"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第10話
「うん、すごく幸せだよ、おばあちゃん」 ふみさんはリノのをしっかりと握りしめ、何度も何度も頷いている。その目尻には、美しいるものが浮かんでいた。トクさんがきな缶ビールを豪に配り始め、ヨシエさんは自分のから自製の惣菜をこれでもかとのように持ち込んできた。 「あんたたち、もっとちゃんとべなさいよ! そんなに痩せてちゃ子供ができないでしょ!」 「もう、ヨシエさん!」 リノが顔を真っ赤にして声を荒げる姿を見て、集まった全員が温かい笑い声をげた。
夜、全ての営業を終え、2でカウンターに並んで腰掛ける。初のよいが換気扇の隙から吹き込み、内に残る汁の残りが腔にほんのりと漂っていた。 「ねえ、ショウタさん」 「ん?」 「あの、私のために肉じゃがをしてくれて、本当にありがとうね」 「そんなの、もう昔の話だろ」 「昔なんかじゃないよ。だって、あの瞬が私たちのすべての始まりだったんだから」 シ太は顔をげ、壁に掲げられたお品きを見げた。 『本の定・肉じゃが定』 母さんからずっと受け継いできた、たったつのレシピ。あの、あの老夫婦にした皿のご飯が、こんなにも温かい未来へと繋がっていたなんて。 「の仕込み、何からにする?」 「いつも通り5だけど」 「私も5にに来るから」
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「無理しなくていいんだぞ」 「無理なんかじゃないよ。だって、これからもずっと緒にやっていくって自分で決めたんだから」
シ太の作る飯に、嘘偽りはない。母さんがそうしてきてきたように、シ太もこれからもそのき方を貫いくだけだ。こので作る温かいご飯が誰かの空腹を満たし、そしていつのかそののまでをも温かく満たすことができるなら、それだけでは分すぎるほどにがあるのだから。
のまりとともに、「ショウタ堂」の簾をくぐるは、しずつの気配を帯びるようになっていた。だが、のにはいつでも、煮込まれる根菜の甘いりと、カツオと昆布が織りなす力い番汁の湯気が満ちている。かつてのガランとした寂しさはどこへやら、ランチタイムともなれば、扉をけるなり「いらっしゃいませ!」と弾むようなリノの声が響き渡る。
その、カウンターの特等席にはトクさんが陣取っていた。 「おい、リノちゃん。最すっかりこのの板娘だな。オヤジの俺より際がいいんじゃないか?」 「もう、トクさん、からかわないでよ。仕込みのスピードじゃまだショウタさんに全然追いつけないんだから」 リノは軽く眉をひそめながらも、その頬には楽しげな笑みが浮かんでいる。カウンターの向こうで調理のをかしながら、シ太はふと、彼女がこのに初めてやってきたのことをいしていた。
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あの頃の、凍りついたような鋭い差しや、すべてを拒絶するような頑なさはもう微もない。彼女は今、自分のでしっかりとち、この温かい空の部となっていた。
「はい、お待ちかね! 本のメイン、たっぷり野菜の豚汁定と、作りたての卵焼きね」 リノがトクさんのに見事な際で盆を置く。トクさんは嬉しそうに箸を割り、きく汁をすすった。 「うーん、染みるねえ。やっぱりこののは格別だ。なぁ、ショウタ、今度うちの孫娘も連れてくるから、料理のコツでも教えてやってくれよ」 「いつでもどうぞ。んで」 シ太が静かに微笑むと、リノが横から「私からも厳しく特訓してあげる!」と茶化す。全体が、まるでつのきな族のような温かさに包まれていた。
夕暮れ、旦の簾をげ、夜の営業に向けた準備をえる。常連たちが帰ったの静かな内で、2は並んでカウンターに腰掛け、息ついていた。 「ねえ、ショウタさん」 し真剣な顔をしたリノが、ほうじ茶の湯みを両で包み込みながら呟いた。 「どうしたんですか?」 「私さ、々うんだ。あのとき、じいちゃんとおばあちゃんがこのに来なかったら、そしてショウタさんがあの肉じゃがをしてくれなかったら、今の私はどうなっていただろうって」 リノの瞳が、夕暮れのを受けて揺れていた。