"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第4話
返す言葉がなかった。確かに、断る理由など見当たらなかった。
数、おじいさんから渡された番号に連絡を入れると、指定されたのは駅の静かな級料亭だった。個に通された瞬、シ太は自分の目を疑った。そこに座っていたのは、あのの散歩着姿の老夫婦ではなく、見違えるほど洗練された物だった。きちんとしたジャケット姿のおじいさんと、品のあるブラウスをまとったおばあさん。まるで別のような気品をまとっている。 「今はを運んでくれてありがとう。改めて、私は『啓介』と申します」 「妻のふみです」 「ショウタです……」
そして、ふみさんの隣には、の若い女性が座っていた。派すぎないが、周囲の目を引くった顔ちの美だ。しめのアイラインが印象だが、その瞳は初めからシ太を値踏みするようにたく見据え、腕を組んだまま嫌そうに顔をそむけていた。 「この子が、私たちの孫のリノよ。25歳です」 ふみさんがそう紹介すると、リノは面倒くさそうに息を吐いた。 「いいでしょ、もう」 ふみさんがたしなめるように声をかけるが、リノはのままに言葉を投げつけてきた。 「なんで私が、こんな見らぬ男とわざわざメシわなきゃいけないわけ?」 個の空気が気に張り詰める。 「どうせ最初だけなんでしょ。
広告
優しいふりして、になってからのひらを返すんでしょ、こういう男ってみんな」
鋭いトゲのある言葉がんできたが、シ太はただ黙ってそれを聞き流していた。 「そういうの、もう何度も見せつけられてきたからさ。『丈夫だよ』とか『守ってやる』とか、ばっかりで、結局自分の都が悪くなったら音信通になって消えるくせに」 その声はがっているものの、わずかに震えていた。シ太が何も言わずにじっと座っていると、リノは自嘲気にふっと笑った。しかし、それは決して楽しい笑みなどではなかった。 「ほら、何も言い返せないじゃない。私ね、本当は信じたかったんだよ。1回や2回じゃない、何度もちゃんと向きおうとした。でも、最に泣かされるのはいつも私で……」 リノは線をテーブルに落とし、さく吐き捨てるように言った。 「だから、もういいの。最初から期待しなきゃ、傷つかずにすむから」
そう言い切った直、彼女は急に顔をげ、憎悪にも似たい差しでシ太を睨みつけた。 「づかないで。優しくしないで。変に期待させないでよ!」 言い終えたリノの拳は、くなるほど固く握りしめられている。가ってはいるが、それは今にも壊れそうなを必で支えているだけの、あまりにも危ういがりだった。シ太はその、痛いほど理解した。
広告
この子は気がいわけじゃない。ただ、何度も何度もを信じては裏切られ、疑うことでしか自分のを保てなくなってしまったしい女なのだと。
「あなたにね、お願いがあるの」 ふみさんが、そっとリノの肩にを置いた。 「この子をしばらくの、あなたのおで働かせてくれないかしら」 「え……?」 「誠実で真っ直ぐなの男のくにいることで、もう度をて直してほしいの。勝なお願いだということは分かっているが……」 啓介さんが、くをげた。 「俺、そんな派なじゃないですよ……」 「派じゃなくていいの。ただ、嘘をつかないのそばに、この子を置いてあげたいの」
リノが子からガタッと音をててちがった。 「無理! なんで私がそんならない男ので働かなきゃいけないわけ! やめてよ!」 「リノ」 ふみさんが静かに、しかし威厳のある声で名を呼んだ。たったその言で、リノのきがピタリと止まる。 「……ばっちゃん」 その声は、さっきまでの尖ったものとはまるで別のように怯えていた。 「お願い。このなら、絶対に丈夫だから」
しばらくの、自分の唇を血が滲むほど噛みしめていたリノだったが、やがて力なく息を吐きした。 「……分かったよ。おばあちゃんがそこまで言うなら……」 シ太は、その瞬から自分が背負い込むことになった荷物のさを、ずっしりと実していた。
こうして、シ太とリノの奇妙な共同活、あるいは舗での関係がスタートした。