"三十年目の指輪" 第7話
そして、ゆっくり体を起こして、カレンダーに目を向けました。
その付を見て、1度だけさく息をつきました。
あのと同じでした。
でも、同じではありませんでした。
今は、誰かを待つではありません。
いしてもらうのを待つでもありません。
私がどう過ごすかを決めるでした。
台所にって、お湯を沸かしました。
カップを1つして、コーヒーを入れました。湯気がゆっくりとがり、静かな朝の空気に溶けていきました。
その様子を見ながら、ふといました。
あの頃も、同じようにコーヒーを入れていた。
でも、あのの私は、自分のために入れていたわけではありませんでした。
今は違う。
そのことが、はっきり分かりました。
コーヒーをみながら、しばらく座っていました。
何か特別なことをする必はありませんでした。ただ、このを自分で選んでいるということが切でした。
昼にへました。
あのカフェのでしだけを止めました。けれど、そのはには入りませんでした。
なんとなく、今は違う所へきたい気がしたのです。
し歩いて、駅のくまできました。
の流れのにつと、いろいろな音がに入りました。
話し声。
の音。
靴音。
そのに自分もいる。
それが自然にじられました。
さなで昼ご飯をべました。
広告
1で座って、1で注文して、1でべる。
その1つ1つが、特別なことのようにじました。
でもそれは分、これからは当たりになることでした。
帰り、ふとショーウィンドウに目が止まりました。
さな指輪が並んでいました。
結婚指輪とはし違う形でした。
私はしばらくそれを見ていました。
そして、に入りました。
員に声をかけられて、しだけ迷いました。
でも、私は言いました。
「これ、見せてもらえますか」
指にわせてみると、すっとなじみました。
軽くて、でもしっかりしている。
そんな触でした。
「記ですか?」
員が優しく聞きました。
私はしだけ考えてから、うなずきました。
「はい」
それ以、説はしませんでした。
しなくてもいいといました。
その指輪を、そのまま買いました。
に帰り、箱をけて、もう1度指にはめました。が静かに揺れていました。
鏡のにって、そのを見ました。
とは違う所に、違うで指輪がありました。
その、ふとあの夜のことをいしました。
「今は何のか、覚えてる?」
あのの自分の声。
そして、返ってこなかった答え。
あのは終わりだとっていました。
でも今は違いました。
あのは終わりではなく、ただ1つの区切りだったのだと、やっとえました。
カレンダーに目を向けて、私はさくつぶやきました。
「もう丈夫」
誰に聞かせるでもなく、ただ自分に言うように。
30。
いでした。
でも、そのがあったからこそ、今の自分がいる。
そうえました。
窓のには、あのと同じがありました。
でも、そののにいる私は、もう同じではありませんでした。
静かでも確かな1が、そこにありました。
― 完 ―
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
退職祝いは離婚届
38年間、仕事一筋で家族を支えてきた黒田俊夫。 退職祝いの夜、彼は妻・真由美に言った。 「これからは、二人でゆっくりしよう」 しかし、その言葉を聞いた真由美は笑わなかった。彼女が静かに差し出したのは、白い封筒に入った離婚届だった。 若い頃に交わした旅行の約束。何度も後回しにされた夫婦の時間。「退職したら」「落ち着いたら」「今度こそ」と言われ続けた38年。 俊夫にとっては、これから始まるはずの老後だった。けれど真由美にとっては、もう待ち続ける時間の終わりだった。 妻はなぜ、夫の退職の日を選んで家を出たのか。 そして俊夫は、妻がいなくなった家で初めて、自分が見てこなかったものに気づいていく――。夫婦|第二の人生|熟年離婚1.5萬字5 221 -
完結第10話
消された妻の逆転乾杯
