"桜袴の女組長" 第10話
私のりは礼子個に向けるべきものよ。会社全体を潰す必はない」
黒はしだけ目を伏せた。
「姉さんらしいご判断です」
「ただし、帳簿は徹底に見て。今、正は切許さない。社にも、礼子を学へづけないと約束させて」
「承しました」
黒はくをげた。
私は子にもたれ、そっと目を閉じた。
裏のにきてきた私が、暴力を使わずに相を黙らせる方法はいくらでもある。
の流れを止めること。
信用を奪うこと。
をいらせること。
のは、拳ではなく、元から崩れる。
礼子が築いてきた「ボスママ」としてのは、あのの庭で完全に崩れた。
けれど、それで終わりではない。
私はまだ、結の常を取り戻さなければならなかった。
翌、学から連絡があった。
先が、改めて話をしたいと言っているという。
私はし迷ったが、断らなかった。
結のためにも、学側とはきちんと向きう必があった。
に入ると、先と教先がちがった。2とも緊張した表をしている。
「島さん、このたびは……」
先は言葉を選ぶようにをいた。
「学内で、保護者のトラブルを防げなかったこと、よりお詫び申しげます」
私は静かにをげた。
「娘ので母の形見を破られ、夫のことまで侮辱されました。
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それを誰も止めなかったことは、忘れません」
先の顔が青ざめた。
「申し訳ありません」
「ただ、私は学に復讐したいわけではありません」
私は続けた。
「娘が普通に学へ通える環境をえてほしい。それだけです」
先はく頷いた。
「必ず対応いたします。保護者会のり方も見直します」
「お願いします」
私はく答えた。
そのをる、教先が震える声で言った。
「島さん、結さんはとても良い子です。どうか、して通わせてください」
私はその言葉に、しだけ表をらげた。
「ありがとうございます」
それから学側は、礼子をとした保護者会の偏った運営を改め始めた。
役員決めも、寄付の扱いも、保護者同士の連絡網も見直された。
礼子が支配していた空気は、しずつれていった。
それでも、私への線が完全に消えたわけではない。
畏怖。
警戒。
好奇。
それらが混ざった目を、私は毎朝じていた。
けれど、結が傷つけられないなら、それでよかった。
私は普通の母親でいたかった。
でも娘を守るためなら、恐れられることも受け入れる。
それもまた、母親としての筋だとった。
破れた袴は、黒が配した職のもとへ預けられた。
「姉さん、必ず元通りにいたします」
黒はそう言ったが、私は正直、半分は諦めていた。
あれほど無惨に裂けた袖だ。
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どれだけ腕のいい職でも、完全には戻らないだろうとっていた。
けれど、2週、袴は私の元に戻ってきた。
桐箱に入れられたそれを、私は居の畳のに置いた。結も隣に座り、緊張した顔で箱を見つめている。
ゆっくり蓋をける。
をめくる。
淡い桜の袴が、静かに現れた。
私は息を呑んだ。
裂けていた袖は、見事に修繕されていた。縫い目はほとんど分からない。むしろ、以よりも丁寧にえられたように見えるほどだった。のいも損なわれていない。
「すごい……」
結がさな声を漏らした。
私は指先で袖を撫でた。
母のの温もりが戻ってきたような気がした。
「本当に直ってる」
声が震えた。
黒はしれたところにっていた。いつもの無表にい顔だったが、目だけは柔らかかった。
「京都の職に依頼しました。古い反物の扱いにけた者です」
「ありがとう、黒」
私が言うと、黒はくをげた。
「姉さんのお母様の形見です。当然のことです」
その言葉に、胸の奥がくなった。
組として、私は何度も黒に命じてきた。に厳しい判断もしてきた。それでも彼は、私をただのの者としてではなく、1のとして見てくれている。
「黒」
「はい」
「学のには、もう来なくていい」
黒は瞬だけ目を伏せた。
「承しています。
あのだけは、姉さんの声が違いましたので」
「娘には、普通の活をさせたいの」
「分かっております」
黒は静かに答えた。
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