みかん小説
本棚
みかん小説 / 夫婦 / 350円の定食が繋いだ、壊れた絆
350円の定食が繋いだ、壊れた絆

350円の定食が繋いだ、壊れた絆

山田 健一 完結 650

「……首でしょ。どうせ迷惑だし」裏切られ続けた少女・リノが店で泣き崩れたその夜、私はただ無言で温かいほうじ茶を差し出した。 商店街の片隅で定食屋を営む私・シ太、30歳。1日5人も客が来ない寂れた店、亡き母のレシピノート、そして毎夜の赤字。そんな底冷えする日常に、色褪せたウインドブレーカーを着た一組の老夫婦が「一番安いものを」と現れたことから、全てが狂い始めた。350円の汁を分け合う2人に思わずサービスした肉じゃがが、思いもよらぬ運命の歯車を回していく。数日後、常連の親父が漏らした「それ、同情詐欺じゃないのか?」という一言が、私の胸を激しくざわつかせた。信じることへの恐怖で心を凍らせた少女と、人を疑うことを知らなかった男。さらに、老夫婦が残していった「孫娘を頼む」という不可解な願いの裏には、誰も予想しなかった巨大食品メーカーの影と、隠された過去の十字架が隠されていた。金目当ての人間ばかりに囲まれてきたリノが、私の作る定食を口にした時、彼女の瞳に浮かんだ本当の涙の意味とは何だったのか。 そして、スーツ姿の男が店に現れ「父と母がいつも」と頭を下げた瞬間、すべての点と点が音を立てて繋がっていく。私たちは、この温もりを守り抜くことができるのだろうか。

今すぐ読む

おすすめ作品