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完結第4話
年金十二万円の老人の正体
川崎の銀行窓口に、古びた作業着を着た75歳の老人・西川誠三がやって来た。 海外出張中の息子に頼まれ、正式な委任状を持って残高確認に訪れただけだった。 しかし若い行員は、誠三の年金額と市営住宅の住所を見た瞬間、彼を見下した。 「年金十二万の貧乏人が、何しに来たんですか?」 さらに支店長まで現れ、老人を詐欺師扱いし、ついには言い放つ。 「ボケ老人は銀行に来るな」 誠三は怒鳴らなかった。 ただ静かに銀行を出て、一本だけ電話をかけた。 相手は息子・西川雄一。 全国に関連会社を持つ巨大建設グループの社長だった。 「みずほ第一銀行との取引を停止する」 その一言で、銀行本店に緊急アラートが走る。 総額一兆円規模の取引が一斉に止まり、翌朝、銀行役員たちは50台の黒塗り車で誠三のもとへ謝罪に向かった。 だが、彼らがどれほど頭を下げても、一度踏みにじった老人の尊厳は、簡単には戻らなかった――。年金|退職金|金銭問題5.9千字5 0 -
完結第8話
退職金三千万円と残高三千円の通帳
43年勤め上げた会社を退職した日、玲子が花束を抱えて帰宅すると、夫が最初に口にしたのは労いの言葉ではなかった。 「退職金、いくらあるんだ?」 夫の正隆は、義母と一緒になって玲子の退職金を「佐伯家のもの」と言い張り、通帳と印鑑を差し出すよう迫ってくる。 だが玲子は、長年の会社勤めで知っていた。 言葉は消えても、記録は残る。 義母の暴言、夫の要求、離婚届を使った脅し。 すべてを録音しながら、玲子は夫が昔から知っている“いつもの場所”に、ある通帳を置いた。 残高3187円の古い通帳を。 翌朝、夫は離婚届を残し、通帳と印鑑を持って姿を消す。 だが本当の退職金3000万円は、夫の知らない口座に守られていた。 さらに夫が隠していた“別の女性との店の計画”と、企業年金の口座変更まで発覚する。 43年分の我慢を証拠に変えた玲子は、奪われかけたお金と人生を静かに取り戻していく――。退職金|金銭問題|修羅場1.2萬字5 1 -
完結第5話
退職金より重い家計簿
夫・重隆の退職金2800万円が振り込まれた日、麻美は思いがけない言葉を浴びせられる。 「この金は俺の金だ。お前は1円も触るな」 40年間、家を守り、家計を支え、夫が安心して働けるように暮らしを回してきた麻美。だが重隆にとって、妻の年月は「家にいただけ」の一言で片づけられるものだった。 翌朝、麻美は朝食を作らず、小さなカバンだけを持って家を出る。 向かった先は、亡き母が残した古い平屋。そこで麻美は、長年ひそかに守り続けてきた茶色の封筒を取り出す。 中に入っていたのは、家の登記書類、通帳の控え、そして40年分の家計簿。 退職金を独占したつもりだった重隆は、やがて老後資金と家の“本当の名義”を知ることになる。 夫婦の老後を壊したのは、お金そのものではなかった。 妻の人生を軽んじた夫が、失ってから初めて気づいたものとは――。退職金8.0千字5 0
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