"地図にない赤札の家" 第6話
「バッテリー抜け!」
辺はようやくカメラのバッテリーをした。
ノイズは消えた。
しかし、完全な静寂が戻ると、それはそれで恐ろしかった。
2はまた声で話し始めた。
「あれはイノシシか? 豚か?」
「分かりませんよ。なんで畜舎にあんなものがいるんですか」
「そもそも、あの男はどこへったんだ」
「窓にいた男ですか」
「そうだ。俺たちが玄関をけた、のにいなかった」
「まさか……」
「考えるな」
田は辺の言葉を遮った。
考えれば考えるほど、がおかしくなりそうだった。
は細いをみ続けた。来るは1ほどだったはずなのに、戻りは永のようにじられた。どこまでっても同じような々が続き、同じようなカーブが現れる。
「本当にこのでってますよね」
辺がげに言った。
「ってる。本だった」
「でも、こんなにかったですか」
「黙ってろ。余計なことを考えるな」
田の声は荒かった。
だが、自分でも同じをじていた。
が伸びているのではないか。
同じ所を何度もっているのではないか。
そんなありえない考えが、の隅に浮かんでは消えた。
やがて、々の密度がしずつくなり始めた。
空がける。
暗かったに、夕方のが差し込んできた。
「もうしだ」
田はそう呟いた。
しかし、をりきったには、はほとんど沈みかけていた。
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2が無事にできたのは、夕暮れで、あたりが暗くなり始めた頃だった。
を抜けた瞬、辺はく息を吐いた。
「やっとりられましたね」
その声には、疲労と堵が混じっていた。
田も肩の力が抜けた。
「もう丈夫だよな」
「そういたいです」
2はしばらく黙ったままをらせた。
やがて、方にぽつりぽつりと民が見え始めた。
集落に戻ってきたのだ。
の暮らす所に戻った。それだけで、田はし救われたような気がした。
「ああ、ここまで来ればひとだな」
「そうですね」
辺もさく頷いた。
だが、その堵はすぐに別のへ変わった。
集落に入ったにもかかわらず、周囲は妙に暗かった。
最初に気づいたのは辺だった。
「田さん」
「何だ」
「この辺り、みんな戸締まりがくないですか」
田はフロントガラス越しに々を見た。
確かに、目に入る民はすべて真っ暗だった。
夕方を過ぎたばかりのである。普通なら、台所のかりや居のが窓から漏れていてもおかしくない。テレビの音が聞こえたり、がまっていたり、の気配があっていいはずだった。
しかし、集落はんだように静まり返っていた。
軒も気がついていない。
それどころか、灯ひとつ灯っていなかった。
の端につ柱も、民の玄関灯も、すべて沈黙している。
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混じりの空の、々は黒い箱のように並んでいた。
「ですかね」
辺がそうに言った。
「かもしれない」
田はそう答えたが、納得はしていなかった。
なら、誰かがにて様子を見ていてもよさそうなものだ。懐灯のかりがいていてもいい。だが、集落にはがまったくなかった。
昼、あの老が農作業をしていた所も、今は真っ暗だった。
畑の脇にはない。
あの、写真を見た瞬に表を変えた老の顔が、田のに浮かんだ。
「この所はやめた方がいい」
「遊びでくもんじゃない」
その声が、の奥でよみがえる。
辺がい声で言った。
「あの、田さん」
「辺さん、丈夫だ。先を急ごう」
田は辺の言葉を遮った。
何を言いたいのかは分かっていた。
この集落もおかしい。
そう言いたかったのだろう。
だが、それをにした瞬、本当に何かが追いついてくるような気がした。
田はアクセルを踏み、をらせた。
集落のは狭く、昼に通ったはずなのに、どこからない所のように見えた。々の窓は黒く、のライトが通り過ぎるたびに、古い壁や閉ざされた戸だけが浮かびがる。
「くきいにましょう」
辺の声は震えていた。
「分かってる」
田はナビを見た。
しかし、ナビは正常にいていないようだった。
画面には現が表示されているが、ルート案内は止まっている。先ほどまで聞こえていたな音声案内は消えていたが、その沈黙もまた気が悪かった。