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大晦日の離婚届

大晦日の離婚届

深夜、妻が不倫相手との密会から帰ってきた。 「ただいま。今日も疲れちゃった」 何も知らないふりをして笑う妻に、俺は静かに告げた。 「お疲れ様。証拠は全部そろってる。離婚届を書け」 半年前、朝の食卓で感じたわずかな違和感。 いつもと違う海外製の香水、増えていく残業、パート先の嘘、ホテル街に止まる妻の車。 公認会計士である俺は、感情で問い詰めることをやめ、半年間、完璧な夫を演じながら証拠を集め続けた。 写真、GPS履歴、LINEのやり取り、隠し口座、そして自宅に男を連れ込んだ映像。 妻はすべてを隠し通せていると思っていた。 しかし大晦日の深夜、テーブルの上に並べられた3冊の証拠ファイルを見た瞬間、彼女の顔から血の気が引いていく。 裏切られた夫と、母の不倫を知っていた息子。 2人が静かに積み上げた復讐は、妻と不倫相手の人生を容赦なく崩していく――。
高橋健二
臨月サウナ監禁

臨月サウナ監禁

臨月を迎えた大山カナは、夫・匠の海外出張中、突然押しかけてきた義両親によって家庭用サウナに閉じ込められる。 「私たちから息子を奪った罰よ」 外側から鍵をかけた義両親は、カナを暗く狭い密室に残したまま、5泊7日の温泉旅行へ出かけてしまう。水も食料もなく、助けを呼ぶスマホも手元にない。さらに極度の恐怖とストレスから、カナには陣痛が始まってしまう。 義妹、隣人、そして信じていた人々の裏切り。誰も助けてくれない絶望の中で、カナはある異変に気づく。 それは、義両親が最後まで見下していた「中卒の工場作業員の娘」という肩書きの裏に隠された、彼女自身の本当の力だった。 閉じ込めたはずの嫁。 消えるはずだった証拠。 そして、帰宅した義両親がサウナの扉を開けた瞬間に漂った異様な腐敗臭。 彼らが見たものは、完全犯罪の成功ではなく、自分たちの人生が崩れ落ちる地獄の始まりだった――。
木目のカナ
竹林の黒い水

竹林の黒い水

1989年、佐賀県武雄市の裕福な竹農家で、一家3人が忽然と姿を消した。 残された嫁・斎藤吉江は、泣きながらこう証言する。 「夫が義両親の金庫を奪って、女と逃げたんです」 酒とギャンブルに溺れていた1人息子・修二ならあり得る話だと、村人たちは誰も疑わなかった。吉江は、逃げた夫と義両親を待ちながら農場を守る“健気な嫁”として同情され続ける。 しかし12年後、大雨で崩れた竹林の土の中から、錆びたドラム缶と人骨が発見される。 見つかったのは、失踪したはずの義父母の遺骨。そして捜査が進むにつれ、夫・修二が女と逃げたという話にも不自然な点が浮かび上がっていく。 竹林に埋められていたのは、遺体だけではなかった。 12年間、村人たちが信じ込まされていた嘘。毒にまみれた農場。泣く嫁の裏に隠された、あまりにも冷たい真実。 黒い土の下で眠っていた罪が、ついに地上へ姿を現す――。
竹吉の記録係
午前三時の逃走

午前三時の逃走

深夜3時、75歳の田中節子のもとに、海外出張中の息子・優一から一本の電話がかかってきた。 「母さん、今すぐ逃げて」 半年間まともに連絡が取れなかった息子の声は、切迫していた。玄関ではなく勝手口から出ること。荷物は持たないこと。絶対に振り返らないこと。 夫が遺した世田谷の家で、節子はいつの間にか孤立していた。嫁の美香とその両親は、優しい顔で家に入り込み、台所を奪い、電話を取り上げ、外出を制限し、節子を“認知症の老人”に仕立て上げようとしていた。 そしてある夜、節子は壁の向こうから聞いてしまう。 「実印さえ手に入れば、いつでも動ける」 狙われていたのは、亡き夫が節子のために残した家と財産だった。 息子の電話を信じ、節子は深夜の家を抜け出す。だが、逃げた先で待っていたのは、さらに大きな真実だった。 夫は生前、すべてを見越していたのか。 閉じ込められた老女が、失われかけた人生を取り戻すために立ち上がる、静かな逆転の物語。
梅庭せつこ
海底の防水バッグ

