"壁の中の合唱団" 第4話
誰かが冗談を言いましたが、誰も笑いませんでした。理由の分からない悪寒が、の空気に漂っていました。
作業員たちは慎に壁を壊すことにしました。
ハンマーを打ち込むと、古いレンガがぼろぼろと崩れました。いがった埃が収まるのを待ち、1の作業員が懐灯を差し込みました。
壁の向こうは、1がやっと入れるほどの狭い空でした。
20、1筋のも届かなかった暗です。
懐灯のが、そののへ滑り込んでいきました。
次の瞬、作業員はそので凍りつきました。
「うわああっ!」
鳴がに響き渡りました。
懐灯がに落ち、カランカランと乾いた音をてました。の作業員たちが駆け寄り、同じようにを覗き込みました。そして、全員が顔を真っにしました。
狭い空のに、の骨がありました。
それも1体ではありません。
古いに絡みつくように、3分の遺骨が並んでいたのです。
褪せた布切れのに、さなヘアピンが1つ、懐灯のを受けてきらりとりました。ずっと昔、若い娘が髪に差していたもののようでした。
20、分いコンクリートのに閉じ込められていた真実が、ようやく姿を現した瞬でした。
解体作業はそので止まりました。
作業員たちはから逃げるようにてきました。
広告
が震えて、タバコにもつけられない者もいました。
らせを聞いた会館の関係者たちが集まりました。財団の理事、役員、職員、配の団員たち。誰もが言葉を失っていました。
1の女性団員がそのにへたり込み、震える声で呟きました。
「私たち、20も、あのたちのでっていたの……」
その言葉が、敷のにく響きました。
通報を受けた警察が駆けつけ、会館の敷には黄い規制線が張られました。
解体現は瞬にして事件現へ変わりました。記者たちも押し寄せ、カメラのレンズがの入に向けられました。
文化会館のから複数の遺骨が見つかった。
その噂は瞬くに川崎の町へ広まりました。野次馬たちはフェンスの向こうから首を伸ばし、ざわめきながら現を見つめました。
その混乱の、1の初老の刑事が波をかき分けて現へ入ってきました。
健でした。
20、3の女性の失踪事件を担当した若い刑事は、今では髪にいものが混じり、目尻にいしわを刻んだベテランになっていました。
らせを聞いた瞬、の臓はきくねました。
まさか。
そういながらも、彼は現へ駆けつけずにはいられませんでした。
へりると、輩の刑事が懐灯で狭い空を照らしてくれました。
広告
はしばらく無言でを見つめました。
3体の遺骨。
褪せた。
そして横に落ちていたさなハンドバッグ。
の目が、そのバッグで止まりました。
20、彼が帳にいた文字が、のに蘇りました。
3、同刻、同じ所で失踪。
はく息を吸いました。
それは直ではありませんでした。確信でした。
20、のように消えた3。裕子、田美、佐藤恵里。
彼女たちは、会館から歩もへていなかったのです。
毎民たちがをっていた建物の、いコンクリートの奥に、3は20も閉じ込められていました。
は拳をく握りしめました。
「やっと……見つけた」
喉が詰まり、それ以の言葉はませんでした。
遺骨は慎に収容されました。3はい布で覆われ、1ずつから運びされました。20ぶりに初めて太陽ののへるのりでした。
遺骨はすぐに鑑定へ回されました。
法医学者たちは、骨の1つ1つに番号を振り、丁寧に調べました。い歳が流れていましたが、骨はくのことを語りました。
3とも女性。
齢は、40歳の女性が1、20代半の女性が2。
期はおよそ20。
そして、蓋骨にはらかな損傷が残っていました。何かいものでく殴られ、陥没した痕です。3とも似た位置に同じような傷がありました。
病気でも事故でもありませんでした。
誰かので命を奪われたことはでした。
元確認のため、は20の失踪記録を引っ張りしました。
広告
おすすめ作品
-
完結第8話
214号室の沈黙
1999年、名古屋の古いホテルで夜勤をしていた客室係・高橋ゆり子が、勤務終了前に忽然と姿を消した。 私物は更衣室に残されたまま。清掃カートも廊下に置かれたまま。警察は周辺の公園や空き地、廃墟まで捜索したが、彼女の行方は分からなかった。 最後に映っていたのは、2階の廊下で同僚の設備係と短く言葉を交わす姿。 その後、ゆり子は214号室へ向かい、二度とカメラに映ることはなかった。 やがてホテルでは、ある部屋に泊まった客から奇妙な苦情が相次ぐ。シャワーを浴びた後、皮膚に異変が出るというのだ。 水道の異常を調べるうち、配管業者がたどり着いたのは、屋上にある古い貯水槽だった。 水槽の底に残されていた青い布、髪の毛、そして小さな痕跡。 誰も探そうとしなかった場所に、失踪した清掃婦の最後の真実が沈んでいた――。ミステリー|行方不明1.2萬字5 0 -
