"合格発表の日、父が消えた" 第8話
真理子は夫を守ったわけではなかった。夫が戻ることで、自分が失踪夜に言った言葉もらかになるのが怖かった。警察へくならでけ、と突き放したことを、娘にられたくなかったのだ。
「お母さんも、お父さんと同じことをしたんだね」
栞の言葉に、真理子は顔をげられなかった。娘のためだと考え、娘に何も尋ねず、会うかどうかを代わりに決めた。方法は違っても、夫婦は同じ過ちを繰り返していた。
、真理子はもう度修を見かけていた。駅の横断歩の向こうにち、スーパーからてきた母娘を見ていたという。信号が変わるに混みへ消えたため、追いかけられなかった。真理子は見違いだとおうとし、そのことも栞に話さなかった。
父が最の栞の記事を集められた理由が分かった。塚本から送られたのではない。父自が、何度も埼玉へ戻っていたのだ。自宅へ来る勇気はなくても、域やの掲示板から娘の消息を拾っていた。
栞は母を責めた。しかしへ戻ったあと、すぐにはエンジンをかけられなかった。母もまた、夫に捨てられた女、犯罪者の妻として働き続けた。正しい選択をするには、真実だけでなく、真実を支えるが必だったのだと気づいたからである。
警察から連絡が入ったのは、その夜だった。
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原が告発封筒の作成を認めた。栄印刷の損失と漏洩を隠すため、修を犯に仕てたことも認めたが、民会館から宇都宮まで送ったは自由にしたと主張した。
原の供述にはつ矛盾があった。修の幹線切符は午分発だった。ところが修が偽装への協力を決めたのは、民会館で話しった午以である。切符は交渉から用されていた。
つまり原たちは、修が条件を受け入れなくても失踪したように見せる準備をしていた。修が警察へくと言い張れば、から自由にろした保証はない。自発な取引と脅迫の境界は、彼らが語るほど確ではなかった。
さらに、原の古い帳から《川瀬・紹介》という記載が見つかった。修が郡の製本所へ就職できたのは偶然ではなく、原の取引先を通した配だった。修を監できる所に置き、資料の所を確かめようとしていたのだ。
川瀬製本所の社は、修が退職に枚の宅配便伝票をいていたことをいした。送り先は栞でも真理子でもなく、埼玉県内の寿司だった。、父が祝い寿司を注文するつもりだったである。
主に尋ねると、修は毎、現留で代を送り、藤原へ寿司を届けてほしいと頼んでいた。
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しかし主は、差の品を届けることをためらい、を預かったままにしていた。からは修自がへ現れ、返を受け取らず、帳簿に預けとして残していた。
「今も来るといます」と主は言った。「格発表のと同じ、に」
そのは、だった。
、栞は朝から寿司の向かいにある喫茶で待った。真理子は同しなかった。最初に会うのは栞であるべきだと言い、で父の作業着を洗って待つことにした。
正午を過ぎても、修は現れなかった。午、寿司へ魚を納めるが止まり、には所の客が持ち帰りの折を受け取った。栞は父がまた逃げたのだとい、めた珈琲の代を払った。
をたとき、の反対側に、の子をかぶった男がっていた。の歳で背は丸くなり、は体の脇に自然にがっている。それでも栞には、目で父だと分かった。
修も娘を見た。を歩ろへ引いたが、栞がを渡るまで逃げなかった。
「栞か」
父が最初ににしたのは、それだけだった。栞は返事をせず、を見た。薬指と指が曲がったまま伸びない。修は隠すように着のポケットへ入れた。
寿司の奥にある座敷を借り、父娘は向かいった。修は、当の来事をしずつ話した。
塚本から娘名義の答案を見せられ、告発すれば栞が共犯として扱われると言われた。