みかん小説
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"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第6話

「私、料理なんて度もやったことなかったのに……このに来てから、いろんな匂いに敏になった気がする」 その横顔は驚くほど穏やかで、シ太はしだけ胸を突かれた。この子に、こんなに優しい表があったのかと。

常連の公務員のおじさんが来した際も、以なら骨に顔をこわばらせていたリノが、ぎこちないがしっかりと顔をげて「いらっしゃいませ、おはようございます」と言えるようになっていた。

ある、閉際にびしょ濡れのサラリーマンが駆け込んできた。リノは構えたが、次の瞬には自分でタオルを掴み、その男性へと差ししていた。 「これ、使ってください。温かいお茶、すぐしますね」 男性が帰った、リノは自分の取ったに戸惑っているような顔をしていた。 「なんで私、あんなにタオルなんて貸したんだろ……男のなのに」 「困っているを、放っておけなかったんじゃないですか」 「それ、ショウタさんの癖じゃん」 リノはでふっと笑ったが、その目は笑っていなかった。彼女ので何かが確実に変わり始めていることに対し、本番戸惑っているように見えた。

のピークで注文がて込んだある。 「ショウタさん、4番テーブルの注文って何だったっけ!」 「姜焼き定と、噌汁盛りです!」

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解!」 料理を客席へ運ぶ途、リノのがもつれた。 「ごめん……お噌汁、しこぼしちゃった」 「丈夫です、すぐに拭きますから!」 「……らないんだ」 「る理由なんてないですよ」 リノは瞬何かを言いかけたが、それをみ込み、まっすぐな目でシ太を見つめた。

その直内に嫌な客のクレームが響いた。 「おい、注文してからどれだけ待たせるんだよ!」 「すみ……」 「『すみません』じゃなくてさ!」 シ太がようと歩踏みしたその瞬、リノがシ太のに体を滑り込ませた。 「……々お待ちください。必ず、きちんとおししますので」 その声は震えていたが、彼女はからだを逃げさせなかった。客が帰った、リノはそのち尽くしていた。 「さっきの……私、ダメだった?」 「ううん、よく言えましたよ」 「本当に?」 「ああ、俺なんかよりずっと度胸がありますよ」 「それはない!」 彼女は顔のを激しく振って笑った。その笑顔を見た瞬、シ太の胸の奥がこれまでにないほどく疼いた。

、2で並んで片付けをしていると、リノがに尋ねてきた。 「ねえ、ショウタさん。なんで私にそこまでしてくれるの?」 「……仲だから、ですかね」 「それだけ?」 「それじゃあ、りないですか?」 「……りなくない」 その返事は、驚くほど柔らかく、温かかった。

それから数、あの啓介さんとふみさんが再びを訪れた。

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「いらっしゃいませ」 リノの声が、以よりもずっとるく弾んでいた。シ太はを止めてそちらを見る。 「今の、聞いたかい?」 「ああ、ちゃんと自分のって声をせとったな」 ふみさんはカウンター越しに孫の姿を見つめていた。そこには、と驚き、そして堵の入り混じった複雑な景があった。 「無理してないかい?」 「してないよ、おばあちゃん」 ふみさんはじっとリノの目を覗き込む。「本当?」 「うん」 い返事だったが、そこに嘘の気配はなかった。 「ショウタさん、本当にありがとうございます」 ふみさんは々とげた。 「この子ね、ずっと関係を怖がっていたんです。特に男ののことを……」 シ太は黙って頷いた。 「こんなきした顔、何ぶりに見たかしら。目が、ちゃんとを向いているわ」 リノはし照れくさそうに線をそらした。 「別に……普通だし」 「その『普通』をね、この子は今までずっと奪われていたのよ」 ふみさんの声が、わずかに震えていていた。

2が帰った、シ太はリノに声をかけた。 「よかったですね」 「何が……」 「ちゃんとあなたの努力を見てくれているがいるじゃないですか。……俺も、見てますよ」 その言葉に、リノは驚いたような顔が、やがてふっと微笑んだ。 「逃げないで私のことを見てくれるなんて、ショウタさんが初めてかも……」 その言が、胸の奥くに突き刺さった。

ヨシエさんがに来て、カウンター越しにやかしていくもあった。 「リノちゃん、最めっきり顔つきが変わったじゃないの」

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