"消えた五輪候補" 第11話
子がオリンピックにるはずだったって、いつも言っていた」
正司の遺骨は、子の隣に納められた。
父と娘は、ようやく同じ所に眠ることになった。
今も、その訓練センターはしている。
ロッカールームはしくなり、あの換気も塞がれた。
けれど、夜になると、どこかから誰かが泣いている声が聞こえるという噂がある。
それが子の声なのか。
それとも、正司の声なのか。
誰にも分からない。
ただ1つ確かなのは、子のは叶わなかったということだ。
貧しいにまれ、父の期待を背負い、痛む首を隠しながら、それでもオリンピックを目指してり続けた女。
そのを奪ったのは、最もくにいた族だった。
嫉妬。
劣等。
歪んだ。
それらが絡みい、1の女の未来を奪った。
族のは、に支えになる。
しかし、見えない痛みを放置すれば、そのは歪み、取り返しのつかない劇をむことがある。
もし健が別の選択をしていたら。
もし正司が息子の苦しみに気づいていたら。
もし子が、ただ1の女として、のさからしでも解放されていたら。
答えはない。
は戻らない。
残されたのは、叶わなかったと、静かに語り継がれる教訓だけだった。
今もどこかで、誰かがを追いかけている。
そのが、荷ではなくでありますように。
そのそばにいるが、支えることを忘れませんように。
そして、族というさのに潜むさな痛みを、誰かが見逃しませんように。
― 完 ―