"一万八千円の飯" 第5話
接待する側は豪華さを演でき、受ける側も値段を気にしない。
そので売だけが膨れがる。
「この資料、全部せますか」
「優馬君」
緑は配そうに彼を見た。
「これ以触るなら、相当な覚悟がいるわよ」
「最まで調べます」
緑はしばらく黙っていたが、やがてさく頷いた。
プリンターから価格変更ログ、販売履歴、接続記録が次々と吐きされる。
優馬はそれを封筒へ入れた。
部をようとした、緑が呼び止めた。
「優馬君。このホテルは確かにお父様が作ったものよ」
優馬が振り返る。
「でも、あなたがにいた数で、変わってしまったものもある」
午9。
父から話が入り、優馬は社へ向かった。
父はきな机の向こうに座っていた。
机にはお茶と血圧、糖尿病の薬が並んでいる。
以より目のの隈が濃く、顔にも疲れが刻まれていた。
「昨のことを最初から話せ」
優馬は、葵たちとの事からとのやり取り、昨夜見つけた過のメニュー写真、今朝の財務データまで、を交えず順番に説した。
父は最までを挟まなかった。
「資料を」
封筒を渡す。
父は老鏡を掛け、枚ずつ確認した。
売データのページで、が止まった。
「に400……」
資料を置き、筋を押さえる。
しばらく部にエアコンの音だけが響いた。
そして父は、優馬が予していなかった言葉を発した。
広告
「この件からを引け」
「……何?」
「おが見ているより、ずっと複雑な事がある」
優馬は父を見つめた。
「親父は30かけてこのホテルを作ったんだろ」
机へ両をつく。
「商売は正々堂々やれって、散々俺に言ったじゃないか。そのホテルでこんなことが起きてるのに、を引けって?」
父はく黙っていた。
やがて、く言った。
「私がらないとでもっていたのか」
優馬の表が止まった。
父はちがり、窓際へ歩いた。
「6旬、渡辺から価格変更の相談があった。企業接待用の料理として値段を調したいと」
「いくらに?」
「1,800円から6,000円だ」
「でも実際は18,000円だ」
「ああ」
父が振り返った。
「私が承したで、数字をき換えたがいる」
「誰だ」
父は静かに答えた。
「里見だ」
優馬の臓がきくねた。
「いつ気づいた」
「1週だ」
父は再び子へ座った。
「財務のから、異常な売がていると聞いた。里見にも直接確認した」
「何て言った」
「利益率をげるためのマーケティング戦略だと。額な価格設定で富裕層や法客を絞り込むためだと言った」
「それを信じたのか?」
父は答えなかった。
信じていない。
だが受け入れた。
沈黙がそう語っていた。
「どうしてだ」
「おには、まだ見えていないものがある」
父は優馬をまっすぐ見た。
「このまま調べれば、おの像を超えるものがてくる。数が辞めて済む問題じゃない。
広告
運グループ全体が崩れる能性がある」
「だから腐らせておくのか」
「誰がそんなことを言った!」
父の声が初めてくなった。
「私には私の考えがある。だが今ではない。そして、おのように財務資料を持って歩き回るやり方でもない」
優馬は黙った。
「相を警戒させれば、逃げるは逃げる。証拠を隠すはさらにく隠す。正義だけでけば、最に何も残らない」
悔しいが、父の言っていることは正しかった。
「じゃあ教えてくれ」
優馬は声を抑えた。
「里見のに、誰が関わってる」
父は男を見つめ、やがてメモ用へ名をいた。
渡辺。
里見剛。
健。
そして、そのに――。
「?」
「産物の卸業者だ。里見剛のだ」
その名を見て、優馬は朝、佐藤から聞いた話をいした。
今、特別扱いでプレジデンシャルスイートに泊まる客。
里見の弟・剛から直接指示された、産物業者の。
父はメモを取り戻すと、ライターでを付けた。
「どうしても調べるなら、3つ条件がある」