海底の防水バッグ

1988年、鹿児島から屋久島へ向かう旅客船で、24歳の女性乗務員・佐藤エミが突然姿を消した。 当時の警察は、甲板からの転落、あるいは自殺として早々に捜査を終える。けれど、兄の健二だけはその結論を信じなかった。泳ぎが得意で、未来を語っていた妹が、自ら海へ消えるはずがない――そう信じ、彼は22年間、毎年失踪届を出し続けた。 そして2010年。 屋久島沖の海底から、1つの防水バッグが引き上げられる。中に入っていたのは、エミの名札、1988年のカレンダー、そして暗号のような数字が書き込まれた手帳だった。 復元された手帳には、「船長」「客室」、そしてある同僚の名前が残されていた。 消えた女性乗務員。 口を閉ざした元船長。 毎年命日に怯える同僚。 そして、失踪直後に姿を消した幼馴染みの男。 22年間、海の底に沈められていた防水バッグが、旅客船の夜に隠された欲望と裏切りを暴き出す――。
鹿児島港の記録
寿司屋で暴かれた嫁

寿司屋で暴かれた嫁

68歳の田村節子は、息子の再婚相手である嫁・美咲を、ずっと“よくできた人”だと思っていた。 亡き夫を失い、1人暮らしになった節子の家へ通い、手料理を届け、病院の送り迎えまで申し出てくれる優しい嫁。近所の人たちからも羨ましがられ、節子自身も本当の娘のように感じ始めていた。 しかし、美咲は少しずつ、家の権利書や預金、保険の受取人について尋ねるようになる。 そんなある日、節子は美咲に誘われ、馴染みの寿司屋へ向かった。ところが店主は、美咲の顔を見た瞬間、血相を変えて叫ぶ。 「節子さん、その人から早く逃げてください」 店主の父を騙し、財産を奪った女と同じ顔――。 信じたい気持ちと、拭えない違和感。やがて節子は、嫁の荷物の中から決定的なものを見つけてしまう。 優しい嫁の正体は何者なのか。 そして節子は、息子と家を守るため、静かに反撃を始める。
節子の暖簾

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八年目のインタビュー

八年目のインタビュー

1999年、静岡市で有名アナウンサー・高橋正弘の妻、純子が忽然と姿を消した。 夫はカメラの前で涙を流し、「今でも妻の帰りを待っています」と訴えた。世間は彼を、妻を失った悲劇の夫だと信じて疑わなかった。 しかし8年後、未解決事件を扱う番組の収録中、切り忘れられたピンマイクが、正弘の“ある独り言”を拾ってしまう。 「純子……あの時、お前が黙ってさえいれば――」 その一言から、眠っていた事件は再び動き出す。 失踪前夜の不可解な通話記録、消えた保険証書、純子が残した日記。そして、自宅の庭に隠されていたもの。 8年間、悲劇の夫を演じ続けた男の仮面が、一本の音声によって剥がされていく――。
雨音アーカイブ
大晦日の離婚届

