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"350円の定食が繋いだ、壊れた絆" 第5話

まだ互いにぎこちない空気をまとったままだ。 リノがで働き始めてから3目。正直に言って、像していたよりもずっと過酷な々だった。 「いらっしゃいませ」 声こそしているものの、客の顔を切見ようとしない。男性の常連客が注文を告げると、リノはちらっと顔をげただけで、「はい」とだけく返す。のかけらもない。シ太が慌てて「々お待ちください」とフォローを入れると、リノは背さく舌打ちした。別の客がを求めたには、「自分で取ってください」と言い放つ始末だった。

内の空気が気に凍りつく。シ太は慌ててた。 「すみません、すぐにお持ちします!」 リノはシ太の背を見つめながら、自分の唇を悔しそうに噛み締めていた。営業が終わり、客がいなくなった厨で、ついにリノのが爆発した。 「もう無理! 男なんて本当に無理! なんであんなに言われなきゃいけないのよ! どうせ私のこと見してるんでしょ、若いからとか、女だからってさ!」 気にまくしてた、彼女の声は急に細く震え始めた。 「……やだ。もう、こんなのやだ……」 ポロポロと涙がこぼれ落ちる。シ太はどう声をかけていい分からず、ただ黙って温かいほうじ茶を淹れ、そっと彼女のに差しした。

そのの夕方、トクさんが腕を組んでに入ってきて言った。

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「おいショウタ、あの子の接客どうにかしろよ。このまじゃ客が逃げるぞ」 「すみません……」 所からの噂話もに届き始めていた。を通り過ぎる々が、ヒソヒソと囁く声が刺さる。 「あのしい員、態度がすごく悪いらしいわよ。あんな丈夫なわけ?」

まずいことになった。そうを抱えていたところへ、タイミングよくヨシエさんが通りかかった。 「ちょっと、あんたたち言いすぎじゃないかい! 若い子が慣れない仕事で必にもがいてんだから、しはめに見なさいよ。ショウタのはね、昔からを見捨てないなんだからさ!」 トクさんも気まずそうにを掻き、「……まあ、ヨシエの言う通りだな。若い子が頑張ってんだ、俺たちで見守ってやらねえとな」と頷いてくれた。

その夜、を閉めたも、リノはカウンターに突っ伏したままかなかった。「……首にするんでしょ? どうせ迷惑かけてばかりだし」 シ太は静かにを止め、彼女に向き直った。 「しずつでいいですよ」 「……え?」 「接客なんて誰だって最初は難しいです。僕だって、を始めた頃は何回も常連さんにられましたから」 「……」 「今はもう終わりにしましょう。ゆっくり休んで、また緒に頑張りましょう」

リノは、信じられないものを見るような目でシ太を見げた。「私をらないの? もう度と来るなって言われるとってた……」

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しの考えてから、シ太は言葉を選んで告げた。 「俺は見捨てません。たとえできないがあっても、俺はここにいますから」 リノは何か言いかけたが、結局言葉をみ込み、帰り際に聞こえるか聞こえないかのさな声で呟いた。 「……ありがとう」 その言が、シ太の胸の奥にく、静かに残った。このはまだる由もなかったが、「見捨てない」というその何気ない言が、リノの凍りついたにどれほどく届いていたのかを。

しずつだが、確かな変化がに表れ始めた。ある朝、シ太がに来ると、驚いたことに既にリノが来て仕込みの準備を始めていたのだ。 「今いですね」 「別に……やるって自分で決めたから」 エプロンをきっちりと結びながら仕込み台のつ彼女の背には、初めの頃にあった投げやりな雰囲気が消えていた。包丁を持つつきはまだぎこちないが、そこから逃げそうとする気配は微もなかった。 「この参、切り方これでってる?」 「うん、いいじですよ。もうしだけくするとが通りやすいかな。ほら、ここからこうやって……」 「ふーん……」 そう言いながら、彼女の元がほんの瞬だけ緩んだ。そのさな変化が、シ太にはなぜかたまラなく眩しく映った。仕込みの終盤、リノはまな板を洗いながらぽつりと言った。 「ショウタさんの引く汁ってさ、朝番の番いい匂いがするよね」

「分かりますか? 母さんも全く同じことを言ってました」

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