みかん小説
本棚

"青いハンカチの花嫁" 第6話

「健さん、あなたは私にこう言いましたよね。あの、交差点で泣き叫んでいた君を助けたんだと」

きく唾をみ込み、引きつった笑顔を作った。

「あ、ああ、そうだよ。君はトラックので腰を抜かして、声で泣いていたじゃないか。それを俺がを挺して助けたんだ。忘れたのか?」

由美はしそうに首を横に振った。

「違います。私は泣き叫んでなんかいません。あまりの恐怖に声もせず、ただち尽くしていたんです」

由美の線が健かられ、俺の方へ向いた。

その瞳には、10のあのと同じ、怯えと謝が入り混じったが浮かんでいた。

「迫りくるトラックのきな音、ヘッドライトの眩しいけない私の背を、誰かがく突きばしました」

由美は両で青いハンカチを握りしめた。

たいるアスファルトに転がり、私は振り返りました。そこには私の代わりにトラックにはねられ、血を流して倒れているの姿がありました」

は静まり返っていた。

由美の声だけが響く。

「私は震えるで、この青いハンカチを取りしました。血が止まらない腕に必に押し当てました。そのは激しい痛みのにいたはずなのに、私を見てしだけ微笑んだんです」

由美の目から粒の涙がこぼれた。

「君が無事でよかった。

広告

かすれた声でそう言って、静かに目を閉じました。私はその言葉と、そのの優しい目を、101も忘れたことはありません」

由美は俺のげた。

俺は言葉を失った。

由美は俺のさながりを、命をかけた瞬の記憶を、ちゃんと覚えていてくれた。

10、誰にも言えずに抱え込んでいた孤独が、しずつ溶けていくのをじた。

自分が無価値になったわけではない。

俺のは、確かに彼女のに届いていたのだ。

由美は顔をげ、再び健を鋭く見据えた。

「でも健さんは、その言葉をらなかった。私がハンカチを当てた所さえ違えていました」

は顔面蒼になり、慌ててを挟んだ。

「そ、それは事故のショックで記憶が混乱していたんだ。く打っていたし、仕方ないだろう」

「健さん、あなたはいつも肩の古傷が痛むと言っていましたね。るたびに、私に肩をさすらせていました」

ははっとして、無識に自分の肩を押さえた。

その仕を見た瞬、会の誰もが健の嘘を確信した。

本当の傷跡は、俺の腕にあるのだから。

「私はずっとあなたに違を抱いていました。恩への謝の気持ちだけで結婚を決めたわけではありません。あなたが本当にあのなのか、しずつ調べていたんです」

広告

由美の言葉に、正が驚きの声をげた。

「由美、おは自分で調べていたのか?」

「はい、お父さん。健さんは私の実の会社のことばかり聞いてきました。お父さんの健康状態や役員の事についてまで、探りを入れてきたんです」

由美の言葉は確かな証拠となって、健を追い詰めていった。

「健さんの代の友にも、さりげなく話を聞きました。健さんは10きな事故になんて遭っていなかった。ずっと健康にサッカーのサークルで活していたと聞きました」

はもう反論する気力も失ったのか、そのにへたり込んだ。

「ちくしょう……なんで、なんでこんなことに……」

そのけない姿に、親族席からはため息とりの声が漏れ始めた。

俺は子ので静かに息を吐いた。

由美はただ守られるだけのい女性ではなかった。

彼女は自分の目で真実を見極めようと、1で違と戦っていたのだ。

「由美さん。ずっと黙っていて、本当に申し訳なかった」

俺がさくげると、由美は涙を拭い、微笑んでくれた。

「ううん。浩司さん、きて私に会いに来てくれて、本当にありがとう」

その言葉が、俺のきく救ってくれた。

子になったがあった。

彼女の笑顔を守れたのだと、の底からえた。

だが、これで終わりではなかった。

嘘が通じないと悟った慶子が、突然きなため息をついた。

「もういいわ。恩じゃないなら、それでいいじゃない」

の空気が再び凍りついた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: