「20万円だけ、貸してもらえない?」――歩けなくなるかもしれない膝の手術を前に、70歳の私が生まれて初めて助けを求めた相手は、育て上げた息子と娘だった。だが息子は「余裕がない」、娘は「旅行の予定がある」と拒絶。ところがSNSには、沖縄の高級リゾートや銀座の三ツ星レストラン、40万円のブランドバッグを楽しむ家族の姿が並んでいた。母の命より贅沢を選ばれた現実に、私の心は静かに壊れていく。さらに届いた固定資産税の通知から、古びた自宅が再開発で6500万円もの価値を持つと知った私は、子供たちがこの家を“いつか相続する財産”として見ていたのではないかと疑い始める。もう期待して傷つくのは終わりにしよう。私は思い出の家を売り、連絡先を変え、誰にも告げず新しい人生へ踏み出す。だが、母が消えたことに気づいた子供たちは、やがて隠していた本音を剥き出しにしていく――。