"消えた娘、七回の間違い電話" 第1話
話が鳴ったのは、夕の噌汁を温め直しているだった。
修司がすぐにちがった。
「俺がる」
居の隅にある話までき、受話器を取る。
「はい、です」
佳代子は鍋のをめながら、何となく夫の背を見た。
修司はしばらく黙っていた。
「……違います」
それだけ言って受話器を置いた。
「誰?」
穂が帰らないまま、朝になった。
佳代子はほとんど眠れなかった。
夜のを過ぎても、玄関のでが止まるたびにちがった。
。
。
。
話は、もう鳴らなかった。
朝半。
佳代子は台所で湯を沸かしながら、修司に言った。
「警察に話する」
修司は煙にをつけた。
「もうし待て」
「何を待つの?」
「友達のに泊まっただけかもしれない」
「だったら話くらいするわよ」
「忘れたんだろ」
「穂が?」
佳代子は夫を見た。
「昨から、変よ」
修司のが止まった。
「何が」
「話」
「またその話か」
「回も違い話が来る?」
「番号を違えて覚えたんだろ」
「最、分かりましたって言ったじゃない」
「向こうが謝ったからだ」
修司は皿に煙を押しつけた。
「何でも穂と結びつけるな」
その言葉に、佳代子は黙った。
自分が考えすぎているのかもしれない。
そういたかった。
午すぎ。
佳代子は学に話した。
曜で事務は閉まっていた。
仕方なく、穂が以に連れてきた友の番号を探した。
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賀状の束。
話帳。
穂の机。
引きしのには、化粧品やレシート、雑誌の切り抜きが乱雑に入っていた。
友の番号は見つからなかった。
代わりに、枚のがてきた。
百貨の勤務予定表だった。
。
穂の名の横には何もかれていない。
アルバイトのではなかった。
佳代子はを持って居に戻った。
「昨、仕事じゃなかった」
「そうか」
修司はテレビを見たまま答えた。
「学だったのよね?」
「本がそう言ったんだろ」
「あなた、昨の朝見送った?」
そこで初めて、修司が佳代子を見た。
「いや」
「私が洗濯物を取り込んでるにたの?」
「たぶんな」
「たぶん?」
「いちいちなんか見てないよ」
午。
佳代子は交番へった。
修司も緒だった。
担当した警察官は、最初それほど刻には受け取らなかった。
歳。
成。
財布を持っている。
族とのきな喧嘩もない。
「何か悩み事は?」
「ありません」
佳代子が答えた。
「交際している男性は?」
「今はいないといます」
その、隣の修司がをいた。
「以、いました」
佳代子は振り返った。
「誰?」
修司は警察官の方を見たままだった。
「の頃です。し付きっていた男が」
「そんな話、聞いたことない」
「おには言ってなかったんだろ」
「あなたには言ったの?」
修司は答えなかった。
警察官がに入った。
「その男性の名は分かりますか?」
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修司はしばらく考え、
「佐々だったといます」
と言った。
「の名は?」
「そこまでは」
佳代子は違を覚えた。
穂が父親だけに恋の話をするだろうか。
ではほとんど、修司と穂はい話をしない。
嫌いっているわけではない。
ただ、とも必なことしか話さなかった。
警察官は帳にき込んだ。
「昨は何ごろをたんですか?」
佳代子は答えた。
「だったといます。学に寄るって」
「装は?」
「いブラウスに、紺のカーディガン。スカートは……」
そこで修司が言った。
「黒いスカートです」
佳代子は夫を見る。
「見てたの?」
「朝、玄関ですれ違った」
「さっき、見送ってないって」
「見送ったとは言ってない。ちらっと見ただけだ」
さな違いだった。
警察官は気にしなかった。
佳代子だけが、その言葉を覚えていた。
午。
警察は穂の学へ連絡した。
返事が来たのは夕方だった。
。
穂は、登していない。
担任も、友も、内で彼女を見ていなかった。
佳代子は受話器を握ったまま、言葉を失った。
学にっていない。
では、朝から穂はどこにいたのか。
話を切ると、修司が聞いた。
「何て?」
「学、ってないって」
修司は数秒黙った。
そして言った。
「じゃあ、やっぱり誰かと会ってたんだろ」
「誰かって?」
「男とか」
また男。
佳代子はその初めてった。
修司は、穂がどこへったのかをらない。
それは本当なのかもしれない。
けれど。
穂がどこへったことにしたいのか。
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