"給食を食べなかった少女" 第1話
昭30の、群馬県のさな町にある造舎では、学期からのが増えていた。まだ毎分な献がるほどではなかったが、昼になると廊の向こうから鍋の匂いが漂い、目の終わりがづく頃には、子どもたちが何度も壁の計を見るようになった。アルミの器へ盛られる温かい汁物とパン、脱脂乳は、決して豪華なものではなかったが、腹を空かせた子どもたちにとってはのきな楽しみだった。
の佐伯子も、のうちは皆と緒にをべていた。痩せた体つきの女で、肩まで伸びた髪を母親が切ったらしく、のさがし違っていた。目つを着ることもなく、休みに声で騒ぐタイプでもなかったが、授業に難しい問題をすと誰よりく鉛をかすため、担任の林浩は何度も彼女の答案に赤い丸をつけていた。
特に国語と算数は学でも位だった。図にある本をほとんど読み終え、の終わり頃には級向けの参考まで借りていたことがある。林が「そんなに急いで何になるんだ」と笑うと、子はし考えてから、「先になったら、いっぱいらないといけないでしょう」と答えた。
「先になるのか」
「できたら」
「できたらじゃなくて、なりたいなら勉しろ」
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「はい」
その、子は珍しく嬉しそうに笑った。
ところがに入ると、その子に妙な癖ができた。
目の終わりを告げる鐘が鳴るしになると、決まってを挙げるようになったのである。
「先、お腹が痛いです」
最初の、林は何も疑わなかった。
「保健へっておいで。無理するなよ」
子はさくをげ、教科を閉じて教をた。ちょうどその直、当番の子どもたちがを運んできたため、林も子のことをく考える余裕はなかった。
午の授業が始まるしになると、子は戻ってきた。
「もう丈夫か」
「はい」
「何か薬をもらった?」
「寝てたら治りました」
顔は悪くなかった。
もなさそうだった。
次のは何事もなく過ぎたため、林もなものだとった。
しかし、その翌。
また目になると子がを挙げた。
「先、お腹が痛いです」
その週だけで回。
翌週も回。
保健担当の根千代まで首を傾げた。
「午は元気なのよ。体育も普通にやってるし、休みは本を読んでるでしょう」
「昼だけなんです」
「何かべると具が悪くなるのかしら」
「でも、をべるに来るんですよね」
で話しても理由は分からなかった。
林は教へ戻り、番ろの席で算数の問題を解いている子を見た。元の鉛はくなり、の部分を刀で削った跡が何度も残っている。
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物を切にする子だとは以からっていたが、最は消しゴムまで米粒ほどのきさになるまで使っていた。
そのの帰り。
子が教をたあと、林は彼女の机のに枚のが落ちていることに気づいた。
拾ってみると、費の納入袋だった。
表には佐伯子の名。
裏には学印。
そしてには、さく赤い字で、
《未納》
とかれていた。
林はしばらくそのを見つめた。
佐伯が学関係の負担を遅れがちにしていることはっていた。度初めの教材費も部まだ納められておらず、費についても事務から何度か庭へ通がている。
ただし、だからといって子どものを止めるようなことはしていない。
担当からも、
「子どもにはべさせてください。庭への連絡はこちらで続けます」
と言われていた。
それならなぜ。
子は昼だけ腹痛を訴えるのか。
翌の曜。
目の途。
また子がを挙げた。
「先、お腹が……」
林はしだけを置いた。
それでも普段通り頷いた。
「っておいで」
女は教をた。
数分、林は用事を作って隣の教師に教を頼み、職員へ向かった。その途、保健のを通る。
扉がいている。
を覗いた。
子はいなかった。
「根先」
「はい?」
「佐伯子、来てませんか」
根は驚いたように顔をげた。
「今は来てないわよ」
林の胸にさな違が広がった。