「また病院か。大げさだな」 妻・さち子が胸の苦しさを訴えた朝、夫の週一はいつものようにそう言い捨てた。 長年、夫の通院準備、薬の管理、食事の塩分調整まで、すべてを黙って支えてきたさち子。だが彼女自身の診察予定は、カレンダーの隅に薄い鉛筆で書かれ、何度も消されていた。 息子の嫁・由香が見つけたのは、破かれた予約票、飲まれないまま隠された薬、そして引き出しの奧にしまわれた一通の紹介狀。 「私の分は、すべて後で」 その小さな文字に、家族の誰も気づかなかった。 そしてある朝、さち子は臺所で倒れる。 病院の受付で、週一は初めて知る。自分は妻の病名も、薬も、痛みが始まった日さえ知らなかったのだと――。