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完結第17話
十九年間、夫に翻訳されていた
結婚十九年目、離婚届を差し出した私に、夫は怒りもせず一冊の古い青いノートを手渡した。そこに並んでいたのは、私の名前と、私が一度も書いたことのない十九年分の「私の本音」だった。夫は私の諦めや沈黙をすべて都合よく翻訳し、家庭の公式記録として積み上げてきたのだ。書斎には同じ手帖が整然と七冊並び、高校生の娘すら「お母さんが言いそうなこと」と父親を疑わない。離婚調停まであと十日。完全に孤立した家の中で、私は自分自身の記憶と戦い始める。夫婦|裡の顔|修羅場2.7万字5 10506 -
完結第18話
今回は、探さない
突然のリストラで職を失った夫は、出版業界で顔の広い私に「仕事を紹介してくれ」と当然のように求めてきた。十八年間、夫の躓きを先回りして解決してきた私は、初めてその手を引っ込める。三ヶ月で底をつく貯金、娘の留学辞退、再就職の全滅。元課長のプライドを砕かれ、二十歳の青年に怒鳴られながら泥まみれで働く夫を前に、私の手元には元同僚から持ちかけられた「年収七百五十万の優良求人」があった。手を差し伸べれば元通りの生活に戻れる。だが、それを差し出せない理由が私の中にもあった。夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 398 -
完結第16話
新婦母の席札
娘の結婚式を一ヶ月後に控え、義母から「新婦母の席は私が座る。綾子さんは末席でお酌でもしていなさい」と告げられた。二十五年間、波風を立てないよう耐え続けてきた私が反射的に笑って頷こうとした瞬間、いつも傍観者だった夫が「母さんは式に来るな」と箸を叩きつける。親戚中から非難を浴び、耐えかねて謝罪へ向かおうとする私を、玄関で娘が引き留めた。「お母さんは、誰のために謝るの?」親族の圧力に揺らぎ始める夫と、孫娘を手懐けようとする義母。結婚式まであと十数日、家族の偽りの平穏が音を立てて崩れ始める。嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.9万字5 495 -
完結第16話
「実の親じゃない」と夫に言われた日
再婚して六年。高校進学を控えた三者面談の直前、夫から「実の母親じゃないお前は来るな」と告げられた。私は争わず、学校からの連絡書類をすべて夫の机に回した。三ヶ月後、娘が親に内緒で出願したのは、遠く離れた全寮制高校だった。激怒する夫に「この家に一秒もいたくない」と冷たく言い放った娘。だが彼女のスマホには、私が六年間作り続けた手料理のレシピと、調味料の配合がびっしりと書き留められていた。夫婦|親子関係|修羅場2.7万字5 326 -
完結第20話
追い出した妻の味を食べる夫
娘の葬儀直後、「もう維持する理由はない」と夫に鍵を変えられ、所持金六百五十円で放り出された私。拾われた小さな唐揚げ屋で必死に働き五年が過ぎた頃、店に一日四十食の社内弁当の注文が入った。発注元は元夫が経営する外食企業の本社。断ることもできたが、私は社長室宛ての弁当を引き受けた。一週間後、回収された空の容器の底には、「今日の生姜焼きの味、昔食べたことがある」と書かれた元夫の付箋が残されていた。因果応報|裡切られた|夫婦|第二の人生3.1万字5 4659 -
完結第22話
父の葬儀で離婚を迫った夫
父の葬儀の最中、義母から離婚届を顔面に叩きつけられ、夫は臨月の部下を連れて現れた。子供ができないことを罵られ、雨のアスファルトへ放り出された私は、父の遺品が残る古いアパートで完全に縁を切る覚悟を決めた。だが七日後、あの夫が一人でドアを叩いた。目の下に隈を浮かべた夫は、下駄箱の上に分厚い現金の封筒を置き、埃っぽい土間に膝をついて「あと三ヶ月だけ妻でいてくれ」と頭を下げた。嫁姑|夫婦|修羅場|不倫3.2万字5 1181 -
