"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第8話
瞬、自分のを疑った。 「ちょっと待ってください。うちはこんなにさな個商ですよ……?」 「だからこそがあるのです。数字のデータだけでは絶対に補えない、の腹とを満たすにこそ価値がある。この事業がうまく軌に乗れば、寂れてしまったこの商にも再びを呼び戻せるはずです」
商の々の顔が次々とに浮かんだ。シャッターのりたままの。客の絶えた通り。トクさんの物、ヨシエさんの居酒、そして――シ太のすぐ隣で、しっかりと拳を握りしめているリノの姿が。
それからの々、リノは見違えるほど頼もしくなっていった。仕込みを率先して伝い、にはクレームにも自ら対応し、常連客の体調の異変にまで気づいて声をかけるまでになっていた。ある夕方、トクさんがいつもより元気のない様子でやってきた、リノは自分から声をかけた。 「トクさん、今どうしたんですか? お噌汁、特別に盛りにしてしますね」 「おお、ありがとなぁ……」 トクさんが帰った、リノはシ太に言った。「トクさんね、最奥さんが入院して変なんだって常連のおばさんに聞いたの。だから、しでも元気してほしくて」 かつては守られることしからなかった女が、いつのにか周囲を支える側に回っていた。
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シ太はその変化を番くで見つめながら、自分自の胸の奥にあるにも気づき始めていたが、それを言葉にする勇気はまだ持てずにいた。
そんなある、再び啓介さんがを訪れた。 「リノ、そろそろ実に戻る気はないか。活の環境も、仕事の準備も全てえてある」 リノは迷うことなく首を振った。 「私、帰らない」 「リノ……」 「ここにいたい。こので、ショウタさんと緒に……」 内の空気が瞬で張り詰める。シ太の臓は激しく波打つ。 「本気で言っているのか?」 「本気だよ。逃げてるわけじゃない。自分で選んだの」 い沈黙の、啓介さんは静かに頷いた。「……分かった。リノのを尊しよう」 リノはシ太をまっすぐ見た。 「いいかな、ショウタさん。ここにいても」 「うん。でも、本当にいいんですか、お嬢さんがこんなさなで……」 「ここがいいの。みんな、温かいから」
その夜、シ太は啓介さんとふみさんに相談を持ちかけた。 「わしはな、若い頃はも社会位もあった。だが、族を泣かせ続けた。忙しいという言い訳を盾にしてな」 「このはね、今は毎私と緒に散歩しているでしょう? あれは昔の罪滅ぼしなのよ。私はそれだけで分よ」 「お幸せそうですね」 「ショウタさん、を本当ので幸せにするのに、派な肩きなんていらないの。ただ、緒にきる覚悟だけよ」
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その言葉が、胸の奥にストンと落ちた。
帰り、シ太はヨシエさんのにち寄った。 「なんだい、また悩んでる顔をして。リノちゃんのことでしょ」 「ヨシエさん、なんで分かるんですか」 「あんたの顔は本当に分かりやすいんだよ」 シ太は連の来事をすべて話した。 「あの子はね、ただ守られたいわけじゃないんだよ。して自分のでてる所が欲しかったのさ。で、あんたの隣がその所になったってわけ。あんたがやるべきことはただつ。選ばれたことから逃げず、しっかり受け止めてやりなさい」
の諸先輩たちに背を押され、その夜、シ太は自分のに決着をつけた。アパートに戻り、暗い台所につ。母さんの形見であるレシピノートをいた。ページの端はの油でし透けており、何百回、何千回といた肉じゃがのページがき癖でく。あの、あの老夫婦にしたたった皿の定から、全ての物語が始まった。シ太にできることは、昔から何も変わらない。美しい飯を作り、目ののを見捨てないこと。それだけだ。
翌朝。 「リノさん」 「ん?」 「俺は……その、も自信もないですけど……それでも、リノさんと緒にこのを続けていきたいんです」 気に言葉を吐きした。しばらくの、キョトンとしていたリノだったが、やがてふっと嬉しそうに笑った。
「遅いよ、今頃になって……」 シ太が目を丸くすると、彼女は照れくさそうに続けた。 「もうとっくにそんなの分かってたけどさ」