"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第2話
おばあさんは丁寧なつきで茶碗を自分のに引き寄せ、ご飯を真んで綺麗に分けてから、噌汁の椀を交互にすすった。2とも、ごとに目を細め、底おいしそうにわっている。 「うまいな、このお噌汁。汁がきちんとしとる」 「本当ねえ。なんだか昔懐かしいがするわ」 その言葉を聞いた瞬、シ太の胸の奥がキュッと締め付けられた。壁に貼られたメニューの端には、今の目玉である「本の定・肉じゃが定 750円」の文字があった。今の肉じゃがは、母さんから受け継いだレシピに忠実に作った、自分でも納得の自信作だ。気がついたときには、シ太のは勝にき、肉じゃが定を2の盆に盛り付けていていた。
「あの、これよかったら……今、ちょっと作りすぎてちゃったんで」 真っ赤な嘘だった。作りすぎてなどいない。だが、その瞬のシ太にとって、そんな言い訳の真偽などどうでもよかった。 「あら、そんな……本当にいいの?」 「いうちに、どうぞ」 おばあさんは瞬言葉を失ったが、すぐに何度も何度もをげた。おじいさんも、々とを垂れる。 「すまんなぁ……ありがたく頂戴するよ」 2は肉じゃがをべると、ほとんど同に箸をピタリと止めた。 「おいしい……本当に美しいわねぇ」 「ああ、これは……本物のじゃ」 その声が、シ太の胸の奥底にまっすぐ染み込んでいくのが分かった。
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2はゆっくりとをかけて噛みしめるようにべ、も何度もをげながら、まるで互いを支えうようにを取りってをていった。
扉が閉まり、内に再び静寂が戻る。シ太はカウンターを拭きながら、さく息を吐きした。 「……赤字だな」 そう呟くのに、胸の奥にはなぜかポツンと温かい灯りがともったような覚が残っていた。きっと、これでよかったのだとからえた。
あの老夫婦がを訪れてから数が過ぎたが、の暇な状況は相変わらずだった。昼のピークが過ぎった穏やかな帯、またのれんがガランときく揺れた。カウンターにどっかりと腰をろしたのは、常連のトクさんだった。商でさな物を営む65歳の親父で、毎週決まった曜に顔をしてくれる、シ太にとってはありがたいだ。 「いつもの頼むわ」 「はい」
コンロの鍋にを入れると、トクさんは広げた聞をパタパタと畳みながら言った。「おい、ショウタ、ってるか? 最この辺で『同詐欺』みたいな悪い話が回ってるらしいぞ」 その瞬、シ太のがぴたりと止まった。 「寄りばかりを狙ってな、巧みに同を引くんだと。『がない』だの『困っている』だのってさ。いろんながあるって話だから気をつけな」
トクさんのその何気ない言葉が、胸の奥に嫌な形で引っかかった。
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褪せたウインドブレーカー。350円のセットを2で分けう姿。あのの老夫婦の顔が、突然脳裏に鮮に蘇ってきた。シ太は返す言葉を失い、ただち尽くすしかなかった。
そこへ、再び勢いよくのれんがねがった。 「ほら、また2揃ってそんな暗い顔してさ」 入ってきたのはヨシエさんだった。商の裏通りでさな居酒を切り盛りしている55歳の女将で、は悪いが面倒見が良く、この商のき字引のようなだ。 「何かあったんでしょ? あんたの顔に全部いてあるわよ」 「いや、別にその……」 「『別には嘘』。あんたの『別には』いつも分かりやすいのよ」 トクさんが苦笑交じりに頷く。さすがはヨシエさんだ、敵わない。シ太は鍋の底をかき混ぜながら、ぽつりぽつりと話し始めた。あのの老夫婦のこと。肉じゃがをサービスしたこと。そして今、自分が抱いてしまった猜疑について。
しばらくい沈黙が落ちた、ヨシエさんはグラスを拭きながらをいた。 「で、そのたちを疑っちまった自分が許せないってわけね」 完全に図だった。 「いいかい、疑う気持ちが湧いたってことはね、あんたがそれだけちゃんとにをつけて、この現実をきている証拠さ。誰だって騙されたくないし、傷つきたくないんだから。でもね」 ヨシエさんはカウンターに頬杖をつき、シ太の目をまっすぐに見据えた。