"一万八千円の飯" 第8話
「断言はできない」
は首を振った。
「でも母は、子さんが入院していた、里見が度だけ病へ来たのを覚えていた」
その、廊まで聞こえるほど激しく言い争っていたという。
里見が帰った、子はい泣いていた。
そして恵子へ告げた。
「もし私がいなくなったら、優馬に伝えて。清は、おじいちゃんとおばあちゃんがあの子に残したもの。誰にも奪わせないで」
は続けて、型のUSBメモリを渡した。
「俺が3かけて集めた資料だ」
には、レストランの仕入れ台帳、の会社の納品記録、里見剛の接待費細、メールのスクリーンショットが入っているという。
「これだけじゃ里見を落とせない。でも、根がどれだけいかは分かる」
優馬が礼を言い、ちろうとすると、がもう度呼び止めた。
「それから、弟の」
「がどうした」
「あいつ、あんたがってるほど何もらないじゃないぞ」
によると、財務部へほとんど顔をさないように見えるは、ここ数か、購買部の帳簿へ何度もアクセスしていた。
そして里見が正な請求の部に、の名義を使っている形跡がある。
もし問題が発覚すれば、息子であるへ責任を押しつけることもできる。
優馬は、先の話をいした。
――首を突っ込まない方がいい。
弟は母を守っていたのではない。
広告
自分も何かを恐れていたのかもしれない。
非常階段をり、ロビーへ戻ると、佐藤が声をかけてきた。
「川支配。里見様からお話がありました。折り返してほしいとのことです」
優馬の臓が、度く鳴った。
すぐに話をかける。
「優馬君、お疲れ様」
里見の声は、いつもと変わらず柔らかかった。
「聞いたわよ。レストランでし揉めたんですって?」
「したことじゃありません。俺が値段を見違えただけです」
「そう。それなら良かったわ」
優しい笑い声。
「ホテル経営って、表から見えるものだけじゃないの。優馬君は帰国したばかりだから、これからしずつ分かってくるわ」
言葉は親切だった。
だが優馬には、その裏側が聞こえていた。
――余計なことをするな。
「母さんの言う通りです。俺はまだ何も分かってませんから」
優馬も笑った。
すると里見は、突然族で事をしようと言いした。
曜の夜。
調査を始めてわずか3に設定された族の夕。
偶然とはえなかった。
その夜、優馬はから受け取ったUSBのを確認した。
の会社は3からホテルへ産物を納入し、より40%ほどい価格を付けている。
ホテルから毎1,500万から2,000万円ものが流れ、その部が複数の経を経て、里見剛に関連する座へ移っている形跡もあった。
さらにメールには、剛からへ送られたい文面が残っていた。
広告
――今分も、いつも通り頼む。
正な利益供与がある能性はい。
しかし、全てを里見本へつなぐ証拠はまだない。
曜。
優馬は実へ向かった。
里見はのワンピース姿で玄関へてきた。
「来るだけでいいのに。わざわざありがとう」
持ってきた果物を受け取り、いつも通り優しく笑う。
リビングでは父が聞を読み、はマッサージチェアに寝転んでスマートフォンを触っていた。
どこにでもある族の景。
だが今の優馬には、台装置のように見えた。
夕は豪華だった。
ズワイガニの茶碗蒸し、級魚の煮付け、鮑、フカヒレ。
事の半ば、里見が箸を置いた。
「優馬君。最、レストランのご飯の件ですごくなんですってね」
父のグラスが止まった。
の指も、スマートフォンの画面で止まる。
「財務部までったとか」
優馬は茶碗蒸しをべ、ゆっくりみ込んだ。
「したことじゃないですよ。18,000円のご飯はさすがに変だとっただけです」
自然に笑う。
「ロビー副支配として、客からクレームが来るに確認したかっただけです」
