"青いハンカチの花嫁" 第11話
「これで勝ったつもりかよ、浩司」
彼は胸のポケットから、1枚の古びた写真を取りした。
それを見た瞬、俺の全の血が凍りついた。
健が最まで隠し持っていた、もっとも卑劣な切り札だった。
「これを見ろ。こいつの本当の顔を、みんなに教えてやる」
健が突きした古い写真。
そこに写っていたのは、10の俺だった。
事故から数かに撮られ、すっかり痩せ細った俺が、病のベッドのでくをげている写真。その震える両には、分い現が入った封筒が握りしめられていた。
「こいつはヒーローなんかじゃない。ただの欲な詐欺師だ」
健は会に響き渡る声で叫んだ。
「10、こいつは俺を病に呼びして脅したんだ。俺はもう歩けない。の面倒を見ろってな。そして300万円の現を求してきた」
健の言葉に、会からい鳴ががった。
「俺は親友を助けたいで必にを用した。するとこいつは言ったんだ。このをもらう代わりに、由美を救ったという柄はおに売ってやると」
あまりにもおぞましい嘘だった。
「こいつは由美を300万円で俺に売ったんだよ。をもらって満したから、10黙っていただけだ。今になって俺たちのに現れたのは、が尽きてまた脅し取ろうとしているからだ」
親族席のあちこちから、俺に対する疑いの声が漏れ始めた。
広告
「命の恩だと名乗りたのも、結局お目当てだったの?」
「子に乗って同を引こうとしているだけじゃないか」
俺は子ので、ただ唇をく噛みしめていた。
反論の言葉が喉の奥でつかえててこない。
なぜなら、俺が現を受け取ったという写真自体は、紛れもない事実だったからだ。
10、度なる術と期入院で、実の計は完全に破綻していた。両親は昼夜を問わず働き、親戚にをげて借をしていた。それでも治療費はりず、を放す寸まで追い詰められていた。
そこへ現れたのが健だった。
「浩司、これで術を受けてくれ。その代わり、頼みがある」
健はナースステーションから盗みした由美のをちらつかせた。
「俺は彼女と結婚して成りがりたい。だから、君が恩だという事実は俺に譲ってくれないか。君はこの誓約にサインして、彼女のことは忘れろ」
それは事実の止めだった。
俺は何度も断った。
けれど、病の隅で疲れ果てて眠る母の姿を見た、が折れた。
自分が歩けなくなったせいで、族のまで壊すわけにはいかない。
俺は泣きながら現を受け取り、健が用した誓約にサインした。
健はそのもっとも惨めで屈辱な瞬を、こっそり写真に収めていた。
「浩司、ごめんね、ごめんね……」
広告
会の番ろの席から、むせび泣く声が聞こえた。
俺の母だった。
母は顔を両で覆い、肩を震わせて泣き崩れていた。
息子のプライドをで売らせてしまったという悔が、10のを経て、再び母のをく切り裂いていたのだ。
その泣き声を聞いた瞬、俺のはいに沈み込んだ。
これ以、族に惨めないをさせたくない。
俺は子の輪にをかけ、ろにがろうとした。
健の言う通りだ。
どんな理由があれ、俺はを受け取った。
由美のいを裏切る形になったのは事実だ。
もう終わりにしよう。
そうっただった。
「待ってください」
凛とした声が、会の空気を切り裂いた。
由美だった。
彼女はウェディングドレスの裾をく握りしめ、健のにちはだかった。
「由美、騙されるな。そいつは目当ての詐欺師だぞ」
健が焦ったように叫んだが、由美はやかな目を彼に向けるだけだった。
「健さん、あなたは本当にのが分からないのですね」
由美は正社のからその写真を受け取った。
そして、写真に写る10の俺の顔を、痛ましそうに指でなぞった。
「この写真の浩司さんは泣いています。おをもらってんでいる悪の顔ではありません。何かを守るために、を切るようないでをげている、とてもしい顔です」
親族たちのざわめきが、ぴたりと止まった。
由美は俺の子のにしゃがみ込み、震える俺の両を、自分のさなでしっかり包み込んだ。