完結第21話
二年間買い続けた夫の浮気相手
子宮全摘出手術の直後、夫から「子供も産めない女と暮らす意味はない」と離婚を告げられた私。夫は社内の若い部下と不倫しており、私は一人で小さなアクセサリー店を始めた。開店六日目、売れずに苦しむ私から最初に商品を買ってくれた匿名の客は、二年間毎月欠かさず注文をくれた。だが、二周年イベントの日に現れたその常連客は、夫を奪った浮気相手その人だった。逃げ出した彼女が残した控えには、「許してほしくて来たのではありません」と震える文字が記されていた。裡切られた|夫婦|第二の人生|修羅場|不倫3.2万字5 464 -
完結第27話
元妻の弟に渡した6万円と12年前の手紙
「見なかったことにしてください」――冷たい雨の夜、私・なつみが駅裏で出会ったのは、12年前に自分を捨てた元妻・さおりの弟、てつやだった。かつて姉に頼り、私たちの共同預金も彼ら家族のために消えたと信じていた彼は、今や空き缶を集めて生きていた。 私は理由も聞かず6万円を渡し、その場を去る。ところが3日後、届いた封筒には4万円の返金と、黄ばんだ一通の手紙が入っていた。差出人は、もう二度と会うつもりのなかったさおり。しかも弟は「姉ちゃんは2年前に亡くなりました」と告げる。 12年間、私は“家族を選ばれて捨てられた”と信じて生きてきた。だが、彼女が死の間際まで隠し続けた手紙には、離婚も消えた共同預金も、私が知っていた真実とはまるで違う理由が記されていた――。夫婦|金銭問題4.0万字5 5708 -
完結第11話
元義母の仕送り要求と元夫の嘘泣き目薬
大手都市銀行の法人営業部で最年少課長を務めるゆかりは、劣等感からモラハラを繰り返す元夫・憲吾と一ヶ月前に離婚した。しかし、心穏やかな生活を取り戻しかけた矢先、赤の他人となった元義母・かず子から「毎月二十万じゃ足りない。今月から三十万仕送りして」と信じがたい増額要求の電話が入る。 離婚を理由に要求を一蹴するゆかりだったが、元義母は「憲吾がうつ病で休職中」と泣き落としにかかる。さらに数日後、自宅を突き止め実家へ怒鳴り込んできた元夫と元義母。玄関前で土下座し「助けてくれ」と涙を流す憲吾だったが、そのポケットから転がり落ちたのは一本の「市販の目薬」だった。暴かれた元夫の横領と解雇の真相、そして逆恨みから仕掛けられたSNSの炎上工作に対し、銀行員としての矜持を胸にゆかりの鉄槌が下る。嫁姑|夫婦1.7万字5 902 -
完結第28話
500万円で結婚した配達員の夫と古い銀行カード
一夜で実家が破産し、父は心筋梗塞で倒れた。手術費500万円を求め、ゆり香が最後にすがったのは、来月結婚するはずだった幼馴染の婚約者・拓也。だが彼は婚約指輪を泥水へ投げ捨て、ゆり香の親友・さやかを「新しい妻」として抱き寄せた――。家も金も、愛する人への信頼さえ失い、絶望の底へ突き落とされたゆり香。 父を救うためなら何でもすると覚悟した彼女は、偶然出会った貧しい配達員・孝太から500万円と引き換えに結婚を持ちかけられ、その妻となる。愛も未来もない取引のはずだった。ところが、孝太から渡されたボロボロの銀行カードが、ゆり香の運命を一変させる。 やがて浮かび上がる柴田家破産の不審な影。そして、なおも自分を嘲笑う拓也とさやか。もう泣いているだけでは終われない。ゆり香は孝太の手を取り、自ら奪われたものを取り戻す反撃を決意する。 しかし――貧しい配達員にしか見えない夫は、一体何者なのか。復讐の幕が上がる時、すべての力関係が覆り始める。夫婦4.2万字5 2205 -
完結第22話
妻の避妊薬
