"合格発表の日、父が消えた" 第3話
修理はすでに鏡に変わっていたが、以の主である澤信夫は、内の団で暮らしていた。歳になった澤は、内障の術を受けたばかりで、古い記憶には自信がないと言った。しかし計を見せると、裏蓋に刻んださな印を指でなぞった。
「これは私が直したものです。部品がなくてね、別の計から歯を取った。持ってきた男のも覚えていますよ。娘さんの格祝いだから、今に直してくれと、ずいぶん急いでいた」
修は午過ぎに計を預け、分ほど商を歩いて待っていた。修理が終わると礼を言い、紺の作業着の内ポケットから代を払った。澤は、をた修が黒い乗用の助席に乗るのを見ていた。
「無理やり乗せられた様子でしたか」
「いや。運転していたと言、言話して、自分で乗った。ただ、計を持った袋はに置いていった。戻ってくると言ったのに、戻らなかった」
澤はか、の棚を理して計を見つけた。修理票に所があったので自宅まで届けたが、呼び鈴を押しても返事がなく、玄関脇に置いたという。真理子は誰かが夫の代わりに返したとい込み、警察にも詳しく伝えていなかった。
栞は当の捜査資料の示を求め、栄印刷の元経理担当、相原澄を訪ねた。
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相原は歳で、夫をくしてから暮らしをしていた。最初は何もらないと繰り返したが、栞が防庫の答案を見せると、湯呑みを持つが震えた。
「百万円なんて、庫にはなかったの」
相原は声を落とした。失踪当、事務所の庫に入っていた現は、従業員の張仮払を含めても万円ほどだった。百万円は、青葉学会から受け取った預かりとして帳簿にだけ残っていた数字で、実際にはのうちに別の支払いへ流用されていた。
栄印刷の社だった原は、修がいなくなった夜、相原に帳簿をき換えさせた。青葉学会への返予定を現として保管していたことにし、修が庫から持ちった形にしたのだ。拒めば架空発注に関与した責任を負わせると言われ、相原は従った。
「では、父が盗んだ現そのものがしなかったんですね」
「ええ。ただし、修さんが何もしていなかったとは言えない。あのは試験問題のフィルムを持ちした。社と激しく言い争っているのを、私も聞いたから」
相原によると、栄印刷は学から直接試験問題を受注していたのではない。印刷会社の請けとして、問題冊子の部を製本していた。印刷の版や製版フィルムには厳しい管理番号が付き、作業終は枚数を確認して破棄する決まりだった。
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ところが、青葉学会の塚本代表は、原と学代からのだった。塚本は夜、印刷へ入りし、廃棄の試し刷りを持ちしていた。修は断裁のごみ箱から、廃棄したはずの問題用が部だけ抜き取られていることに気づいた。
「修さんは警察へくと言っていた。でも社は、証拠がなければおが盗んだことにすると脅した。娘さんも青葉に通っているなら、族ぐるみだとわれるぞって」
相原は引きしから、古い与細の束をした。そのに枚のコピーが挟まっていた。修が失踪にいた作業報告で、欠番になった製版フィルムの管理番号と、塚本がを訪れた刻が記録されていた。
報告の末尾には、《原本頁は別に保管。、監査担当へ提する》とあった。
しかし、警察の押収品覧に原本頁はなかった。栞のからも、修のロッカーからも見つかっていない。相原は、修が誰に預けたからなかった。
栞は、父の記録も調べ直した。学へ送られた資料では百万円となっていた振込は、実際には万円だった。通帳の写しに印字された額の末尾へ、別の数字をねて加えた痕跡があった。万円は、青葉学会の教材費として振り込まれている。
それとは別に、父の座へ失踪の週、青葉学会から万円が入されていた。