"一万八千円の飯" 第7話
は翌の午3、ホテル裏の非常階段4階で会うよう告げ、方に話を切った。
その晩、優馬はほとんど眠れなかった。
なぜ30代のが、20にくなった母の名をっているのか。
翌午250分。
優馬は裏から従業員通へた。
古い設備が積まれ、湿気の匂いがする所の奥に、錆びた非常階段がある。
4階までがると、が私姿で壁にもたれ、煙を吸っていた。
「通りだな」
「話を聞こう」
優馬は数歩で止まった。
「体、何者なんだ」
はスマートフォンを取りし、枚の写真を見せた。
若い女性と、7、8歳ほどの男の子。
背景には満の桜。
女性の顔を見た瞬、優馬は息を止めた。
昨夜インターネットで見つけた古い聞記事に写っていた。
母・子。
そして隣の子供は――幼い頃のだった。
「俺の母親は、川で政婦をしていた」
が話し始める。
「俺たちは庭の奥のれにみ込みで暮らしてた。あの頃、俺は10歳。あんたはまだ6歳くらいだった」
優馬の記憶の奥に、丸顔でよく笑う政婦の女性がわずかに浮かんだ。
名まではいせない。
「母親の名は?」
「恵子だ」
はスマートフォンをしまった。
「うちの母は子さんがくなるまで、ずっとそばにいた」
そして彼は、優馬のを揺るがす言葉をにした。
「子さんは、病気でんだんじゃない」
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非常階段の空気が止まった。
「何を言ってる」
「入院する直まで元気だった。それが突然倒れて、末期の癌だと言われ、3かでくなった」
「癌だったんだろ」
「母はずっとおかしいとっていた」
の声は静かだった。
「子さんがくなった、にあった遺品が全部消えた。も写真もも、まるで最初からしなかったみたいにな」
そしてポケットから、さな指輪を取りした。
細いのリング。
内側には、器用な文字が刻まれている。
――優馬へ ずっと見守っています。
優馬の指先が震えた。
「子さんがくなる、母にこれを託した」
は言った。
「『優馬がきくなったら渡して』って」
指輪を受け取った瞬、優馬の記憶の奥で、さな面が蘇った。
幼い頃。
寝る、母が自分の指にたい輪を通した。
「何してるの?」
「優馬の指のきさを測ってるのよ」
笑いながらそう答えた母。
すっかり忘れていた。
優馬は指輪を指へ通した。
ぴったりだった。
20に母が測ったきさだった。
は、ホテルへ入社した理由を話した。
母・恵子がくなる、子の無をらしてほしいと言われたのだという。
「子さんは、母をただの政婦として扱わなかった。俺が病気になれば病院代をしてくれたし、正にはまで買ってくれた」
は壁へ背を預けた。
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「くなるも、俺の学費のためにを残してくれた。母にとって、忘れられない恩だった」
優馬は指の指輪を見つめた。
「何を調べた」
「子さんがくなる半、運は初めてきな事業拡をしてる」
は当の流れを説した。
父がさな堂をホテルへ拡しようとしていた頃、川にはその規模の資がなかった。
そこへ里見が現れた。
当、京の投資会社で役員アシスタントをしていた里見は、本という投資を父へ紹介した。
本は巨額を資し、運ホテルの株式約3割を握った。
そして子がくなった、父と里見が再婚すると、本は所株を里見側へ譲って会社から姿を消した。
さらには、母方のについても調べていた。
子の実は、元で菓子を作ってきた「清」だった。
祖父母が交通事故でくなった、その事業と財産は娘の子が相続した。
当の清には数億円規模の価値があった。
ところが子がくれると、清は本の投資会社へ価値よりはるかにい額で買収された。
その、所権は里見側へ移っている。
「清……」
優馬は呟いた。
運ホテルのギフトショップで、今でも番売れている菓子。
自分が幼い頃から何度もべてきたものだ。
その清が、母方の祖父母が築いた会社だという事実すら、優馬はらなかった。
「つまり、母さんの財産を奪うためだったと言いたいのか」
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