大晦日の離婚届

深夜、妻が不倫相手との密会から帰ってきた。 「ただいま。今日も疲れちゃった」 何も知らないふりをして笑う妻に、俺は静かに告げた。 「お疲れ様。証拠は全部そろってる。離婚届を書け」 半年前、朝の食卓で感じたわずかな違和感。 いつもと違う海外製の香水、増えていく残業、パート先の嘘、ホテル街に止まる妻の車。 公認会計士である俺は、感情で問い詰めることをやめ、半年間、完璧な夫を演じながら証拠を集め続けた。 写真、GPS履歴、LINEのやり取り、隠し口座、そして自宅に男を連れ込んだ映像。 妻はすべてを隠し通せていると思っていた。 しかし大晦日の深夜、テーブルの上に並べられた3冊の証拠ファイルを見た瞬間、彼女の顔から血の気が引いていく。 裏切られた夫と、母の不倫を知っていた息子。 2人が静かに積み上げた復讐は、妻と不倫相手の人生を容赦なく崩していく――。
高橋健二
崖下に残された声

崖下に残された声

2018年秋、北アルプスの断崖下で、田中優人とその母・よしえの遺体が発見された。 唯一生き残ったのは、優人の妻・渡辺彩佳。彼女は泣き崩れながら「写真を撮ろうとして、2人が足を滑らせた」と証言した。現場の状況も事故として説明でき、警察はやがて悲劇的な同時滑落事故として処理する。 だが、若い刑事・伊藤健二だけは、彩佳の表情に違和感を覚えていた。 葬儀では悲劇の未亡人を演じ、8億円の保険金を受け取った直後、彩佳は姿を消す。事件はそのまま忘れられていくかに見えた。 それから7年後。 解体される田中家の旧宅の壁の中から、黒いタブレット端末が発見される。そこには、死んだはずの夫が残した音声、日記、監視の記録、そして事件前日の恐怖が克明に保存されていた。 「私は明日死ぬかもしれない」 夫が最後に残したその言葉が、完璧だったはずの事故を崩し始める。 愛なのか、支配なのか。 北アルプスの紅葉の下に隠された、女のもう1つの顔が暴かれていく――。
紅葉谷の記録者
四十九日、電話を切った妻

四十九日、電話を切った妻

義母が急変した夜、私は海外出張中の夫に必死で電話をかけた。 けれど返ってきたのは、信じられないほど冷たい一言だった。 「お前とは1秒も話したくない。二度と仕事の邪魔をするな」 私は「わかった」とだけ答え、その日から49日間、夫に一切連絡しなかった。 義母の最期、葬儀、親族への連絡、すべてを私ひとりで終わらせた。 そして四十九日。ようやく帰国した夫は、何も知らないまま親族の前に現れ、私を責め始める。 だが、その場には義母が最後に残した“ある証拠”があった。
靜かな嫁日記
臨月サウナ監禁

臨月サウナ監禁

臨月を迎えた大山カナは、夫・匠の海外出張中、突然押しかけてきた義両親によって家庭用サウナに閉じ込められる。 「私たちから息子を奪った罰よ」 外側から鍵をかけた義両親は、カナを暗く狭い密室に残したまま、5泊7日の温泉旅行へ出かけてしまう。水も食料もなく、助けを呼ぶスマホも手元にない。さらに極度の恐怖とストレスから、カナには陣痛が始まってしまう。 義妹、隣人、そして信じていた人々の裏切り。誰も助けてくれない絶望の中で、カナはある異変に気づく。 それは、義両親が最後まで見下していた「中卒の工場作業員の娘」という肩書きの裏に隠された、彼女自身の本当の力だった。 閉じ込めたはずの嫁。 消えるはずだった証拠。 そして、帰宅した義両親がサウナの扉を開けた瞬間に漂った異様な腐敗臭。 彼らが見たものは、完全犯罪の成功ではなく、自分たちの人生が崩れ落ちる地獄の始まりだった――。
木目のカナ
葬儀よりハワイ

