1991年10月5日。 二十歳の娘・南明穂は、「学校へ行く」と言って家を出たまま帰ってこなかった。 財布も荷物も持ち、家出の可能性も考えられた。 しかし母・佳代子が気づいたのは、失踪した夜にかかってきた七本の電話だった。 電話に出た父・修司は、すべてを「間違い電話」だと言った。 半年後。 佳代子は夫の手帳から、娘が入るはずだった女子寮の電話番号を見つける。 そこで知ったのは―― 失踪した夜、明穂本人が寮へ電話をしていたこと。 そして、七回の電話はすべて、娘を待つ寮からのものだった。 なぜ修司は、娘の居場所を知りながら隠したのか。 明穂は本当はどこへ向かっていたのか。 そして、最後に娘を見た人たちは、なぜ同じ嘘をついたのか。 一年後、母の前に残されたのは、 一度も使われることのなかった「305号室」の鍵だけだった。 娘が消えた夜。 家族が守ろうとしたものは、一体何だったのか。