みかん小説
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"七年の指輪を外す夜" 第4話

希のった顔ちが、歓の笑みに崩れる。 琢磨はスーツの内ポケットから、黒いベルベットのリングケースを取りした。 パチンと蓋がかれ、シャンデリアのを浴びて粒のダイヤモンドが眩い虹のを散らす。 彼は希の細い指を取り、迷いのない所作で、そのプラチナの指輪を彼女の薬指へと滑り込ませた。

私のすぐ斜めの席に座っていた、経済誌の若い女性記者が、隣の男性デスクに向かって興奮気に囁く声がに届いた。

「やっぱり! 最、どこのパーティでも必ずきりで席されていたから、業界内でも噂になってたんですよね」 「ああ、まさに完璧な組みわせだな。創業社のカリスマ性と、それを完璧に補佐する才兼備の最幹部。仕事のパートナーがのパートナーになるなんて、これ以ない絵になるサクセスストーリーじゃないか」

絵になる、サクセスストーリー。 その言葉が、私の鼓膜の奥でたく反響した。

私は、膝のにねていた自分のを見ろした。 のあの夜、暗い目黒の部で、缶ビールの泡を見つめながら琢磨が私の指にはめてくれた、細くて頼りないシルバーの輪。 宝で数万円もせば買えるような、何の変哲もないそのリングの内側には、虫鏡で見なければ分からないほどさな文字で刻印が施されていた。

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『T to S』――琢磨から、咲へ。

その、最列の記者席から、のの男性記者がすっとを挙げた。

「相沢社、おめでたいに変躾な質問で恐縮ですが、点だけプライベートな件についてお伺いしてもよろしいでしょうか」

司会者が瞬、困惑したように顔を変え、制止のためにマイクを握り直そうとした。 しかし、琢磨は片を軽く挙げてそれを制し、余裕に満ちた笑みを浮かべてマイクを元へ寄せた。

「ええ、構いませんよ。何でしょうか」

「相沢社には、学代から創業期を支え、く私活を共にされてきた特定の女性がいらっしゃるという話を、以から古くからの関係者のでお聞きしておりました。今回のさんとのご婚約ということは……その方とは、すでに正式にお別れになられた、という理解でよろしいのでしょうか」

会の空気が、ふっとえた。 祝いの気のに、筋の鋭い刃が差し込まれたかのように、列席者たちの線がステージの央へと集する。

私は、息を止めて顔をげた。

もし彼が。 『私活のことですので、このでの回答は差し控えさせていただきます』とお茶を濁してくれてもよかった。 あるいは、瞬だけでも籠もり、苦渋に満ちた表を浮かべ、『自分の徳の致すところです』と、理がついていないことを認めてくれてもよかった。

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たった言でも、彼の声に迷いや、私に対する申し訳なさの揺らぎが残っていれば。 私はまだ、彼のに、あの貧しくも真っ直ぐだったの残照が息づいているのだと、自分を慰めることができたかもしれない。

けれど。 琢磨は、わずか秒ほどの沈黙ののち、何事もない平坦な調で、静かにマイクへと語りかけた。

「――ええ。ずっと以から続いていた、個な関係がありました。彼女とは、本当に々なを共に過ごしてきましたし、会社が何もないゼロだった期を支えてくれたことについては、今でもからく謝しています」

彼は、何千もの聴衆ので事業の撤退を告げると同じ、淀みのない完璧なビジネスのトーンを保っていた。

「ただ……は、置かれた環境がきく変われば、自ずと将来に見据えるビジョンや、に対する価値観も変わっていくものです。現の私が背負っている責任のさと、これから会社が目指すべき平を考えた……過の延線に留まり続けることは、お互いにとって誠実な選択ではないと判断いたしました」

記者が、さらに畳み掛けるように問いをねる。

「では、そのお相の女性とは、すでに双方ので、円満にお別れになられたということでしょうか」

琢磨は、その問いに対して正面から頷くことはしなかった。

ただ、線をわずかにくへと流し、ややかに言い放った。

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