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自由を返した春

自由を返した春

紀子の小さな台所 完結 0

結婚して36年。紀子は、夫・和夫のために食事を作り、家を守り、家族を支えてきた。 そんなある十一月の夜、いつものように豚汁を並べた食卓で、和夫は突然こう告げる。 「俺はもう自由に生きたい。離婚してくれ」 三十年以上連れ添った妻に向けられた、あまりにも身勝手な言葉。しかも和夫は、離婚後も自分の母親の介護だけは紀子に任せるつもりでいた。 怒ることも泣くこともできないまま、紀子は静かに家を出る準備を始める。 そんな彼女の心を少しずつ救ってくれたのは、七歳の孫・美優だった。小さなエプロンで卵焼きを手伝い、「おばあちゃんの味が一番好き」と笑うその姿が、紀子に失いかけていた温もりを思い出させていく。 やがて紀子は、誰かの妻でも世話係でもない、自分自身の人生を歩き始める。 一方、「自由」を選んだはずの和夫は、紀子がいなくなって初めて、自分が何もできない現実に気づいていく――。

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