里見は微笑んでいる。
だが、目だけがたかった。
その、父がをいた。
「例のメニューは1,800円に戻す」
里見の笑顔がほんのわずかに消えた。
「過剰に支払った客には返する。関係者には処分をす。この件はこれで終わりだ」
優馬は父へグラスを掲げた。
「親父の言う通り。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
元嫁の15枚返し
離婚から3日後の午前5時。佐藤恵子の携帯に、元姑から突然電話がかかってきた。 「今すぐ来て、法事の料理を用意しなさい」 12年間、家事も介護も金銭の穴埋めもすべて背負ってきた恵子。だが夫は秘書と関係を持ち、姑と義妹は彼女を使用人のように扱い、最後には荷物同然に家から追い出した。 それでも彼女たちは、恵子がいなくなって初めて、自分たちの生活が何によって支えられていたのかを知ることになる。 恵子名義の15枚のカード。 義父が病室で密かに残した遺言。 そして、10億円のペントハウスの本当の所有者。 元嫁を見下していた家族が、最も頼り切っていたものを一つずつ失っていく中、恵子は静かに告げる。 「あなた方は、もう私とは何の関係もない人たちです」 これは、“良い嫁”でいることをやめた女性が、自分の名前で人生を取り戻すまでの物語。因果応報|嫁姑|絶縁2.0萬字5 221 -
完結第11話
断髪新郎の逆転婚礼
抗がん剤治療で髪を失った彩佳は、唯一の家族である兄・健太の結婚式に出席することになった。 両親を亡くしてから、兄妹2人で支え合って生きてきた彩佳。兄の幸せを心から願い、母の形見のスカーフを巻いて式場へ向かう。 しかし、兄嫁の母・礼子は、そんな彩佳を見た瞬間、冷たい言葉を投げつけた。 「その頭で親戚席に座る気なの?」 病気の妹は縁起が悪い。式に出るな。兄との縁も切れ――。 追い詰められた彩佳の前に現れた健太は、笑顔のまま静かに言い放つ。 「では、新郎ごと帰りますか?」 その一言で礼子の顔色は変わった。 だが本当の反撃は、披露宴で用意されていた“新郎新婦、最初の共同作業”から始まる。兄弟姉妹|修羅場1.7萬字5 1470 -
完結第8話
白タク墓参り
夫の命日、私は嫁と孫を連れて墓参りへ向かった。 帰り道、見知らぬ白いタクシーの運転手は、嫁と孫を墓地に残したまま、私だけを乗せて急発進する。 「お客さん、気づいてないの?」 そう言った運転手は、嫁が私の命を狙っていると告げた。けれど、話を聞くうちに私は小さな違和感を覚える。 なぜこの男は、孫の名前を知っているのか。 なぜ嫁の悪口を言いながら、何度も家の名義や権利書の話へ戻るのか。 逃げ場のない車内で、私は亡き夫の言葉を思い出す。 「困った時ほど慌てるな」 鞄の底に入れた携帯電話、孫が書き写した車の番号、そして嫁だけが気づいた不自然な話し方。 離れ離れになった家族が残した小さな手がかりが、やがて1本につながっていく――。因果応報|夫婦|修羅場1.2萬字5 462 -
完結第10話
勘違い常連の末路
51歳独身の佐々木博行は、結婚相談所を使うことに強い抵抗を持っていた。 「出会いは自然であるべきだ」 そう信じる彼は、自分から女性に近づくことはせず、いつか相手の方から気づいてくれるのを待ち続けていた。 そんなある日、駅前の書店で、女性店員・水野佳奈に声をかけられる。 探していた本を案内され、会計で笑顔を向けられ、前に買った本のことまで覚えていてくれた。佐々木にとって、それはただの接客ではなく、“自分だけに向けられた特別な好意”に思えた。 やがて彼は、何度も書店へ通い、佳奈だけを探すようになる。 しかし、彼女が伝えた「夫がいる」という一言さえ、佐々木の中では別の意味に変わっていく。 親切な接客。 覚えられていた注文。 何気ない笑顔。 それらを恋愛の始まりだと信じた男が、最後に見つけた“次の自然な出会い”とは――。真実|修羅場1.5萬字5 165 -
