みかん小説
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"七年の指輪を外す夜" 第8話

「ああ、聞いた」 「で、なんて答えたの?」 「『それは叔母さんの都であって、俺の都でも咲の都でもない』と答えた」 「……それだけ?」

赤信号でが減速し、フロントガラス越しに丸の内の夜景が滲んで広がる。 礼司は方を見据えたまま、淡々と言った。

「君のの予定は、君自が決めることだ。が勝にき込むものじゃない」

私は言葉を失い、黙り込んだ。 信号が青に変わり、は皇居苑の暗がりを抜け、首都速の入へと向かって加速していく。 内には、静かなジャズのピアノ曲が微かに流れていた。

「……どこへ送ればいい」

バックミラー越しに線を交わすことなく、彼が尋ねてきた。

「目黒のマンション。……神の実じゃないわ」 「分かった」 「に、実へ帰るから」 「……ああ」

それ以、礼司は何も尋ねてこなかった。 は夜の首都を滑るように駆け抜け、分ほどで、見慣れた目黒の並みへとりった。

マンションのエントランスでハザードランプが点滅する。 私はシートベルトをし、ドアノブにをかけた。

「……送ってくれて、ありがとう」 「、荷物がいならをす。必なら連絡しろ」 「自分で何とかするわ」 「そうか」

礼司の黒いが夜のへと消えっていくのを見届けてから、私はオートロックを解錠し、エレベーターで階の部へとがった。

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鍵をけてを踏み入れた部のは、完全な静寂と暗に支配されていた。 玄関の靴箱のには、今朝、がけに琢磨が脱ぎ捨てたランニングシューズが無造作に転がっている。 リビングのかりをつけると、ガラステーブルのには、私が今朝片付け忘れていったコーヒーカップが、半分えた液体を残したまま置かれていた。 型蔵庫のドアには、先週の曜に琢磨が黄い付箋にりきしたメモが貼られたままになっていた。

『曜の夜は会。遅くなるから待たなくていい』

私はその付箋を指先でつまみ、しばらくじっと見つめた。 そして、乾いた笑いをつこぼした。

今夜のあれは、ただのビジネスの会などではなかった。 彼は、最初からすべてをっていて、私に何も告げずにあのへと送りしたのだ。 『先に帰らないで。事な話がある』というメッセージのを、私はようやく完全に理解した。 彼は、勢のメディアと投資ので既成事実を作った、この部で、私に「物分かりのいい理解者」としてのの引き方を求するつもりだったのだ。

私はコートを脱ぎ、クローゼットの奥から型のスーツケースをつ引きずりした。 のに広げ、自分の持ち物を詰め始める。 クローゼットにかかった私の、本棚に並ぶ学代の専、キッチンで私が用していたマグカップ、そして、ベランダの片隅でかけて切に育ててきたフィカスの鉢植え。

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つずつ、自分ので選び、自分ので買ってきた私物だけを、淡々と仕分けていく。

この目黒のマンションは、築数こそ経っていたが、が良く、広さの割に賃は決してくはなかった。 、アスターリンクをちげたばかりの琢磨にはまだ定した事業所得がなく、当然ながら賃貸契約の審査に通るはずもなかった。そのため、この部の名義となり、敷と礼を全額支払い、毎の賃引き落とし座を設定したのは、ならぬ私自だった。 その、会社が軌に乗り、琢磨がタワーマンションにでも引っ越せるほどの役員報酬を得るようになってからも、彼は「会社にくて便利だから」と言い訳をして、この部にみ続けていた。 名義変更の続きをするのが面倒だったのか、あるいは、賃の支払いを私に甘え続けられる環境を放したくなかったのか。当の私は「節約なのだ」と好に解釈していたが、今となってはその浅ましさがに取るように分かった。

私はスーツケースのジッパーを閉めると、スマートフォンの画面をき、夜のうちにマンションの管理会社へ本のメールを送信した。 主契約者の退に伴う、契約者名義変更の続き類を急に郵送してほしいという依頼だった。

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