完結第7話
木の墓の少女
2021年秋、名古屋の高校生5人は、廃れた農村建築を記録する学校プロジェクトのため、岐阜県の山中にある古い廃農場を訪れた。 崩れかけた母屋、苔むした倉庫、森に飲み込まれた敷地。そこで彼らが見つけたのは、まるで人の形をしたように歪んだ一本の杉の木だった。 不気味なこぶの中央には、小さな裂け目があった。 ライトを当てた瞬間、木の奥に見えたのは、自然のものとは思えない白い影。警察の調査によって、その木の内部から、人間の骨格が発見される。 遺骨の身元は、20年前に「東京へ行った」とされ、行方不明になっていた22歳の女性・南沙織。 彼女は本当に自分の意思で農場を去ったのか。なぜ遺体は木の中に飲み込まれていたのか。そして、当時農場にいた父子は何を隠していたのか。 20年間、年輪の奥に閉じ込められていた少女の秘密が、一本の木によって静かに語られ始める――。ミステリー|行方不明1.0萬字5 0 -
完結第11話
新潟校十二年の悪闇
1992年、新潟県小学校女教師失踪事件|12年後、校長の醜悪な裏顔がついに暴かれた 1992年、新潟の田舎町小学校で、一人の30代女性教師が忽然と姿を消した。 通学路、自宅、学校施設、周辺の山林……警察が徹底的に捜索したものの、彼女の痕跡は一つも見つからなかった。 当時、失踪は「自発的な家出」「遠方への転居」と断定され、事件は迷宮入り。 誰もがこの謎を忘れかけた12年間。 誰も信じなかった真実が、ついに白日の下に晒される。 穏やかで人格者と慕われていた校長先生。 その裏に隠された、人間性を失った醜悪な素顔。 女教師が二度と帰らなかった本当の理由、閉ざされた学校の闇、隠蔽された12年の悪事―― 全ての真相が今、明かされる。因果応報|裡の顔|遺體発見|行方不明1.7萬字5 293 -
完結第6話
7時15分の黒い日記
昭和56年、浜松市で29歳の銀行員・吉田道子が忽然と姿を消した。 毎朝7時15分、同じ停留所から同じバスに乗り、銀行へ向かっていた道子。真面目で几帳面な彼女は、ある日から家の前に残る見慣れない吸い殻と、背後からの視線に怯えるようになる。 「誰かに見られている気がする」 そう夫に訴えても、気のせいだと片づけられた。 そして11月の夜、親睦会の帰りに乗ったはずのバスを最後に、道子は家までわずか300mの場所で消息を絶つ。 事件は未解決のまま7年が過ぎた。 昭和63年、1人のバス運転手の遺品から十数冊の日記が見つかる。そこに記されていたのは、道子を3年間見つめ続けた男の、あまりにも歪んだ記録だった――。ミステリー|行方不明9.4千字5 238 -
完結第6話
43番の帰還
9年前、京都の住宅街で小学2年生の少女・彩佳が忽然と姿を消した。 公園で遊んでいたはずの娘は、夕方になっても家に戻らなかった。警察も住民も必死に捜索したが、目撃者も手がかりもなく、事件は未解決のまま時間だけが過ぎていく。 そして9年後のある朝。 1人の少女が、古びた行方不明者のチラシを手に警察署へ現れる。彼女は受付で静かに告げた。 「私は……彩佳です」 戻ってきた少女の手には、「43」と刻まれた小さな真鍮のタグがあった。さらに彼女は、自分が名前ではなく番号で呼ばれていたこと、他にも“42”や“44”がいたことを語り始める。 単なる誘拐ではなかった。 家族の家に隠されていた地下室、壁に刻まれた迷路、死んだはずの男の名前、そして母が隠していた「クレア」という過去。 9年間消えていた少女は、なぜ今になって戻ってきたのか。 そして彼女が最後まで忘れなかった「消さないで」という声の正体とは――。因果応報|人生逆転|行方不明9.0千字5 1009 -
完結第10話
白いドレスの告白
昭和57年、東京のホテルで行われた一つの結婚式。 純白のドレスに身を包んだ花嫁・田中京子は、幸せの絶頂にいるはずだった。だが披露宴の途中、高校時代の同級生たちが口にしたある名前を聞いた瞬間、彼女の表情は凍りつく。 佐藤美智子。 8年前、昭和49年の伊豆旅行中に忽然と姿を消した、京子の親友だった。 「美智子ちゃん、ごめんなさい……」 化粧室で泣き崩れる花嫁の声を、偶然聞いてしまった同級生。その一言をきっかけに、未解決のまま眠っていた失踪事件が再び動き出す。 親友との再会、伊豆の夜、月明かりの展望台。 8年間、誰にも言えなかった嫉妬と罪が、花嫁の白いドレスの下から静かにこぼれ落ちていく――。ミステリー|行方不明1.5萬字5 586