"合格発表の日、父が消えた" 第12話
修は箸を割り、曲がらない指で持ち直した。栞は伝わなかった。父はをかけて自分で箸をえ、玉子をつ取った。
格通は、週に届いた。栞は封筒をけるに、真理子へ話し、それから修にも連絡した。とも結果を先に尋ねず、栞がにするのを待った。
「格した」
真理子は泣き、修はく黙ってから、おめでとうと言った。今度の祝福には、取引も犠牲も隠し事もなかった。
その週末、はと同じ卓に集まった。真理子は苺のケーキを用したが、古い約束をやり直そうとは言わなかった。修も、空を取り戻すように父親らしく振るうことはせず、栞が選んだ授業と仕事の両について聞いただけだった。
、真理子がい目覚まし計を持ってきた。修は裏蓋をけ、傷んだ歯を見たが、もう自分では直せないと正直に言った。で澤の跡にある鏡へ相談し、紹介された修理職へ預けることにした。
何でも族だけで直さなければならないわけではない。壊れたものには、からを借りるほうがよいもある。その当たりのことを、藤原はかけて覚えた。
、栞は仕事を続けながら学へ通い始めた。最初の講義で教授は、帳簿の数字は事実そのものではなく、誰かが事実を記録した結果だと話した。
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栞はの百万円をいした。しない額がの父を犯罪者にし、枚の偽答案が娘の未来を決めた。
講義の帰り、栞は学の掲示板に貼られた奨学相談員の募集を見つけた。かつての佐伯たちのように、学費のため誰かの正な条件を受け入れざるを得ない学を減らす仕事だった。すぐ応募する自信はなかったが、案内を枚持ち帰り、机のに貼った。過に奪われたものを取り返すだけでなく、自分の経験を誰かの選択肢に変えるが、ようやく見え始めていた。
けれど、訂正された記録だけでが元に戻るわけではない。失われたは消えず、父の選択も母の沈黙も、千の逃避も残り続ける。真相とは、すべてをきれいに終わらせる答えではなく、誰が何を選んだのかを、もうにき換えさせないためのものなのだ。
の終わり、栞は学の課題を持って、父のしい部を訪ねた。さな台所の壁には計がつ掛かっている。針は正しい刻を指していた。
修は夕に寿司を取ろうかと尋ねた。栞は首を振り、蔵庫にあるもので作ろうと言った。は格好な野菜炒めを作り、真理子には写真だけ送った。しして、母から《焦げている》というい返事が来た。
は、以の族には戻らなかった。
戻れないことを認めた所から、しい関係を作り始めた。
、修は「父親でいる資格がない」といて姿を消した。今の彼には、資格が戻ったわけではない。ただ、逃げずに問いに答え、娘が選んだをから見守るが残されている。
栞もまた、失った格を取り戻したのではなかった。
誰にも答案をき換えられず、誰にも帰りを決められず、自分の名で受けた試験に、自分ので格したのである。