創業五十周年を控えた和菓子屋で働く私は、常連客の前で二十五年尽くした職人が店主に突然解雇される場に居合わせた。跡を継ぐため会社を辞めて戻った一人息子がいるものの、看板である漉し餡の技術はまだ誰にも継がれていない。店が立ち行かなくなると焦った私が翌朝四時に店へ駆け込むと、暗い厨房で追い出されたはずの職人が大鍋を振っていた。仕上がった餡を前に、朝一番に出勤した店主は無言で味見の木さじを口へ運んだ。
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