完結第9話
喪服の離婚届
父の三回忌法要へ行きたい。 ただそれだけの願いを、姑は「嫁なら婚家を優先しなさい」と切り捨て、夫・誠治は離婚届を投げつけて脅した。 「一歩でも外に出てみろ。その時は終わりだ」 10年間、夫と姑の顔色をうかがい、実家とのつながりさえ遠ざけられてきた由佳。けれど、亡き父を侮辱されたその瞬間、彼女の中で何かが静かに切れた。 由佳は黙って離婚届にサインし、そのまま家を出る。 夫はまだ知らなかった。 自分が見下してきた妻の実家が、実は彼の勤める会社と深く関わっていたことを。そして、隠してきた不正の証拠が、すでに集められていたことを。 翌朝、誠治がいつものように会社のゲートへ社員証をかざした時、扉は開かなかった――。因果応報|夫婦1.4萬字5 585 -
完結第8話
魚臭い嫁の30万円返し
寿司屋に嫁いだ私を、兄夫婦は新築祝いに呼ばなかった。 理由は「新しい家が魚臭くなるのは嫌だから」。それなのに兄は、当然のように電話でこう言った。 「祝い金だけ口座に入れろ。30万な」 あまりの非常識さに、私は兄からの連絡を無視することにした。 しかし1年後、兄嫁が突然、私の家の前で土下座してきた。見下していたはずの寿司屋に、どうしても入れてほしいと言うのだ。 その理由を聞いた時、私は兄夫婦が新築祝いで金を集めたかった本当の事情を知ることになる。 魚臭いと笑った仕事が、最後に兄夫婦の運命を大きく変えていく――。裡切られた|嫁姑|修羅場1.2萬字5 1162 -
完結第9話
喪服の隠し子
病弱だった妹・ユキが、結婚からわずか2年で突然この世を去った。 最愛の妹を見送る葬儀の最中、姉のサチは偶然、妹の夫・タクが誰かに電話している声を聞いてしまう。 「子供は大丈夫だ。バレてない」 ユキとタクの間に子供はいない。けれど亡くなる直前、ユキは確かにサチへ何かを伝えようとしていた。 「実家……子供がいる……」 妹が最後に残した謎の言葉。葬儀中に聞いた夫の不審な電話。そして、誰もいないはずの義実家にいた若い女性と幼い子供。 全てがつながった時、サチは初めて知る。 妹はただ病に倒れたのではない。夫とその家族に、何年も残酷な秘密を隠され続けていたのだ。 妹が最後まで伝えようとした真実を暴くため、サチは静かに動き出す。因果応報|人生逆転1.3萬字5 2858 -
完結第11話
赤ワインの逆転離婚
因果応報|夫婦1.6萬字5 1996 -
完結第14話
51%の警備員
30年間、大成グループ本社の正門に立ち続けた年老いた警備員・大川松蔵。 社員の名前を覚え、体調の悪い者にはそっとコーヒーを渡し、誰よりも深く頭を下げてきた男だった。だがある日、会長の息子である専務・大森貴彦は、そんな松蔵を社員たちの前で罵倒し、胸の名札を乱暴に引きちぎる。 「今すぐ出て行ってください」 松蔵は何も言い返さず、床に落ちた名札を拾い、静かに会社を去った。 しかし翌日、貴彦を代表取締役に選任する臨時取締役会に、松蔵は古い背広姿で現れる。 昨日まで誰もがただの警備員だと思っていた老人。その正体を知った瞬間、経営陣は一斉に立ち上がり、彼に向かって深々と頭を下げた。 なぜ、30年間ロビーに立ち続けた警備員が、会社の運命を左右できるのか。 そして、引きちぎられた名札に隠されていた本当の意味とは――。因果応報|人生逆転2.1萬字5 2241