"七年の指輪を外す夜" 第7話
彼に連絡して、で迎えにかせるわ』
私はわず息を呑み、聞き返した。
「……条礼司が?」 『ええ。そうよ』 「お母さん、待ってよ。私が今、に帰りたいって言ったばかりなのに、もう次の見いの配をするつもり?」
受話器の奥で、母がぶりに、微かに喉を鳴らして笑った気配がした。
『誰が今夜すぐ結婚しなさいなんて言ったのよ。ただの迎えよ。……親が昔からあのを気に入っていることと、あなたがこれからのを誰ときるかは、まったく別の話でしょう』
私は唇を噛み締め、数秒のあいだ言葉を探した。
「……ちょうだい」 『?』 「目黒の部に、私の荷物がまだあるの。法な続きも含めて、全部綺麗に片付けたい。それが全部終わったら、ちゃんと自分ので帰るから」
母は、今すぐ帰ってきなさいとは言わなかった。 ただ、静かに、みのある声で答えた。
『分かったわ。……の鍵は、から度も変えていないからね』
話を切ってから、分も経たない頃だった。 たいが吹き荒れるホテルの寄せに、台の漆黒の級セダンが、音もなく滑り込んできた。 運転席のドアがき、の男がりてくる。
条礼司だった。
最に彼と顔をわせたのがいつだったか、すぐにはいせないほどいが流れていた。 神と条は、祖父の代からのい族ぐるみの付きいがあった。
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私の父と礼司の父は学代からの親友であり、物ついた頃から、両の親たちは冗談半分に「もしとも適齢期になっていい相が見つからなかったら、同士で結婚させよう」と笑いっていたものだ。 その言葉を聞くたび、私はいつも骨に嫌そうな顔をしてそっぽを向いていた。 そして礼司はといえば、そんなたちの戯言をにしても、否定も肯定もせず、ただ静かにめた瞳で私を瞥するだけだった。
、私が琢磨を選んでをると決めた、礼司は度だけ私のに現れ、こう尋ねてきた。
『……ちゃんと、自分ので考えたのか』 『考えたわよ。私はあのときていくの』
私がを張ってそう答えると、彼はく「そうか」とだけ頷き、それ以は引き止めようともせず、私のからちっていった。
久しぶりにで見る条礼司は、私の記憶のに残っていたのような面を完全に脱ぎ捨て、底れぬ凄みを湛えたの成熟したビジネスマンになっていた。 仕てのいい濃紺のチェスターコートを着こなし、首元にはダークグレーのマフラーを巻いている。彫りのい顔ちと、を容易に読み取らせない静謐な瞳は、昔としも変わっていなかった。
彼は歩にち尽くす私を瞥したあと、線をホテルのエントランス付へとらせた。
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そこでは、まだ興奮めやらぬ様子の経済の記者たちが、スマートフォンを片に琢磨の婚約発表についての記事の打ちわせをしていた。 礼司はそれらの景をわずか秒で網膜に収めると、助席のドアをけ放ち、私に向かってく言った。
「乗れ」
私はかず、そのにったまま彼を見げた。
「……何も、聞かないの?」
礼司はコートの襟をから守るように軽くてると、線をそらさずに答えた。
「話したくなったら、おのから話すだろ」
その無駄のない突き放したような言い方が、凍てついていた私の胸の奥くに、奇妙なほど鋭く突き刺さった。 おためごかしの優しい同の言葉をかけられたからではない。 むしろ、無慮な詮索を切せず、私の領域にで踏み込んでこない彼の絶対な距が、今の私にとっては砂漠ののようにありがたかったのだ。
私はさく息を吐き、かれた助席へと滑り込んだ。 シートヒーターの柔らかな温もりが、え切っていた太ももと背を包み込んでいく。 礼司が運転席に乗り込み、スタートボタンを押すと、エンジンが微かな音を響かせて目覚めた。
私はわざと、何気ない軽い調を作って尋ねた。
「……お母さんから聞いたんでしょう? 私をあなたに嫁がせたいって、また息巻いてるの」
礼司はウインカーをし、滑らかにを通りへと流させた。