みかん小説
本棚

"身代わり花嫁は荒くれ旦那に溺愛される" 第10話

そして残った穀物を干しで完全に乾かし、再び貯蔵する正しい方法を教えました。女たちは彼の識にし、黙々と彼に従いました。富士はその全ての景をくから見ていました。彼女は自分のの信が崩れたことへのりと、子供たちを救った吉助への複雑なで揺れいていました。島の守りとしての誇りを傷つけられたのです。彼女は数吉助のに姿を見せませんでした。

そんなあるの夕暮れ、吉助がしく直した蔵の通気窓を確認していると富士が彼にづいてきました。彼女は何も言わず、自分が腰に差していた黒曜刀を抜き、吉助の元に放り投げました。それは島で最も貴な武器でした。吉助が驚いて彼女を見ると、富士は相変わらずぶっきらぼうな声で言いました。

「この島の岸は夜になると危ない。獣がることもあるし、を滑らせることもある。命を救われた恩はないが、おはもうこの島の客だ。」

彼女は謝罪しませんでしたが、それは彼女ができる最限の礼儀の現れでした。吉助は静かにその刀を拾いげました。彼もまた何も言いませんでしたが、彼女の気持ちを汲み取りました。に張っていた氷が音もなく溶け落ちた瞬でした。

ばあ様は吉助をこれ以ませることはしませんでした。

広告

彼女はで最も見らしが良く清潔な空きを彼に与えました。おはもはや漂流したよそ者ではなく、島の尊い員となったのです。

が流れました。吉助は自分が本へ戻る術がないことを悟りました。ここは本からあまりにもれた孤島であり、女たちにはきなを作る技術ももありませんでした。彼は初めこそ絶望しましたが、やがて自分の運命を受け入れることにしました。彼が涯学んだ武士の教えは、どこにいても民を守りてることにあると説いていました。彼にとっては今やこの島の女たちが、彼が守るべき民となったのです。彼は自分のさなを簡素な塾にしました。病から回復した子供たちを集め、読みきを教え始めました。最初は女たちがためらいましたが、おばあ様の全面押しもあり、子供たちは吉助の元へ集まりました。彼は彼女たちに難しい武士の学問を教えたりはしませんでした。代わりに彼女たちの暮らしに必恵を教えました。彼女たちが使っていた拙い文字を理し、読みきしやすい簡単な文字としてえてやりました。子供たちに文を教え、きで気を予測し、潮の満ち干きを正確に計算する方法を授けました。農業には暦の恵がであることを解き、よりくの収穫が得られる農作業の技術を伝えました。

広告

島の子供たちはただ神のりを恐れるだけの過から抜けし、識の目で世界を見つめ始めました。

そうして幾度かのが過ぎ、またいく度かのが訪れました。吉助はもはや、島に漂着した若き代ではありませんでした。彼の髪はくなり、顔にはいしわが刻まれましたが、その瞳はかつてないほどく穏やかでした。彼は今や島のであり、ばあ様のを継ぐ最も信頼された老となっていました。富士は相変わらず島の守護者でしたが、今では武力の代わりに吉助が授けた識で島を守っていました。

ある涼しいが吹くの夕暮れでした。吉助は自宅の縁側に座り、平線を染める夕焼けを眺めておりました。あれはすっかり古びた武士の羽織りの代わりに、島の女たちが織ってくれた綿の温かい普段着を着ていました。彼のにはさな硯とが置かれ、この島で取れるの皮で作った首したためておりました。

が運ぶの種よ

毛なにも根を張りて」

彼が静かにを吟じていると、誰かがづく気配がしました。いつのにか島のしい老となったの千でした。彼女の顔には幼い頃の怯えた好奇の代わりに、温かく穏やかな笑みが浮かんでいました。彼女は吉助のに湯気がつ芋がゆの椀をそっと置きました。

「先、夕飯のでございます。めて参りましたよ。」

吉助は頷き微笑みました。あちこちのの煙突からは夕飯を炊く煙が穏やかにがりました。それはかつてカビた穀物を焼いた恐怖の黒煙ではなく、暮らしが続いていることを告げる温かな命の煙でした。どこからか子供たちが吉助の教えた本を読む声がに乗ってくから聞こえてきました。吉助は温かい芋がゆの椀を両で包み込みました。彼は嵐で全てを失ったとっていましたが、実はこの見らぬ孤島で、彼が涯求めていたと平穏を得たのだと悟りました。彼は目を閉じました。には穏やかな波の音が唄のように響いてきました。この島の夜はこうしてく平に過ぎていくのでありました。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: