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百円だけの香典

百円だけの香典

縁側の古時計 完結 9

「香典は、一世帯100円までにしてください」 昭和34年、父の葬式で長男が玄関に貼った一枚の紙に、親族は騒然となった。 父は従業員17人の町工場を30年営み、多くの人へ香典を包んできた。 「今まで受け取った分を返してもらうのが付き合いだ」 叔父も母も、紙を外せと迫った。 そこへ、亡き父から1000円を受け取ったという農家の男が現れる。 「3年かけて用意した。今度は俺が返す番だ」 だが長男は100円だけ受け取り、残りの900円を返した。 その対応に、母は「父さんが築いた信用を壊している」と泣いた。 長男自身も、自分が父の遺志を勝手に解釈しているのではないかと迷い始める。 通夜が終わった夜、玄関の紙を外そうとした、その時。 昼間の農家の男が、小さな風呂敷包みを抱えて戻ってきた。 そして返された900円の本当の使い道を告げた――。

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