"十万円レンズの末路" 第3話
聡子はそれを拾いげた。
最初はただのレシートだとった。けれどをいた瞬、目にび込んできた文字に息が止まった。
賞与細の控え。
聡子の線は、支額の欄で止まった。
減どころか、例より幅に増えている。さらに「特別当」の文字まである。
「……え?」
臓がどくんとねた。
聡子はそのにち尽くした。
嘘だった。
全部、嘘だった。
私には「減された」とへらへら笑い、費を削らせ、自分は10万円のレンズを買い漁る。その裏で、自分だけは潤沢な資を隠し持っていた。
その事実が、たい氷のように聡子の全を駆け巡った。
そのの夜、義雄はいつも通り、酒の匂いをさせて帰ってきた。
「ただいま。見てよ、これ。しい脚。型落ちでかったんだわ」
嫌でリビングに入ってきた義雄は、テーブルのにどさりとしい材を置いた。
聡子は無言のまま、その脚の真横に、あの細をすっと差しした。
「これ、落ちていたよ」
静かな声だった。
けれど、血がうようにかった。
義雄のきがぴたりと止まった。
「ああ、それな。会社の違いじゃないか」
線が泳いだ。額にうっすら汗が浮いていく。
「減だって言ったよね。きついから費を削れって、私に言ったよね」
「いや、それはな話で、これからがる予定なんだよ」
苦しい言い訳をねる義雄の元には、まだみのつまみのかすがついていた。
広告
聡子は歩、義雄へづいた。
「増えてるよね。かなり」
義雄はバツが悪くなったのか、突然声を荒げた。
「俺がで必に稼いだだろ! おみたいな、にいるだけの女に贅沢させる義理はねえんだよ!」
その瞬、聡子の胸の奥で何かが完全に切れた。
義雄にとって、聡子は妻ではなかった。
養ってやっている。
自分よりにいる。
そうっていたのだ。
聡子はりで震える指先を隠すように、細をそっと畳んだ。
叫びたい衝はあった。
けれど叫ばなかった。
その代わり、の奥にたい決が満ちていった。
「わかった。義雄さんの言い分は、よくわかった」
義雄はまだ嫌そうにを鳴らしていた。
「分かればいいんだよ。こっちだってストレス溜まってるんだから」
聡子は何も答えなかった。
嘘は、はっきりと形になった。
そして同に、夫婦という関係が修復能なところまで壊れた音がした。
聡子の瞳の奥で、静かだが消えることのない反撃の炎が灯った。
そのから、聡子は理の妻を演じることにした。
「今夜は撮仲とみ会だから遅くなるわ」
鏡ので価なジャケットを羽織る義雄に、聡子は穏やかに微笑んだ。
「わかりました。楽しんできてくださいね」
義雄は満そうに頷いた。
「そういう素直なところは悪くないんだよ」
聡子は微笑んだまま、その言葉を聞き流した。
広告
玄関のドアが閉まる音を確認すると、聡子は台所へ戻った。元の鶏胸肉を淡々と切り、保袋に分けていく。これまで義雄のためにしてきた節約のつつが、急に馬鹿らしくえた。
夜、義雄の勝ないびきがリビングまで響く頃、聡子はノートパソコンをいた。
画面に映しされたのは、ライター業の収益画面だった。
聡子は表示された数字を、の消えた瞳で見つめた。
「今は、義雄さんの収の3倍ね」
声にすと、その事実がよりはっきり形を持った。
義雄はにもっていないだろう。
自分が見している妻が、夜に文章をき続け、自分をはるかにしのぐ収入を得ていることを。
聡子は引きしの奥から、1冊のファイルを取りした。
には、義雄が隠していたボーナス細のコピーが入っている。カメラレンズ、フィルター、脚、撮旅費、み会の領収も理されていた。
さらに、聡子自の座の写しもあった。
副業収入の振込履歴。
計の支払い記録。
マンションの更料や費が、聡子の座から支払われていることが分かる類。
「証拠は、これで全部」
聡子はファイルを閉じた。
パチン、という音が、静まり返った部にたく響いた。
それから聡子は、最の台本をきげた。
画面の文字数が増える。保ボタンを押す。
さなクリック音が響く。
それは、義雄が信じていた泰な活が崩壊するカウントダウンの音でもあった。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
同窓会の見栄の争い
何十年ぶりの同窓会、タワマンや高級車を自慢する同級生たちに私たちは「貧乏人」と嘲笑われた。 稽古子や直子は私の古いワンピースを睨み、夫の地味な服装まで見下し、あざ笑い続ける。 「一生庶民暮らしで可哀想」「夫も出世しない無能」と悪口を浴びせられ、恥ずかしくて席を立ちたかった。 数分後、ロビーから夫が現れた。 専用 SP、黒服秘書を従え、業界全員が知る佐藤ホールディングス会長の姿。 同級生たちの笑顔が一瞬で凍り、絶句する声が響く。 「まさか… 毎日地味な夫が日本有数の資産家だったの?」 虚栄と見栄で人を測る同級生たちは青ざめ、謝罪の言葉も出ない。 宝石も豪邸も何も要らない、30 年間変わらず私だけを大切にする夫こそ、私の最高の宝物。 見栄に狂わされた人々の末路と、本物の幸せの意味を描いた衝撃ストーリー、最後まで必見!人生逆転|金銭問題3.9萬字5 126 -
完結第8話
化粧品社長の復讐