「言ってくれ」
「正規の方法だけを使え。みを握られるな」
「分かった」
「何か分かったら、くに必ず私へ報告しろ」
「分かった」
父はし声を落とした。
「最に誰へき着いても、に流されるな」
優馬は父の目を見た。
それが誰をしているのか。
里見。
自分の妻であっても容赦するな。
父はそう言っているように聞こえた。
「約束する」
燃えたメモが皿ので崩れていく。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
元嫁の15枚返し
離婚から3日後の午前5時。佐藤恵子の携帯に、元姑から突然電話がかかってきた。 「今すぐ来て、法事の料理を用意しなさい」 12年間、家事も介護も金銭の穴埋めもすべて背負ってきた恵子。だが夫は秘書と関係を持ち、姑と義妹は彼女を使用人のように扱い、最後には荷物同然に家から追い出した。 それでも彼女たちは、恵子がいなくなって初めて、自分たちの生活が何によって支えられていたのかを知ることになる。 恵子名義の15枚のカード。 義父が病室で密かに残した遺言。 そして、10億円のペントハウスの本当の所有者。 元嫁を見下していた家族が、最も頼り切っていたものを一つずつ失っていく中、恵子は静かに告げる。 「あなた方は、もう私とは何の関係もない人たちです」 これは、“良い嫁”でいることをやめた女性が、自分の名前で人生を取り戻すまでの物語。因果応報|嫁姑|絶縁2.0萬字5 252 -
完結第11話
断髪新郎の逆転婚礼
抗がん剤治療で髪を失った彩佳は、唯一の家族である兄・健太の結婚式に出席することになった。 両親を亡くしてから、兄妹2人で支え合って生きてきた彩佳。兄の幸せを心から願い、母の形見のスカーフを巻いて式場へ向かう。 しかし、兄嫁の母・礼子は、そんな彩佳を見た瞬間、冷たい言葉を投げつけた。 「その頭で親戚席に座る気なの?」 病気の妹は縁起が悪い。式に出るな。兄との縁も切れ――。 追い詰められた彩佳の前に現れた健太は、笑顔のまま静かに言い放つ。 「では、新郎ごと帰りますか?」 その一言で礼子の顔色は変わった。 だが本当の反撃は、披露宴で用意されていた“新郎新婦、最初の共同作業”から始まる。兄弟姉妹|修羅場1.7萬字5 1474 -
完結第8話
白タク墓参り
夫の命日、私は嫁と孫を連れて墓参りへ向かった。 帰り道、見知らぬ白いタクシーの運転手は、嫁と孫を墓地に残したまま、私だけを乗せて急発進する。 「お客さん、気づいてないの?」 そう言った運転手は、嫁が私の命を狙っていると告げた。けれど、話を聞くうちに私は小さな違和感を覚える。 なぜこの男は、孫の名前を知っているのか。 なぜ嫁の悪口を言いながら、何度も家の名義や権利書の話へ戻るのか。 逃げ場のない車内で、私は亡き夫の言葉を思い出す。 「困った時ほど慌てるな」 鞄の底に入れた携帯電話、孫が書き写した車の番号、そして嫁だけが気づいた不自然な話し方。 離れ離れになった家族が残した小さな手がかりが、やがて1本につながっていく――。因果応報|夫婦|修羅場1.2萬字5 462 -
完結第10話
勘違い常連の末路
51歳独身の佐々木博行は、結婚相談所を使うことに強い抵抗を持っていた。 「出会いは自然であるべきだ」 そう信じる彼は、自分から女性に近づくことはせず、いつか相手の方から気づいてくれるのを待ち続けていた。 そんなある日、駅前の書店で、女性店員・水野佳奈に声をかけられる。 探していた本を案内され、会計で笑顔を向けられ、前に買った本のことまで覚えていてくれた。佐々木にとって、それはただの接客ではなく、“自分だけに向けられた特別な好意”に思えた。 やがて彼は、何度も書店へ通い、佳奈だけを探すようになる。 しかし、彼女が伝えた「夫がいる」という一言さえ、佐々木の中では別の意味に変わっていく。 親切な接客。 覚えられていた注文。 何気ない笑顔。 それらを恋愛の始まりだと信じた男が、最後に見つけた“次の自然な出会い”とは――。真実|修羅場1.5萬字5 166 -
