"七年の指輪を外す夜" 第3話
私は、それ以何も言わなかった。信じたかったからだ。 だって、私たちはものを共にしてきたのだ。 彼が財布のに数百円しか持っていなかった、最も惨めで苦しかった創業期も、誰からも見向きもされずに嘲笑されていた代も、そして、何よりも世界ので私だけを番切にしてくれていた代の彼を、私は誰よりもっていたから。
学を卒業する直、琢磨は以のをかけて、器用なほど途に私にいを伝え続けてくれた。 激しいがるの夜、傘も差さずに駅の改札で私の帰りを何も待っていたことがあった。 私が邪をこじらせて寝込んだには、自分自もをしていたにもかかわらず、くのから夜に駆けつけ、お粥を作ってくれたことがあった。 私の誕にプレゼントを買うためだけに、学の講義のを縫って、つの肉体労働のアルバイトを掛け持ちしていたこともあった。
そして、学の卒業旅の帰り。 見通しの悪い交差点で、信号を無したワゴンが歩に突っ込んできたあの瞬。 ヘッドライトのに射すくめられた私を、琢磨は切の躊躇もなく突きばし、自らがへとを投げしたのだ。 にはねられた彼は、アスファルトのを転がり、の肋骨を本折る傷を負った。
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救急病院の集治療で、麻酔から覚めてうっすらと目をけた彼が、管だらけの体で最初ににした言葉は、痛みに喘ぐ呼吸混じりの『……咲、怪はなかったか?』という確認だった。
その、病のベッドサイドで涙を流しながら、私は初めて彼のいを受け入れたのだった。
だから、私はずっと信じ込んでいた。 は忙しくなれば、に帰るは遅くなる。 責任がくなれば、数だって減る。 の考の割分を仕事が占めてしまうような過酷な期だって、ベンチャーの経営者にはあるはずだ。 それでも、あの嵐のような々ので積みげてきた私たちの絆の根底にあるものは、何があっても変わらないのだと。
私は、違っていたのだ。
琢磨は、恭しくをげる司会者からワイヤレスマイクを受け取った。 彼がマイクのスイッチを入れる微かなノイズが、会のスピーカーから音となって響く。
「――私なご報告のために、皆様の貴なおを頂戴することをお許しください。アスターリンクが今というを迎え、証プライムへのがかりを築くことができましたのは、ひとえにここにいらっしゃる皆様の温かいご支援の賜物です。そして……創業期からの荒波を共に乗り越え、今まで私を隣で支え続けてくれた、社内の仲たちのおかげになりません」
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琢磨は言葉を切り、ゆっくりと首を巡らせて、隣につ希を見つめた。 その差しには、隠しようもないい敬とが宿っていた。
「でも、経営企画を率いる希さんには、言葉では尽くせないほどの力をもらいました。彼女は、単に私のビジネスのとなっていてくれる優秀な腕であるだけにとどまりません。私が抱くビジョン、この会社がこれから世界へ向けてどのような景を見にこうとしているのか――その未来の青写真を、私自と同じさで共し、共に描いてくれる、唯無の理解者です」
希が、恥じらうように、けれど誇らしげに顎を引いて彼を見つめ返す。 琢磨はきく息を吸い込んだ。その声には、切の躊躇も、震えもなかった。
「ですから、私はこれからのにおいて、ビジネスの現だけでなく、歩んでいくのすべてのにおいても、彼女と同じ景を見つめながらきていきたいと決いたしました。……私、相沢琢磨は、本、希さんと婚約いたしましたことを、ここにご報告申しげます」
瞬の静寂の、会全体が割れんばかりの拍の渦に包まれた。
「おめでとう!」「素らしい!」「お似いのだ!」
方の円卓に座る株主や取引先の鎮たちがちがり、惜しみない賛辞の声を投げかける。
ステージの列に陣取っていたメディア席では、無数のフラッシュが斉に焚かれ、い閃がの姿を眩いほどに浮かびがらせた。