結婚して二年、待望の子供が一向に授からないことに悩む夫・ひろし。自分に原因があるのではないかと案じ、病院での検査を提案するが、妻は「自然に任せたい」と頑なに拒絶する。 そんなある日、ひろしは街中で見知らぬ男と親密に寄り添う妻の姿を目撃してしまう。耳に入ってきたのは、「ピルで避妊してるから子供なんてできるわけない」「夫は本当にバカ」という残酷な嘲笑だった。 愛する妻の正体は、自分を欺き、逢瀬に溺れる裏切り者だったのだ。激しい怒りを押し殺し、ひろしは水面下で興信所に調査を依頼。自宅では「優しい夫」の仮面を被り続けながら、着実に証拠を固めていく。 やがて突きつけられる分厚い調査報告書と、床に叩きつけられた避妊薬のシート。家庭を弄び、夫を侮辱し続けた妻と相手の男に、逃げ場のない冷徹な社会的制裁の鉄槌が下されようとしていた――。夫婦|不倫3.4万字5 1011 -
完結第25話
3回洗う夫と6年潜伏の財閥令嬢
「今すぐ警察を呼べ」――法医学者の親友・ゆかりが、私・美咲の浴室を見た瞬間、真っ青な顔でそう告げた。結婚6年、夫・健一は毎朝5時から風呂場を3度も洗い、ラベルのない薬品で排水溝まで執拗に磨いていた。私は潔癖症だと思っていたが、ゆかりが見つけた赤黒い塊は、強酸性の薬品で溶かされた人間の血液と組織液の痕跡だった。さらに突然電話をかけてきた女性から、健一には6年前に自宅から失踪した前妻・沙織がいたと知らされる。逃げようとした私を健一は監視アプリで察知し、家中の出口を封鎖。「お前も風呂場へ行こうか」と薬品を手に迫ってくる。絶体絶命のその時、玄関のチャイムが鳴り、モニターに映ったのは健一が最も恐れる勤務先の大鳥会長だった――。夫婦3.8万字5 3261 -
完結第28話
左目を殴った夫と2200万円の離婚清算
「いつまで倒れてるんだ?さっさと起きろ」――結婚3周年の夜、私・みさきは夫・直人に顔を殴られ、左目から血を流して床に倒れた。原因は、会社へ忘れ物を届けた私が、直人と若い女性の密会を目撃したこと。義母まで「壊したら治療費がかかる」と冷たく見下す中、私はようやく3年間の暴力と支配から逃げる決意をする。実は直人の会社は、私が外資系企業を辞め、無給で企画や顧客開拓を担って育てたものだった。それでも私は“何もできない専業主婦”として扱われ続けた。怪我の写真、罵声の録音、400万円の貯金を抱え、深夜便でロンドンへ。そこで網膜剥離の危険を告げられながらも、友人・真歩の助けで仕事と離婚の準備を始める。そして、誰かの名前に隠されていた自分の実績が初めて正当に評価された頃、直人は海の向こうまで私を支配しようと動き始める――。夫婦4.3万字5 659 -
完結第25話
一度も抱かれなかった娘
出産翌日に姿を消した妻の代わりに、私は男手一つで娘を育ててきた。「母親は抱っこも拒んで逃げた」と言い聞かせ続けて五年。カルテの保管期限が切れ、産院に呼び出された私の前に置かれたのは、妻が失踪直前に提出した母子同室申請書と一枚のガーゼだった。申請書の最下段には私の拒否印が押されており、持ち帰った鞄からこぼれ落ちた布を拾い上げた五歳の娘は、ピンクの刺繍を指でなぞりながら私を見上げた。夫婦|真相|行方不明|親子関係3.8万字5 508 -
完結第18話
診察室に入れなかった私
妊娠七ヶ月、甲斐甲斐しく尽くす夫の言葉に従い、私は毎回待合室で温かい茶を飲んで待っていた。「異常なし」と笑う夫を疑ったことはない。だが夫が仕事で不在となり、初めて一人で診察室に入ると、医師は冷徹な面持ちで私を見据えた。向けられたパソコンの画面には、私が頑なに治療を拒み、夫が必死に説得したという記録が三回連続で並んでいた。その三回とも、私は一度も診察室に足を踏み入れていない。裡切られた|夫婦|裡の顔|修羅場2.8万字5 2894 -
