"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第9話
朝がの窓から差し込むで、2は声をわせて笑いった。このさな堂から、本当の常がき始めていた。
それからの毎は、変わらないようで、しかし確実に昨とは違っていた。朝は2で並んで仕込みをし、昼は常連客ののない冗談に2で笑い、閉にはカウンターで今あった来事を語りう。リノの笑顔が増えるたび、シ太の胸の奥で何かが温かく膨아れていくのをじた。
ある朝、リノがシ太よりくに来て汁を引いていた。厨に入った瞬、品な鰹節のりが腔をくすぐる。 「引いてくれたのか。見して」 「慮しないでよ」 差しされた皿をに運ぶ。母さんのをベースにしつつ、そこにほんのしだけリノ自の個性が混じりっている。優しく、しかし確固たる芯のあるわいだった。 「……うまい」 「本当?」 「嘘じゃない。俺の飯は嘘をつかないって言ったろ、見が」 リノは瞬きょとんとした、クシャッとい笑顔を崩した。今まで見たで、番自然で、番美しい笑顔だった。その瞬、自分の臓がうるさいほど鳴っているのを、シ太ははっきりと自覚した。
そのの、商の祭りの夜。通りには無数の提灯が吊るされ、台の賑やかな呼び声と々のざめきがよく混じりっていた。の甘いりが、夜に乗ってをくすぐる。
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「すごく賑やかだね。よりずっとが増えた気がする」 「ああ」 胸の奥が激しく波打つ。今こそ、言うと決めていた。この素らしい女性の隣につ資格が本当にあるのかとずっと迷ってきたが、もう逃げない。 「ねえ、ショウタさん」 リノがを止め、提灯のかりに照らされたその横顔でシ太を見た。 「あなたの優しさに救われたのは、私だけじゃないよ」 瞬、言葉がなくなる。 「じいちゃんもおばあちゃんも、常連のおじさんたちも、この商の誰もが、あなたに救われたの」 リノはまっすぐシ太の目を見つめた。胸が締め付けられるようにおしい。シ太はそっとを伸ばした。 「この先もずっと、俺と緒にいてくれるか?」 瞬の沈黙の、リノはさくふっと笑い、シ太のきなを自分の両でしっかりと握り返した。そのはしたかったが、驚くほど力かった。
しれた所から、2の老が並んでこちらを見守っているのが見えた。啓介さんとふみさんだ。気づくと、満そうにゆっくりと頷いてくれた。 「おめでとう、2とも本当によかったね」 リノがふみさんのを嬉しそうに握る。 「ありがとう」 啓介さんはシ太を見て静かに言った。「迷ったときは、緒に美い飯をいなさい。腹の底から満たされれば、抵のことはなんとかなるものだ」
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あれから1。は嬉しい鳴をげるほど忙しくなっていた。 「4番テーブル、肉じゃが定がるよ!」 「はい! あ、5番の常連さんもうすぐ来るから、お噌汁盛りで準備しといてね」 シ太は際よく椀を並べながら声を返す。 「分かってるよ!」 啓介さんの会社との業務提携によって凍品の販が全国に広がり、にはかつてない活気が戻ってきた。商全体にも若い世代の姿が増え、かつての賑わいを取り戻しつつある。 「繁盛じゃないか、ショウタ。あの頃がまるで嘘のようだね」 「トクさんたちに支えてもらったおかげですよ」 そう言うと、いつのにか横からヨシエさんが割り込んできた。 「私のおかげでしょ? リノちゃんをに仕込んだのはこの私なんだからね!」 「ヨシエさん、それちょっと盛りすぎですって」 「盛ってないわよ、事実よ、事実!」 に賑やかな笑い声が響きわたる。あの寒い真の昼がり、古びたウインドブレーカーを着た老夫婦がのれんをくぐれてから、すでに2の歳が流れていた。
正式に入籍を済ませ、結婚式は挙げなかったが、その代わりにので親しい々を集めたささやかな報告会をいた。啓介さんとふみさん、トクさん、ヨシエさん、そしてたくさんの常連たちに囲まれて―― 「そうか、本当によかったな」 啓介さんは穏やかな笑みを浮かべながら、シ太の肩を力く叩いた。
「リノ、幸せになるんだよ」