「お父さん、合格したよ」 2010年3月6日、18歳の栞が大学合格を知った日、父は帰ってこなかった。 勤務先の金庫からは480万円が消え、父のロッカーには仙台行きの新幹線切符が残されていた。 《もう父親でいる資格がない。二人で暮らしてくれ》 さらに大学には、栞が試験問題を買ったという匿名の告発まで届いた。 栞は合格を辞退し、父は金を持ち逃げした男として消息を絶った。 それから14年後。 閉鎖された予備校の隠し書庫から、栞の名前が書かれた答案用紙が見つかる。 封筒には、不可解な一文が添えられていた。 《本人は受験せず》 答案の文字は栞の筆跡ではなかった。 そして母は、14年間隠していた白い目覚まし時計を差し出した。 その修理票には、父が乗ったはずの新幹線が出た「32分後」の受付時刻が記されていた。