夫の昇進祝いの宴席で、佐木美和は信じられない光景を目にする。 35年間連れ添ってきた夫・孝志が、120人の招待客の前で、若い愛人を「妻です」と紹介したのだ。 本当の妻である美和は、会場の端の席に座らされ、まるで無関係な招待客の一人のように扱われていた。夫からは事前に「今日だけは黙っていろ」と言われていた。 けれど、美和は怒鳴らなかった。 ただ静かにグラスを持ち上げ、夫と愛人に向かって乾杯した。 なぜなら彼女は、17年間にわたって夫が奪い続けてきた功績、不正に使われた経費、そして自分の名前を消された証拠を、すでに会長へ渡していたからだ。 祝福の拍手が響く中、会長がゆっくりと立ち上がる。 「佐木君。今の紹介で、最後の確認が取れた」 その一言で、夫の栄光の夜は、崩壊の始まりへと変わっていく――。夫婦|第二の人生|不倫1.4萬字5 2116 -
完結第12話
午前3時の離婚届
午前3時17分。夫・俊介は帰ってこなかった。 その夜、日本へ戻ってきていたのは、夫の“初恋の女性”だと思っていた田中雪。彼女のSNSには、高層ホテルの夜景、二つのワイングラス、そして私が夫に贈ったはずの腕時計が写っていた。 3年間、木村家の嫁として髪も服も仕事も変え、良い妻になろうとしてきた私。けれど夫が本当に優しくしていた相手は、私ではなかったのかもしれない。 そう思った朝、私は義母に離婚届を差し出し、1億2000万円を受け取って家を出た。 だが数日後、夫は離婚届を握りしめ、泣きながら私を捜し始める。 初恋の女性、隠された写真、失くしたはずのブレスレット。 私たちの結婚は、本当に嘘から始まっていたのか――。嫁姑|不倫1.8萬字5 770 -
連載中第13話
20億追放妻の封筒逆転
斎藤グループ創業家の長男と結婚して5年。跡継ぎを望まれながらも子どもに恵まれず、結菜は義実家の視線に耐え続けていた。 そんなある日、夫の愛人が妊娠したことを知らされる。しかも相手の女性は双子を身ごもっていた。義父母は結菜に離婚合意書を差し出し、20億円と引き換えに日本を出るよう命じる。 家族だと思っていた場所から、金で追い出されることになった結菜。だが署名の直前、彼女は誰にも言えない“ある事実”を知る。 何も告げず海外へ渡った結菜と、愛人との結婚式を迎えようとする元夫。 すべてが斎藤家の思い通りに進むはずだったその日、式場に一通の封筒が届く。 そこに記されていた真実が、夫と愛人の未来、そして斎藤家の後継者計画を静かに崩していく――。因果応報|人生逆転|不倫2.0萬字5 2839 -
完結第10話
消えた金づる夫
妻と娘が、妻の浮気相手とハワイ旅行へ出発する朝。 山中敏文は、玄関で笑いながら荷物を確認する2人を黙って見送っていた。妻の裏切りも、娘がそれを知りながら母親の浮気相手と親しくしていたことも、すでにすべて知っていたからだ。 「今日でさようならだな。永遠に帰ってこなくていいぞ」 敏文の言葉を、妻はただの嫉妬だと笑い飛ばす。娘もまた、父を見下すような言葉を残して出ていった。 しかしその日こそ、敏文が何か月もかけて準備してきた“最後の日”だった。 2人がハワイで浮かれている間に、家の中から荷物は消え、生活の土台は静かに崩されていく。妻が当然のように帰るつもりだった場所は、もう以前の家ではなかった。 帰国後、空っぽの部屋で妻が知ることになる真実。 そして、金づるだと思っていた夫が本気で消えた時、彼女たちの人生は一気に崩れ始める――。人生逆転|夫婦|不倫1.5萬字5 5334 -
完結第12話
凍った再婚式
36年間連れ添った夫の鞄から、妻・佳子が見つけたのは、見知らぬ女性との結婚招待状だった。 しかも日付は3月14日。会場は京都・祇園の高級旅館。招待客は約100人。夫はまだ離婚も成立していない妻を残したまま、別の女性との“再婚式”を準備していた。 だが佳子は泣かなかった。問い詰めることもなく、招待状を写真に収め、静かに元の場所へ戻した。 夫婦の共有口座から消えていた金。京都に隠されていた3800万円のマンション。退職予定の夫に支払われる2500万円の退職金。そして、妻を財産から外そうとする遺言。 36年間、夫の予定も家計も管理してきた佳子は、すでにすべてを記録していた。 そして迎えた再婚式当日。 祝福に包まれるはずだった会場へ、一通の呼出状が届けられる。 夫が新しい人生を始めるはずだったその日、明るみに出たのは、誰にも知られたくなかった嘘と隠し財産だった――。因果応報|不倫1.7萬字5 2464 -
