"七年の指輪を外す夜" 第11話
「いいわよ」
私たちは、で部へと戻った。 私の私物がすべて撤されたリビングは、驚くほどガランとしていて、声が自然に反響した。 ガラステーブルのには、昨夜の婚約発表のニュースをカラー写真付きできく報じた経済が、無造作に広げられたままになっていた。面のトップには、スポットライトを浴びて微笑みう琢磨と希の姿が、鮮に印刷されている。
私のややかな線に気づいた琢磨は、慌てたようにを伸ばし、その聞を裏返して界から隠した。
「……昨の発表のやり方は、よくなかったとってる。マスコミの、ああするしかなかったんだ。でも……ちゃんと、事に咲には話すつもりだったんだよ」
「いつ話すつもりだったの?」
私の静かな問いに、彼は瞬だけ言葉を詰まらせた。
「……すべての発表が、終わったに」
私は、わず乾いた笑いを漏らしてしまった。
「つまり……投資や記者クラブの、何百もの列席者たちに先に伝えて、その番最に、緒に暮らしてきた私に事承諾を取る予定だったわけね」
琢磨の眉が、苦痛に歪むように寄った。
「……先に君に話したら、納得してくれたか?」 「私が納得しないとったから、あんな勢ので既成事実を作って、逃げを塞いだんでしょう?」 「そういうで言ったんじゃない!」
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「でも、あなたがやったことは、まさにそういうことよ」
琢磨は答えを失い、固く唇を噛み締めた。 リビングの窓のを、急横線のがゴトゴトといレール音をてて通過していく。 数秒の苦しい沈黙の、琢磨は両で顔を覆い、絞りすようない声で言った。
「……咲。俺たちはもう、あの頃の歳じゃないんだ」
彼はゆっくりと顔をげた。その瞳には、自己正当化のための必のが宿っていた。
「こので、俺を取り巻く世界は何もかもが変わったんだよ。俺が毎向きっているのは、数億円の資調達であり、グローバルな展であり、競社との激しいパイの奪いいであり、千を超える株主たちの線なんだ。……希は、その圧を完全に理解してくれている。俺がいちいち言葉にして説しなくても、俺が今何に怯え、次にどこへ向かおうとしているのかを、瞬に察して並してくれるんだ」
私は、ただ静かに頷いた。
「だから……彼女の方が、今のあなたにふさわしいパートナーだとったのね」 「そんなたい言い方をしたいわけじゃない!」 「昨の壇で、あなた自がカメラのでそう言ったじゃないの。『今の僕たちは、もう同じ未来を歩く相ではない』って」
琢磨が息を呑み、言葉を失って沈黙する。 私は、彼の元を見つめたまま、ずっと胸の奥底に澱のように溜まっていた疑問をにした。
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「ねえ、琢磨。……いつから、私があなたの仕事を分からないだって、そうい込むようになったの?」
琢磨は、まるで予もしていなかった質問をぶつけられたかのように、驚いた顔をして私を見つめ返した。
「……分からないって言ってるわけじゃない。ただ……君はもう何もから、会社の事業について何も聞いてこなくなっただろ。記のイベントや業界のレセプションに誘っても、『私は慮しておく』って断ることが増えた。に帰ってきて俺が仕事の愚痴をこぼしても、君の反応はいつも当たり障りのない相槌ばかりだった。……俺たちので、仕事の話ができるは、とっくの昔に失われていたんだよ」
彼は度、くため息を吐きした。
「咲が悪いって言ってるんじゃないんだ。君は、今でも俺のにとって、誰よりも切な恩だとってる。……でも、切だからといって、今の俺の妻として、同じ未来を背負っていけるかどうかは、別の問題なんだよ」
その言葉を聞いた瞬。 私の胸の奥に、信じられないほどの静寂が広がっていった。
まるで、成期を終えたIT企業が、創業期を支えてくれた古いレガシーシステムを『功労者ではあるが、次のステージには適しない』という理由で、静かに減価償却し、廃棄処分するの説そのものだった。 悪いシステムではない。
謝はしている。ただ、これからのスケールには耐えられないから、お引き取り願う――。