完結第25話
義母の合鍵が入らない
結婚五年目、情緒不安定を理由に義母に家の合鍵を預けさせられた。夫は母を庇い、私に我慢を重ねるよう笑って求めた。義母の無断侵入は続き、私の大切な机まで雨のベランダへ放り出されたが、私は一度も怒鳴らなかった。一ヶ月後、いつものように合鍵で入ろうとした義母の前に現れたのは、鍵穴すら存在しない最新の電子錠だった。激怒して電話をかけてきた義母に対し、今まで母に逆らったことのなかった夫が「僕が鍵を変えた」と告げた。嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場3.8万字5 1120 -
完結第22話
母は死んだと書いた娘
夫の連れ子だった八歳の娘を引き取り、七年間毎朝弁当を作り、熱を出せば夜通し看病を続けてきた。ぎこちなくとも穏やかに暮らしてきたはずの中学三年の秋、担任に呼び出された私は、娘が提出した調査票を見て言葉を失った。家族欄には「実母は七年前に他界、父と二人のみで生活」と書かれ、私の名前は存在すら消されていた。裡切られた|夫婦|孤獨|修羅場3.3万字5 380 -
完結第13話
1000億を動かす男の静かな復讐
足利銀行の重厚な会議室で、中年の女性行員・北原ゆみ子は頭上から熱いお茶を浴びせかけられ、土下座の凌辱を受けていた。夫である北原翔太郎の慎ましやかな妻である彼女は、新任支店長・神谷悟や幹部たちによる陰湿な書類改ざんの濡れ衣を着せられ、絶望の淵に追いやられていた。だが、その地味な夫の正体は、国内外の巨大ファンドを背負い、一言で1000億円もの資金を瞬時に引き上げられる極秘のキーパーソンだった。妻を侮辱した「5分後」、背後で水面下に仕組まれていた致命的なデータの証拠がシステム上に一斉に放たれ、巨大銀行が音を立てて崩壊していく。元凶である神谷が震える足元で這いつくばり、冷酷な宣告を受けたとき、夫が静かに投げかけた最後の一言とは――?職場逆転|夫婦1.9万字5 177 -
完結第15話
地味な契約社員の妻が消えた日
離婚届が受理されたその夜、森川リノは夫で冷徹な社長のハガ・ハスに、結婚記念日に贈ったパテック・フィリップの腕時計と結婚指輪を無言で突き返し、5000万円の慰謝料も青山のマンションもすべて辞退して姿を消した。ハガ家の「都合の良い妻」として、またグループ企業の経理部で地味な契約社員として過ごした2年間、彼女は夫と華美な秘書・白石麗奈に利用され続け、父の命日すら「死ぬわけじゃないなら仕事の邪魔をするな」と冷酷に切り捨てられていた。しかし彼女が去った途端、ドイツ案件の最高責任者として社外から現れたのは、かつて彼が「どうでもいい赤の他人」と見下したリノ本人だった。さらに、白石が隠蔽していた2年分の業務作成履歴と驚愕の証拠データが次々と社内に露出する中、ハガが知る由もなかった「あの日の真実」とは――?夫婦|不倫2.3万字5 2045 -
完結第22話
8年前の罠と、氷点下の泥まみれ
氷点下十度の極寒の建設現場。巨大建設会社の会長・五藤健二が目撃したのは、入居間近の30階建てマンションで、重いレンガの背負子を担ぎ、泥にまみれて働く一人の女性の姿だった。それは8年前、不倫の証拠を突きつけ、一文無しで家から放り出したはずの元妻・佐藤みさきだった。なぜ彼女がこんな底辺の肉体労働に? 急性白血病を患う7歳の息子の3千万円の治療費を稼ぐため、彼女は過酷な日々を耐えていた。さらに、秘書室長が持ち帰った調査ファイルには、8年前の「不倫」が実母によって仕組まれた完全な捏造だったという戦慄の真実が記されていた。我が子が白血病で命の危機に瀕する中、元妻が隠し通してきた秘密の全貌が暴かれる時、男が下す最後の決断とは――?夫婦|真相3.3万字5 19978