"壁の中の合唱団" 第6話
たとえ処罰できなくても、真実だけはらかにしなければならない。3が誰に、なぜ命を奪われたのか。それを族に伝えることこそが、刑事としての最の務めだとったのです。
「処罰できなくても、真実は暴く」
はそうに誓いました。
彼は20の事件記録を最初から読み直しました。そして、1つの事実に注目しました。
3を会館のに閉じ込めることができたのは、会館の内部事をるだけです。の構造をり、事のを把握し、コンクリートの壁を作ることができる。部の通りすがりには絶対に能でした。
は昔の団員たちを1ずつ訪ね歩きました。当の会館の台所事、建設事、寄付の管理について、丁寧に聞き直しました。
そので、1の女性団員がいがけない話をしました。
「裕子さんがいなくなる数、私に変なことを言ったんです」
はを乗りしました。
「どうも寄付が漏れているみたい、と」
裕子は会計担当でした。几帳面な彼女が、帳簿の数字の致に気づいていたのです。女性団員によれば、裕子は何もかけて帳簿を計算し直し、誰かを問い詰めにくつもりだと言っていたそうです。
「これは黙って見過ごせないわ」
裕子はそう言っていたといいます。
当、民たちはしいホール建設のために寄付を集めていました。
広告
裕福ではない労働者たちが、活を切り詰めて1円、2円と積みげた尊いおでした。
そのから、何かが抜け落ちていた。
裕子はそれを正そうとした。
そして数、彼女は美と恵里とともに姿を消しました。
もしかすると、美と恵里は、裕子がその秘密を打ちけた相だったのかもしれません。緒にってしまったからこそ、緒に消されなければならなかったのです。
のので、散らばっていたピースが組みわさり始めました。
漏れていた寄付。
会計担当の裕子。
しいホールの事。
そして、その寄付を管理していた物。
は事誌をきました。
そこには、はっきりと1の名が記されていました。
建設委員、渡辺茂。
渡辺は会館建設を取り仕切り、寄付を管理していた物でした。さらに、建設資材の会社を経営する実業でもありました。事現の構造を熟し、作業員をかすにありました。
に3を隠し、コンクリートの壁で塞ぐことができる条件を、彼はすべて備えていました。
しかし、にはもう1つ疑問がありました。
遺体を運び、壁をて、痕跡を消す作業。それは、渡辺1でできることではありません。
必ず、力仕事に慣れた誰かのがあったはずです。
は作業員名簿を調べました。
広告
1991の事に参加していた作業員のに、1の名がありました。
浩司。
型枠でした。コンクリートを流し込むための枠を組む職です。にあの壁をてる作業に、最もい所にいた物でした。
事誌には、が作業をほぼ1で受け持っていたがかったと記されていました。
はを探し始めました。
しかし、その調査はさらに奇妙な事実へつながりました。
浩司もまた、姿を消していたのです。
2008、をたきり帰ってこなかった。
当は、借に追われて夜逃げしたと見られ、きな捜査にはなりませんでした。酒とギャンブルでに困っていた男だったからです。
しかしは、そうはいませんでした。
3のに最もい所にいた男が、また忽然と消えている。
これは偶然ではない。
はの族を訪ねました。
老いた妻は、最初はくを閉ざしていました。けれど、3の女性の遺骨が見つかった話を聞くと、顔を真っにし、しずつ話し始めました。
は貧しい雇いだったのに、ある期から妙に羽振りが良くなったといいます。した仕事もしていないのにが入り、も買い、子どもの学費にも困らなくなりました。
酒をむと、彼はよくこう言っていたそうです。
「俺がをけば、破滅するやつがいるんだ」
そして、折、文化会館の方を見ながら、く笑っていたといいます。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
消えた水色の妹
2001年、姉の結婚式の日に突然姿を消した24歳の看護師・小百合。 財布も携帯電話も残したまま、非常口へ向かった彼女の最後の姿だけが、防犯カメラに記録されていた。 家族は7年間、必死に彼女を捜し続けた。 そして夫となった男も、誰よりも協力的な家族として小百合を探し続けていた。 しかし、引っ越しを前に開けられたベランダの作業部屋で見つかったのは、誰も予想しなかった7年前の痕跡だった。 壁の中に隠されていた一本の携帯電話と、残されたわずかな言葉。 あの日、結婚式の裏側で何が起きていたのか。 そして、最も信頼されていた人物が隠していた真実とは――。ミステリー|行方不明1.9萬字5 836 -
完結第10話
トウモロコシ畑に消えた母
1999年、長野の静かな村で起きた不可解な事件。 朝のトウモロコシ畑で発見された農家の女性は、周囲から「親孝行な婿」に守られていたはずだった。 しかし、現場に残された小さな痕跡と、15年後に開かれた古い証拠が、誰も疑わなかった男の裏の顔を暴いていく。 家族を支える優しい婿の仮面の裏に隠されていたものとは――。 長い年月を経て、静かな村に埋もれていた真実が、ついに明らかになる。ミステリー|行方不明1.5萬字5 262 -
完結第11話
最後の定期券
30年間、毎朝駅へ向かい続けた父。 定年後、突然姿を消した彼の行き先は、30年前に消えた小さな駅だった。 娘が父の部屋で見つけた一枚の古い切符と、「必ず迎えに行く」という謎の言葉。そこから、父が誰にも話さなかった過去が少しずつ明らかになっていく。 父が30年間守り続けていた約束とは何だったのか。 そして、あの日駅から消えた少女の行方は――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 609 -
完結第11話
飛騨の農家に消えた嫁
1995年、岐阜県飛騨地方の山あいにある和牛農家へ嫁いだ27歳のゆき子。 よく働き、誰にも逆らわず、慣れない村で必死に暮らしていた彼女は、ある冬の日、牛舎へ向かったまま姿を消した。片方だけ残された長靴。消えた青いジャンパー。そして、家族が語った「自分から出て行った」という言葉。 警察は深く調べることなく、失踪は家出として処理された。 それから8年。村では何事もなかったように季節が巡り、義父の幻蔵は“誠実な畜産農家”として周囲から慕われ続けていた。 しかし、牛舎裏の堆肥の山から見つかった人骨が、止まっていた時間を動かす。 長年誰も近づけなかった壺のそば。夜ごと繰り返された寝言。真冬の洗車場で執拗に洗われた軽トラック。 誰も探さなかった若妻は、8年間どこにいたのか。 そして、家の体面を守るために義父が隠し続けたものとは――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 380 -
完結第11話
6秒の着信
2019年10月、紅葉の雪岳山を訪れた若い恋人、ジフンとアリン。 翌年に結婚を控えた2人は、記念写真を残すために山へ向かった。登山口の防犯カメラには、笑い合いながら歩く幸せそうな姿が映っていた。 しかし午後3時過ぎ、2人は分岐点でなぜか正反対の道へ進む。 そして、そのまま山の中から忽然と姿を消した。 大規模な捜索が行われても、足跡も荷物も見つからない。事故なのか、失踪なのか、それとも誰かが2人を誘い込んだのか。真相が分からないまま、3年の月日が流れていく。 やがて2022年、登山道近くの泥の中から、アリンの携帯電話が発見される。 そこに残されていたのは、最後に撮られた1枚の写真と、わずか6秒間の通話記録。 「そのまま来てください。彼も着きました」 その短すぎる声が、3年間“山で消えた”と思われていた恋人たちの、本当の行き先を暴き始める――。ミステリー|行方不明1.6萬字5 397