葬儀よりハワイ

80歳の田所吉郎は、55年間連れ添った最愛の妻・雪子を亡くした。 若い頃、貧しい暮らしの中で支え合い、二人三腳で小さな會社を築いてきた夫婦。だが雪子が病に倒れてから、息子の嫁・美香は見舞いにも來ず、介護に疲れた吉郎を助けることもなかった。 それでも雪子は最後まで、嫁に迷惑をかけまいと気遣い続けた。 そして迎えた葬儀の日。家族として最後の別れをするはずの美香は、義母の葬儀よりも友人とのハワイ旅行を選ぶ。吉郎は亡き妻に恥をかかせまいと、參列者には「體調不良」と噓をつき、靜かに頭を下げ続けた。 しかし葬儀の翌日、吉郎は決意する。 息子夫婦が住む一軒家は、吉郎が買い與えたもの。そして名義は、今も吉郎のままだった。 妻を軽んじた嫁に、吉郎が下した靜かなけじめとは――。
もう黙らない父

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レジ越しの再会

レジ越しの再会

68歳の幸子は、年金10万円の暮らしを支えるため、今もスーパーのレジに立っている。 ある日、彼女の前に現れたのは、5年前に喫茶店で幸子の年金額と仕事を笑った友人・道代だった。 かつては海外旅行や積み立ての利益を語り、余裕のある暮らしを誇っていた道代。けれど再会した彼女の買い物かごには、半額の惣菜と安い食パンが入っていた。 「まだ働いてるのね」 5年前と同じ言葉。だが、その声にはもう、あの時の軽さはなかった。 レジに残されたポイントカード。そして、その下に挟まれていた一枚の紙。 そこには、たった一言だけ書かれていた。 「相談があります」 5年前、笑っていた人に何が起きたのか。 同じ喫茶店で向き合った二人は、老後のお金、後悔、そして人を笑うことの本当の意味を知っていく。
さちこの夕暮れ帳
母は沖縄へ消えた

母は沖縄へ消えた

65歳の桜井久子は、夫に先立たれてから、息子夫婦と孫のために人生を捧げてきた。 大学費用、結婚資金、マイホームの頭金、毎月の生活援助。元銀行員として働き続けて貯めたお金も、時間も、すべて息子家族の幸せのために使ってきた。 ところがある朝、息子・拓也は冷たい声で告げる。 「義両親と同居することになったから、母さんには出て行ってほしい」 しかも、久子を追い出した後も、毎月の援助だけは続けてほしいと言う息子夫婦。嫁の両親を迎えるため、久子の部屋まで勝手に決められていた。 その瞬間、久子の中で何かが静かに切れる。 38年間の銀行員生活で培った知識と人脈を使い、彼女は誰にも気づかれないまま準備を始めた。口座の解約、保険の受取人変更、重要書類の移動、そして新しい住まいの契約。 引っ越し当日、息子夫婦が最後に求めたのは、やはり金だった。 しかし久子が差し出した一枚の書類を見た瞬間、2人の顔色は一変する。 母を追い出せば、都合よく支配できると思っていた息子夫婦。 だが1週間後、沖縄の青い海を背景に現れた久子の姿を見て、彼らはようやく自分たちが何を失ったのかを知る――。
南風の久子
別室で食べてと言われた母

別室で食べてと言われた母

「母さんは、ここで食べないで」 週末の夕食、佐々木陽子は自分が作った料理を前に、息子からそう告げられた。 三十年間、一流ホテルでフレンチの調理師として働き、息子の教育費も住宅購入も支えてきた母。 それでも嫁は、陽子の料理を「古い」「衛生面が心配」と見下し、ついには家族の食卓から別室へ追いやった。 リビングから聞こえてくるのは、陽子が作った料理を囲む家族の笑い声。 その夜、眠れずにいた陽子は、息子夫婦と夫の本音を聞いてしまう。 「お母さんはお荷物でしょう?」 さらに彼らは、陽子を施設に入れ、実家の土地を売る計画まで話していた。 その瞬間、陽子の中で何かが静かに終わる。 翌日、彼女は弁護士のもとへ向かった。 退職金三千万円、実家の土地八千万円、株式二千万円。 合計一億三千万円を超える財産は、すべて陽子個人のものだった。 そして彼女は決める。 財産も、尊厳も、これからの人生も、もう誰にも渡さない。 全財産を守ったまま実家へ戻った陽子は、再び包丁を握り、料理教室を開く。 一方、母を“お荷物”と呼んだ息子家族の日常は、静かに崩れ始めていく――。
佐々木陽子
リンゴ畑の骨

