"合格発表の日、父が消えた" 第2話
父の席から見える壁には、分んだ計が残った。真理子は何度直しても、いつのにかまた分めていた。栞には、それが帰らないを待つの癖のようにえた。
20245、栞は歳になっていた。県内に舗を持つ品スーパーの本部で、仕入れ伝票と各舗の売を照する仕事をしている。数字がわないとき、誰かの説を信じるに元の記録まで戻る癖がついたのは、父の事件があったからだった。
結婚はしていない。母の真理子と暮らしを続けていたが、互いに相のためだとは言わなかった。真理子は歳を過ぎても惣菜売りで働き、栞は繁忙期になると終くまで会社に残った。とも忙しさを選ぶことで、の話をしない理由を作っていた。
そのの午、栞の職に本の話が入った。青葉学会の旧舎を解体している業者からだった。倉庫にあった防庫のに、藤原栞の名がかれた類があり、連絡先を調べて話したという。
青葉学会は、に経営破綻していた。かつての舎は駅の雑居ビルに残っていたが、入の板はされ、窓には内側から聞が貼られていた。栞が業者に案内された階の倉庫には、湿気を吸った教材と机が積みげられていた。
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防庫は壁際に埋め込まれ、通常の鍵とは別に、数字をわせるダイヤルが付いていた。解体作業に背面の板がれ、隠し棚のような空が見つかったのだという。棚には模擬試験の解答用、学名簿、振込控えが度別に並べられていた。
栞の名は、茶い封筒に黒い油性ペンでかれていた。そのには、さな字で《本は受験せず》と添えられている。
封筒のには、邦学経営学部の問題用の複写と、記述式答案が入っていた。氏名欄には藤原栞、受験番号ものものと致している。ところが、丸みのある文字も、数字のを横棒付きでく癖も、栞の跡ではなかった。
栞は自分の受験答案をいせた。最の文問題でがりず、結論をに縮めた。目のの答案は、同じ問題に余いっぱいの回答をいており、しかも途で度、同じ計算を違えて訂正していた。
「この庫を使っていたは分かりますか」
業者は、破産管財から渡された古い鍵の覧を見せた。防庫の鍵を持っていたのは、青葉学会の元代表、塚本正隆だけだった。塚本は現、県の介護施設で暮らしているという。
封筒の底から、透なフィルムが枚てきた。印刷用の製版フィルムで、学の試験問題の部が反転して焼き付けられている。
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隅には父が勤めていた栄印刷の管理番号があった。
さらに裏側には、青いボールペンでの徒名と座番号が記されていた。そのうちは、栞が代に同じクラスだった男子徒だった。が経済に苦しく、受験料を用できないと話していた記憶がある。
栞は資料を警察に届けた。担当の刑事は事件記録を取り寄せると約束したが、のが過ぎ、窃盗の公訴効も成している能性がいと説した。それでも、学試験の漏洩や父の失踪との関係が確認できれば、記録を見直す余はあるという。
帰宅すると、真理子は卓に肉じゃがを置き、封筒を見ようとしなかった。父の無実につながるかもしれないと栞が話しても、「今さら何が変わるの」と箸袋を並べ続けた。
「お母さんは、本当にお父さんが盗んだとってるの」
真理子のが止まった。しばらくして、彼女は廊の押し入れから古い旅鞄をした。底に入っていたのは、い目覚まし計だった。栞が受験のに使い、父が修理に持っていったはずの計である。
「あのがいなくなってか、玄関のに置かれていたの。誰が返したのか、今も分からない」
計の底には、褪せた修理票が挟まっていた。受付は201036、刻は午分。は自宅から歩いて分ほどの商にあった。
父が乗ったとされた幹線は、その分に宮駅をていた。