「先生、お腹が痛いです」 昭和30年、11歳の少女は給食の時間になると、毎日決まって教室を出ていった。 熱はなく、午後の授業には何事もなかったように戻ってくる。 不審に思った担任があとを追うと、少女は校舎裏で水だけを飲んでいた。 家では、何か月も給食費を払えていなかった。 「私だけ払ってないのに食べたら、ただでもらうみたいだから」 担任が給食を勧めても、少女はパンを弟へ持ち帰るようになった。 そして冬、机の中から硬貨の入った小さな封筒が見つかる。 「これは何のお金?」 「中学校へ行くためのお金です」 少女は自分の食べる分を減らし、受験費用を貯めていた。 だが父は、卒業したら働いて家計を助けるよう命じていた。 担任が封筒を父の前へ置くと、少女は震える声で初めて本心を告げた。