完結第9話
喪服の離婚届
父の三回忌法要へ行きたい。 ただそれだけの願いを、姑は「嫁なら婚家を優先しなさい」と切り捨て、夫・誠治は離婚届を投げつけて脅した。 「一歩でも外に出てみろ。その時は終わりだ」 10年間、夫と姑の顔色をうかがい、実家とのつながりさえ遠ざけられてきた由佳。けれど、亡き父を侮辱されたその瞬間、彼女の中で何かが静かに切れた。 由佳は黙って離婚届にサインし、そのまま家を出る。 夫はまだ知らなかった。 自分が見下してきた妻の実家が、実は彼の勤める会社と深く関わっていたことを。そして、隠してきた不正の証拠が、すでに集められていたことを。 翌朝、誠治がいつものように会社のゲートへ社員証をかざした時、扉は開かなかった――。因果応報|夫婦1.4萬字5 585 -
完結第8話
魚臭い嫁の30万円返し
寿司屋に嫁いだ私を、兄夫婦は新築祝いに呼ばなかった。 理由は「新しい家が魚臭くなるのは嫌だから」。それなのに兄は、当然のように電話でこう言った。 「祝い金だけ口座に入れろ。30万な」 あまりの非常識さに、私は兄からの連絡を無視することにした。 しかし1年後、兄嫁が突然、私の家の前で土下座してきた。見下していたはずの寿司屋に、どうしても入れてほしいと言うのだ。 その理由を聞いた時、私は兄夫婦が新築祝いで金を集めたかった本当の事情を知ることになる。 魚臭いと笑った仕事が、最後に兄夫婦の運命を大きく変えていく――。裡切られた|嫁姑|修羅場1.2萬字5 1165 -
完結第9話
喪服の隠し子
病弱だった妹・ユキが、結婚からわずか2年で突然この世を去った。 最愛の妹を見送る葬儀の最中、姉のサチは偶然、妹の夫・タクが誰かに電話している声を聞いてしまう。 「子供は大丈夫だ。バレてない」 ユキとタクの間に子供はいない。けれど亡くなる直前、ユキは確かにサチへ何かを伝えようとしていた。 「実家……子供がいる……」 妹が最後に残した謎の言葉。葬儀中に聞いた夫の不審な電話。そして、誰もいないはずの義実家にいた若い女性と幼い子供。 全てがつながった時、サチは初めて知る。 妹はただ病に倒れたのではない。夫とその家族に、何年も残酷な秘密を隠され続けていたのだ。 妹が最後まで伝えようとした真実を暴くため、サチは静かに動き出す。因果応報|人生逆転1.3萬字5 2861 -
完結第11話
赤ワインの逆転離婚
因果応報|夫婦1.6萬字5 1996 -
完結第14話
51%の警備員
30年間、大成グループ本社の正門に立ち続けた年老いた警備員・大川松蔵。 社員の名前を覚え、体調の悪い者にはそっとコーヒーを渡し、誰よりも深く頭を下げてきた男だった。だがある日、会長の息子である専務・大森貴彦は、そんな松蔵を社員たちの前で罵倒し、胸の名札を乱暴に引きちぎる。 「今すぐ出て行ってください」 松蔵は何も言い返さず、床に落ちた名札を拾い、静かに会社を去った。 しかし翌日、貴彦を代表取締役に選任する臨時取締役会に、松蔵は古い背広姿で現れる。 昨日まで誰もがただの警備員だと思っていた老人。その正体を知った瞬間、経営陣は一斉に立ち上がり、彼に向かって深々と頭を下げた。 なぜ、30年間ロビーに立ち続けた警備員が、会社の運命を左右できるのか。 そして、引きちぎられた名札に隠されていた本当の意味とは――。因果応報|人生逆転2.1萬字5 2241