"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第11話
「きっと、まだどこかで誰かを信用できなくて、で殻に閉じこもったままだったとう。誰にも頼れず、誰のこともせず……」 シ太は言葉を発せず、ただじっと彼女の横顔を見つめた。器用な自分には、気の利いた慰めの言葉なんてい浮かばない。だが、これだけは言える。 「俺は、あのとき肉じゃがをして本当によかったとっています。……あなたがここにいてくれて、本当に良かった」 その言葉を聞いた瞬、リノの顔がパッと華やぎ、恥ずかしそうに線をそらした。 「……もう、そういうことサラッと言っちゃうんだから」 「え? 変なこと言いました?」 「ううん、全然。……ずるいなあ、本当に」 リノはさく笑うと、シ太の肩に自分のをそっと預けてきた。驚いたが、シ太はそれを拒もうとはせず、ただそっと彼女の背に温かいを添えた。窓のでは、夜の帳がゆっくりとり始め、商の灯がぽつりぽつりと灯りだしていく。
翌、昼のピークをし過ぎた頃、またたながを訪れた。古びた製の引き戸がき、入ってきたのは見覚えのある品な老夫婦――啓介とふみだった。 「やあ、こんにちは。いい匂いに釣られてきちゃったよ」 「いらっしゃいませ、じいちゃん、おばあちゃん!」 リノが嬉しそうな声をげて迎える。啓介とふみは相変わらず背筋が伸びていて、その表は孫の成を慈しむように穏やかだった。
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「今はね、おたちの顔を見にきたのと、もうつ話があるんだ」 啓介は席に座ると、懐から枚のさなパンフレットを取りした。そこには、「ショウタ堂・特製汁パック&凍惣菜シリーズ、全国主都へ展決定」という文字が躍っていた。 「これ……本当に全国にくんですか?」 シ太が目を見張ると、啓介は満そうに髭を撫でた。 「ああ。おの作る料理の根底にあるのは、ただの技術じゃない。『誰かを温めたい』という誠実なだ。そのは、本のどこにっても必とされる。自信を持ちなさい」 ふみも優しく微笑みながら頷いた。 「リノが選んだだもの。私たちも、こうして側で見守っていられて本当に誇らしいわ」
その夜、すべての片付けを終えた内で、シ太とリノは並んでたい夜をじていた。 「なんだか、みたいだね」 リノが空のを見げながらぽつりと言う。 「そうですね。でも、これは現実です」 シ太は隣につ彼女のをそっと握りしめた。え込んでいたはずのは、今や驚くほど温かかった。 「これからも、ずっと緒ですよ。美しいご飯を、作り続けましょう」 「うん。当たりでしょ?」 リノは力く頷き、シ太の胸にそっと寄り添った。
厨の片隅では、の朝に引くための昆布が、静かにに浸されている。その面には、寄り添う2のが穏やかに映しされていた。
ショウタ堂の物語は、これからも温かい汁のりと共においしい笑顔を紡ぎながら、へと続いていく。