「……ありがとう。、本当にありがとう」
それは、かつて私が彼のために捧げてきた無償のと献に対して、彼がまれて初めて、何の打算もなくにした、からの謝の言葉だった。
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「……いいえ。もう、過のことよ」
チーンという音とともにエレベーターの扉がき、私はへと乗り込んだ。 閉まりゆく扉の向こうで、琢磨は背筋を伸ばし、くをげ続けていた。 その姿を見届けながら、私ので、の残照が完全に美しいいへと昇華されていくのをじていた。
それから半が過ぎた、の始まりのことだった。 たいが吹き抜ける週末の午、私と条礼司は、鎌倉の岸沿いの遊歩をで並んで歩いていた。 沖から吹きつけるいが、私のコートの裾を激しく揺らす。
防波堤の切れ目に差し掛かった、を歩いていた礼司が、にを止めて振り返った。
「……咲」 「ん?」 「もし今、こので区役所にって婚姻届をすと言ったら、おはすぎるとうか?」
私はを止め、驚いて目を見張った。
「……それ、プロポーズのつもり?」 「応な」 「指輪は?」
礼司は、秒ほど真顔でポケットを探り、それから気まずそうに線を逸らした。
「……忘れた」
私は、こらえきれずにそので吹きしてしまった。 お腹が痛くなるほど笑い転げる私を見て、礼司も観したように苦笑いを浮かべた。
「……じゃあ、ちゃんと指輪を用してから、もう回聞きなさいよ」 「分かった」
ヶ。 予約された静かなレストランの席で、彼は本当に、今度は完璧なサイズのダイヤモンドリングを用して、もう度同じ言葉をにした。