"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第3話
「そのあんたがした肉じゃがのまで偽物だったかい? 違いうだろ」
その言が、ストンと胸の落ちるべき所に収まった。 「……ありがとうございます」 「礼はいいから、美しい定をごちそうしなさいよ」 のでは、のがのれんをよく揺らしていた。胸のつかえがしだけ軽くなったのをじる。
それからさらに数が過ぎたあるの昼がり、ちょうど仕込みを終えて息つこうとしただった。のれんが静かに持ちがり、顔をげたシ太の臓がきくねた。あの老夫婦だった。今は以のようなウインドブレーカーではなく、ざっぱりとした質な散歩着にを包んでいる。2は並んでカウンターに腰掛けた。 「こんにちは。先は本当にご馳様でした」 「いらっしゃいませ……」 自分の声が驚くほどくなっているのが分かった。 「今はちゃんとべに来たぞ。肉じゃが定を2つ頼む。お財布もちゃんと持ってきたからね」 おばあさんが優しく財布をちらつかせて笑った。その瞬、胸の奥で何かが完全に解けていくような気がした。コンロにを入れながら、シ太はちらりと2を見る。のどこかで疑ってしまった自分の未熟さがまだ気恥ずかしかったが、目のの現実は温かかった。
肉じゃが定を盆に乗せて運ぶと、おじいさんはお茶をすすりながら話し始めた。
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「実はな、数に軽い脳梗塞をやっちまってな」 「そうだったんですか……」わずが止まる。 「幸いにして遺症は残らなかったんだが、医者にこっぴどく叱られてね。『とにかく毎歩け、さもないと次は無いぞ』ってさ」 「この、若い頃から仕事筋で、自分の体のことなんて切考えなかったのよ。だから今は、こうして私が毎緒に歩かされているの」 「ははは、女に毎引きずり回されとるんじゃよ」 「あら、どっちが散歩を本当に楽しみにしているか、私はちゃーんとっているわよ」
仲睦まじい2のやり取りに、シ太はわず元を緩ませてしまった。 「先はな、散歩の途でたまたまこのを見つけたんだ。だが、あいにくそのは財布を持っていなくてね。それでもお腹は空いていたし、番いものだけでも……とって入ったんだよ」 シ太の喉がキュッと詰まる。 「昔ね、若い頃によく2でさな定に入ったものだったのよ。おなんて全然なかったけれど……」 おばあさんはくを見るような、優しい目をしていた。 「あの頃のがしたの。あなたの作ってくれた肉じゃがをべた、あの代が蘇ってきたのよ」
シ太が涙を滲ませた理由は、決して貧しさへの同などではなかった。胸いっぱいに吸い込んだ空気をゆっくりと吐きし、の底から「よかった」
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とえた。 「このは、忘れられんよ」 シ太はただ、々とをげ返すことしかできなかった。
事が終わり、おばあさんはお茶の湯みを両で包み込みながら、し言いづらそうに切りした。 「あのね、つだけ……あなたにお願いがあるのだけど」 「お願い、ですか?」 おじいさんの表も、わずかに引き締まる。 「実は、私たちに孫娘がおりましてね。それが、ちょっとばかり扱いにくくてを焼いているの。齢もあなたといはずだから……度でいいから、あの子に会ってくれないかしら」 「俺にですか?」 具体な理由は語られなかったが、ただならぬ事があることだけは察せられた。 「詳しいことは、そのに本から話すわ。もちろん、無理なら断ってくれて構わないのよ」 シ太はそので即答できず、「しだけ考えさせてください」とだけ答えた。
その夜、いつものようにヨシエさんのに顔をすと、「珍しいね、こんなに」と驚かれた。カウンターに座り、老夫婦から頼まれた件を包み隠さず話す。 「で、そのお爺さんたちの孫娘に会ってくれって?」 「はい。理由はよく分かりませんが、相当を焼いているそうで……」 「いいじゃないの。あんたが誠実で信用できるだって見抜いたからこそ、頼んできてるんだよ。世のにのない男なんてごまんといるんだからさ」
「でも、俺なんかじゃ……」 「向きに考えなさい。断る理由がどこにあるっていうの?」