"スズメバチ事故の遺言" 第8話
い封筒。
宛名のない、封のされた。
それは8、作業ので眠っていた父からの言葉だった。
桑名から真相を聞かされた、幸子はしばらく言葉を失った。
父がい病だったこと。
それを自分に言も告げず、たった1で抱えていたこと。
病の負担をかけまいとして、あんな最を選んだこと。
幸子のので、8の葬儀のの記憶がよみがえった。
遺ので、いつものように照れた笑みを浮かべていた父。
そので、自分はただ悔していた。
もっと帰ってくればよかった。
もっと話をしておけばよかった。
だが父は、もっといことを1で抱えていた。
「どうして、何も言ってくれなかったの」
幸子の目から、涙が止めどなくあふれた。
それはしみの涙であり、い、父とのにあったさな距がほどけていく涙でもあった。
若い頃、幸子は蜂を継ぐ気はないと父に告げ、町をた。その、松吉が見せた寂しそうな顔を、幸子はずっと忘れられずにいた。
父に悪いことをした。
父を1にしてしまった。
そのいが、彼女の胸にずっと残っていた。
しかし、父は最まで幸子のを縛ろうとはしなかった。
自分の苦しみさえ、娘に背負わせまいとしていた。
あるのの午。
桐原は、8のあのと同じようによくれていた。畦には蝉の声がり注ぎ、の緑がい差しを受けて輝いていた。
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幸子は父のの縁側に座り、い封筒をそっとけた。
からてきたのは、1枚の便箋だった。
父の器用な、けれど文字ずつを込めていたことが分かる字が並んでいた。
には、こうかれていた。
い、苦労をかけてすまなかった。
おが京で懸命に暮らしているのを、いつもくから案じていた。
を継がなくていい。
おは、おのをきなさい。
幸子の涙が便箋のに落ちた。
若い頃、を継がないと告げてをた、父が見せた寂しそうな顔。
その記憶を、幸子はずっと荷として背負ってきた。
けれど父は、とっくにそれを許していた。
いや、最初から娘を縛るつもりなどなかったのかもしれない。
そしての最に、父はこうき残していた。
「蜂蜜だけは、たまにいしてくれ」
たったそれだけのだった。
けれどそのに、父のすべてが込められていた。
50、1も欠かさず蜂の世話をしてきた父。
蜂と話ができると言われた父。
正直に、誠実に、町の々へ蜜を届けてきた父。
その父が最に娘へ残したかった願いは、財産でも、でも、蜂でもなかった。
ただ、自分が涯をかけて作り続けた琥珀の蜜を、たまにいしてほしい。
それだけだった。
幸子はを胸に抱きしめ、声をげて泣いた。
蝉の声が、のが、その背を静かに包んでいた。
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それからが流れた。
桐原の拡張事は完成した。
松吉の蜂があったあいの斜面も事のが入り、今では舗装されたに変わっている。かつてい巣箱が20ほど並び、蜂の羽音が満ちていた所には、もうその面はほとんど残っていない。
代は移り、町も変わっていく。
それは止められない流れだった。
けれど商の物の棚には、今も変わらず1つの蜂蜜の瓶が置かれている。
松吉が最にろしていった蜜だった。
もう何ものもので、当然売り物ではない。それでも主は捨てることをせず、棚の番見える所に飾り続けている。
琥珀の蜜は、の窓から差し込むを集め、今も静かに輝いていた。
折、桐原を通りかかった旅のが、その瓶に目を留めて尋ねることがある。
「これは売り物ですか」
すると主は、決まってし目を細める。
「いえ、これは売り物じゃないんですよ」
そして、くこう言う。
「あれはね、嘘の事故でんだ、正直な男の蜜です」
旅のはたいてい、その言葉のが分からず、議そうな顔をする。
主はそれ以、くを語らない。
ただ懐かしそうに、その瓶を見つめるだけだった。
その瓶のには、1の養蜂の50の歳が閉じ込められている。
最の静かな覚悟。
それを断りきれなかった友の苦しい。
いを経て父の本当のいをった娘の涙。