リンゴ畑の骨

1987年、青森県津軽地方のりんご農園で、若い嫁・高橋じ子が突然姿を消した。 荷物も持たず、実家にも戻らず、まるで最初から存在しなかったかのように消えた彼女。村人たちは「嫁いびりに耐えられず逃げたのだろう」と噂し、警察も家出として処理しようとする。 しかし、兄の哲也だけは妹の失踪を信じなかった。 失踪前、じ子から届いていた一通の手紙。そこには「最近とても辛いの。もっと恐ろしいことが起きた時に必ず話すね」と書かれていた。 やがて捜査が進むにつれ、村人たちがひた隠しにする一人の男の存在が浮かび上がる。 村の区長・渡辺茂夫。 表向きは頼れる長老。だが、彼の名前が出た瞬間、村人たちは一斉に口を閉ざした。 そして12年後、りんご畑の土の下から見つかった人骨と、小さな金のイヤリング。 残された日記、消えた証拠、夜中に畑で揺れていた小さな光。 長く沈黙していた村の闇が、赤く実るりんごの木の下から、ついに掘り起こされる――。
津軽りんご帳
壁の中の妻

壁の中の妻

2006年、長野県松本市で主婦・田中洋子が忽然と姿を消した。 最後に確認されたのは、夫との夜9時の電話。財布も荷物も家に残され、外へ出た形跡もない。夫の健一は東京勤務を辞め、妻がいつか帰ってくると信じて、10年間その家で待ち続けた。 しかし2016年、家のリフォーム工事中、作業員がリビングの壁に奇妙な違和感を覚える。 他の壁よりも厚い、二重構造の壁。 壊されたその奥から出てきたのは、白骨化した人骨と、古びた財布だった。 遺骨の身元は、10年前に失踪した洋子本人。つまり彼女は、夫が毎日座っていたリビングのすぐそばで、ずっと眠っていたことになる。 誰が、なぜ、彼女を壁の中に隠したのか。 捜査線上に浮かんだのは、夫を10年間支え続けた“親切な友人”だった。 妻を探し続けた夫。 善人の仮面をかぶった男。 そして、死の直前に残された一冊の日記。 10年もの間、壁の向こうに封じられていた真実が、ついに崩れ落ちる――。
島立の古い鍵
十七年目の「ただいま」

十七年目の「ただいま」

1974年12月、雪に覆われた金沢で、11歳の少女・水島静香が学校帰りに姿を消した。 川の近くで見つかったのは、泥に濡れた通学カバンだけ。 そこには、母へ向けて書きかけた一文が残されていた。 「お母さん、今日、私、お母さんに一つ言うことがあるの」 三週間後、川岸で少女と似た小さな遺体が発見される。 周囲は静香だと決めつけたが、母・柿江だけは首を横に振った。 「この子は、うちの静香ではありません」 しかし誰も母の言葉を信じなかった。 夫にも町にも「現実を受け入れられない母」と見なされ、柿江はやがて家を追われるように孤独な年月を過ごすことになる。 それでも彼女は、毎年娘へ手紙を書き続けた。 静香はきっと生きている。 その確信だけを胸に抱いて。 そして17年後、柿江のもとへ一通の手紙が届く。 そこに書かれていたのは、誰よりも忘れられなかった娘の文字だった。 「お母さん。私は幽霊じゃないよ」 雪の日に止まった母の時間が、沈黙を破るその一文から再び動き出す――。
水島幸恵