"青いハンカチの花嫁" 第3話
しかし健の次の言葉は、俺のをくえぐった。
「でもさ、子の君が名乗りたら、あの子はどうなる?」
俺は返事ができなかった。
健はベッド脇の子に腰をろし、さらに続けた。
「同と責任で、君の介護をすることになるんじゃないか? それはあの子のを奪うことにならないか?」
言葉を失った。
健の言う通りかもしれないとった。
俺が名乗りれば、優しい彼女は俺を見捨てられないだろう。若い彼女の未来が、子を押すだけの々になってしまう。それは命がけで彼女を助けたがなくなることだった。
「俺に任せてくれないか?」
健はい声で言った。
「俺が恩のふりをして、彼女を守る。君は彼女が幸せになるのをくから見守ってやればいい」
その言葉は、残酷なほど正論に聞こえた。
俺のプライドはずたずただった。
けれど、彼女の未来を守るためには、俺が消えるしかない。そうい込んだ。
俺は親友の提案を受け入れた。
由美の幸せのためなら、俺ができればいい。
それから10、俺は健の嘘に付きってきた。
健は命の恩として由美の実に入りし、彼女の族の信頼を勝ち取っていった。
俺は退院、実に戻った。老いた両親の助けを借りながら、細々と暮らした。
子での活は像以に厳しかった。
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のさな段差。
の届かない棚。
狭い廊。
今まで当たりにできていたことが、何つ簡単ではなくなった。
世の目もたかった。
所のたちは、すれ違うたびに目をそらした。
「若いのに、かわいそうにね」
そんな同の声が、背越しに聞こえることもあった。
親戚の集まりや法事の席では、いつも腫れ物のように扱われた。
母は仏壇ので何度も涙を流した。
「ごめんね、浩司。健康な体に産んであげられなくて。代わってあげられなくて」
震える母の背を見るたび、胸が張り裂けそうになった。
俺が助けた命なのに、族には苦労ばかりかけている。
その葛藤を抑え込むため、俺は夜になると引きしの奥から、あの青いハンカチを取りした。
血の跡がかすかに残る、古びたハンカチ。
それだけが俺の誇りだった。
彼女は今、幸せに笑っている。
俺の犠牲は無駄じゃなかった。
そう自分に言い聞かせることでしか、の平穏を保てなかった。
けれど、数が経つにつれて、俺のにさな違がまれ始めた。
たまに会う健のからるのは、由美へのではなかった。
「あそこの親父、そろそろ会社を放す気らしいぜ」
「結婚すれば、あのもも俺のものになる」
「ちょろいもんだよ。あの族、俺を完全に信じてるからな」
俺が黙っているのをいいことに、健の態度はどんどん傲になっていった。
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俺は何度も健を問いただそうとした。
ふざけるな。
彼女を何だとっているんだ。
けれど健は、そのたびにたく笑った。
「今さら本当のことを言う気か? 君がれば、彼女は君の介護だぞ。それでもいいのか?」
その言葉に、俺はいつもをつぐむしかなかった。
由美は健を信じきっていた。
命の恩への謝が、いつしかに変わったのだと聞いていた。
今さら真実を話せば、由美のをく傷つける。
これまでの10の彼女のいを、すべて否定することになる。
だから俺は、今というまで沈黙を貫くしかなかった。
自分がどんなに惨めでも、親友が彼女を幸せにしてくれると信じたかった。
しかし、それは俺の逃げでしかなかった。
そして今、目ので泣いている由美を見て、俺は自分の違いにはっきり気づいた。
彼女はずっと、嘘のに作られた幸せを押しつけられていたのだ。
由美の肩が刻みに震えていた。
健は苛ちを隠せず、きく舌打ちした。そのさな音が、静まり返った会に気に響く。
「おい、もういい加減にしろ。く席に戻れ」
健が由美の腕を乱暴に掴もうとした。
そのだった。
俺は、ずっと膝に置いていた青いハンカチを、由美のに差しした。
「遅くなって、ごめんなさい」
その言で、由美の瞳から粒の涙があふれた。
そして健の顔が、恐怖に歪んだ。
しかし事態はそれだけでは終わらなかった。