完結第13話
止まったカードと空の家
夫の正文が「会社の旅行」と言って家を出た朝、私はすべてを知っていた。 行き先で待っているのは会社の同僚ではなく、高校時代からの親友・美津。しかも夫は、私名義のクレジットカードを勝手に使い、親友との食事や買い物にまで手を出していた。 泣いて問い詰めることはしなかった。証拠はすでにそろっている。娘も、父親の異変に気づいていた。 「引っ越すよ」 夫が浮気旅行を楽しんでいる間に、私は娘と新しい家へ向かった。そして夫のカードを止め、彼の荷物を“ある場所”へ送りつける。 旅行先で支払いができなくなった夫。荷物を受け取った親友の家。そして、空っぽの部屋へ戻ることになる裏切り者。 夫と親友を同時に失った私が、娘と本当の人生を取り戻すまでの物語。夫婦|親子関係|不倫1.9萬字5 13445 -
完結第7話
親友に夫を譲った日
家事、育児、義母の介護、そしてパート。 小島弥生は10年間、夫・友幸の家庭を支えるために、休む暇もなく働き続けてきた。 そんなある日、出張から戻ったはずの夫が、突然リビングで土下座する。 「お前の親友を妊娠させた」 隣にいたのは、大学時代から親友だと思っていた舞子だった。舞子は悪びれるどころか、勝ち誇った顔で言い放つ。 「旦那はもらうから、あんたは出ていって」 しかし弥生は泣き崩れることも、怒鳴ることもしなかった。 「喜んで」 そう答えた彼女は、実は5年前からすべてを知っていた。夫の裏切りも、親友の本性も、そして自分が見下され続けていたことも。 証拠、住まい、収入、義母の行き先。 すべての準備を終えた弥生が静かに家を出た3日後、舞子から血相を変えた電話がかかってくる。 奪ったはずの夫には、もう何も残っていなかった――。夫婦|熟年離婚1.1萬字5 5812 -
完結第9話
捨てた妻の春
離婚したその日、吉田静香は妊娠3ヶ月だった。 夫・城戸隼人は初恋の女性と再婚するため、静香の涙にも気づかず離婚協議書に判を押した。そこには「婚姻中の子供なし」と記されていたが、静香のお腹には、すでに小さな命が宿っていた。 引き止めることも、告げることもせず、静香は1人で子供を産む決意をする。 生まれた息子・春を抱きしめながら、彼女は小さな写真館「時間」を開き、母として、写真家として、懸命に生きていった。 それから12年後。 春の卒業式に、成功した実業家となった隼人が来賓として現れる。何も知らないままステージに立った彼の前に、花束を抱えた1人の少年が歩み寄った。 その顔を見た瞬間、隼人の表情が凍りつく。 失った時間は、どれだけ金を積んでも戻らない。 12年越しに明かされる真実が、彼の人生を静かに崩していく――。夫婦|不倫1.4萬字5 2508 -
完結第28話
十五年の我慢、裏切った家族に裁きを
長年尽くした家庭、夫のため、娘のためだけに生きてきた主婦のあなた。 毎日朝早く起きて食事を作り、家を磨き、姑のわがままも全部我慢してきたのに… 突然夫が土下座して「20 歳の若い愛人が妊娠した、早く離婚してくれ」と突きつけられたら、あなたはどうしますか? 主人公ゆみは何も泣き叫ばない。 冷めた顔で事前に用意した離婚届を差し出し「分かった、離婚する。家の貯金、家具、私の荷物以外全部持っていっていい」 夫は拍子抜けし、図々しく「娘も連れていけ、俺は新しい子供を育てるから」と言い放った。 その瞬間、ゆみが静かに突きつけた真実が、夫と姑、親族全員を地獄に落とす―― 「無理よ、この娘はあなたの血が繋がっていない子なの」 夫の隠し口座、愛人の妊娠詐欺、数百万円の借金、姑の裏切り録音… 十五年分の我慢と傷つきを、全部証拠と共に親族全員の前で暴き、夫一家を財産も居場所も全部失わせた。 夫は傷害事件で逮捕、姑は介護施設で一人孤独に暮らし、娘は自分の身勝手で誰にも頼れない人生を歩む。 一方主人公は自分の料理で人気総菜屋のパートとして、誰にも束縛されない自由な第二の人生を手に入れた。 長年家族に尽くして損ばかりしてきた主婦必見! 裏切った夫と身内にきっちり報復し、自分だけの幸せを掴む爽快完結ストーリーです。因果応報|修羅場|不倫4.2萬字5 1116