30 年前、親友に夫を奪われた私。業界パーティーでまさかの再会! 「うちの娘、年収 3000 万の人気美容ドクターなのw」 元夫「独身の貧乏女の老後は惨めだなw」 2 人揃って私を嘲笑ってくる。 私は穏やかに一言「娘さんのクリニック、契約解除日までよろしくね!」 2 人「えっ??」 実は娘のクリニックに数々の不正が発覚して… 復讐劇の結末が衝撃的年金|金銭問題1.1萬字5 194 -
完結第5話
「別に停めてもいいじゃん」と開き直ったママ友の末路
うちの契約駐車スペースに毎日無断駐車するマンションのママ友 注意しても「空いてるんだから別に停めても良いじゃん w」と開き直り、逆ギレまでする始末 旦那の海外転勤が決まった瞬間、仕返しの策が浮かんだ 3 段式駐車場を一番下まで下げ、そのまま管理会社に連絡して頑丈にロック固定 宮本さんの車を地下に閉じ込めたまま家族で海外へ引っ越した結果… 迎えに行けず旦那と大喧嘩、駐車場代未払いや浪費も全部バレて夫に全財産管理される最悪結末 w 悪意を持って他人の権利を踏み躙る人には、自業自得の報いが訪れる金銭問題|修羅場6.8千字5 80 -
完結第28話
70 円扱いされた 31 万仕送り~贔屓する義両親との決別
毎月 31 万円、節約しながら義両親へ仕送りを続けていた嫁。 だけど義両親は義妹の 20 万円だけを褒め、私の 31 万を「たった 70 円」と侮辱。 理不尽な言葉に我慢の限界、一言「じゃあ仕送りやめます」と宣言。 翌月から完全に送金を断ったら、義実家の生活が一気に崩壊し… 義両親の豹変ぶりがリアルで胸がスッキリ! 親族の偏った贔屓、見返りを求める義両親に苦しむ嫁必見の実話。嫁姑|夫婦|親子関係|金銭問題4.3萬字5 621 -
完結第5話
裏表のある嫁と、優しい次男嫁の差
65000 円の年金暮らしの私に長男嫁「頼られたくないんでw今すぐ絶縁して!」私「本当にいいのね?」長男嫁「え?」 夫が他界し、都内で月 6 万 5 千円の年金だけで慎ましく一人暮らしをしていた私。 長男が 38 歳で連れてきた婚約者は、初対面では明るく礼儀正しく、安心していたのに、入籍祝いにルクルーゼの食器セットを渡した瞬間、態度が一変した。 「結婚祝いは最低 100 万円の現金が普通」 年金生活の私を貧乏人と見下し、ソファにふんぞり返り「老後の面倒なんて絶対見ない、これから一切頼らないで」と言い放つ。 後に私が自転車にはねられ骨折入院、保証人が必要で仕方なく彼女に来てもらった時も、「わざわざ呼び出すなんて最悪」「入院費払えるんですよね?」と金のことばかり問い詰め、最後には「今すぐ絶縁しろ」と突き放した。 私は静かに録音機を起動し、「絶縁で本当に後悔しないの?」と確認するも、彼女は「年金暮らしの貧乏人なんて頼るつもりもない、絶縁でいい」と即答。 入院リハビリの日々、何も言わず買い物や家事を助けてくれた優しい次男嫁。車が故障し電車で大量の食材を運んでくれる姿を見て、感謝の気持ちから新車をプレゼントした。 その車を見た絶縁済みの長男嫁が突然家に押しかけ、大声で怒鳴り散らす。 共働きで子供二人抱える次男夫婦に高級車など買えるはずがない、私がお金を渡したのが許せないと責め立てる彼女。 私が夫から相続したマンション 1 棟、アパート 3 棟の家賃収入で、数千万規模の資産を持っている事実を話した瞬間、彼女の顔が青ざめる。 結婚したのは長男の年収 1300 万目当て、ブランド品や海外旅行、高級車に乗りたいだけだと平気で暴露した言葉を、玄関の陰に隠れていた長男が全部聞いていた。 金銭欲に狂った嫁との結婚は短期間で離婚に。慰謝料も財産分与もなし、今はコンビニバイトで暮らしていると聞いた。 一方、次男嫁と買い物に出かける穏やかな毎日が、私の一番幸せな時間になった。 人を金額だけで見下すと、最後に後悔するのは自分自身だ。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|金銭問題6.8千字5 108 -
完結第8話
中卒嫁の逆転婚礼
40歳の佐江は、夫の妹・奈々の結婚を心から祝福していた。 義両親にも大切にされ、奈々からも「お姉ちゃん」と慕われていた佐江。だが、奈々の婚約者一家と初めて顔を合わせた日から、空気は少しずつ変わっていく。 相手の両親は学歴を何より重んじる家柄。そして中卒で働き始め、自分の力で仕事を築いてきた佐江を、露骨に見下し始めた。 「中卒の方を親族席に入れるのは、うちの品位に関わる」 迎えた結婚式当日、控室で放たれた一言。 新婦の家族である佐江に、婚約者の両親は「帰れ」と言い放つ。逆らうなら破談だと脅す相手側。 奈々の幸せのため、佐江は黙って身を引こうとする。 しかし次の瞬間、ウェディングドレス姿の奈々が静かに口を開いた。 その一言で、式場の空気は一変する――。夫婦1.1萬字5 226 -
完結第20話
90% 減給の裏側:上場企業の権力とルール
会社が上場した後、私は何の過失もないのに給料を 90%減額され、追い詰められ退職届を提出した。 会長夫人は書類に適当にサインし、私を嘲笑い放った一言が今も耳に残る。 「会社は君がいなくても回る!」 彼女は親族の権力を濫用し、90 億円の産業ファンドを危機に陥れ、社員をスケープゴートに仕立て上げた。 私は黙って証拠を積み上げ、ルールとガバナンスを武器に歪んだ経営体制を一掃する。 権力で人を踏みつける傲慢な人間に、最後に待っている代償とは?退職金|金銭問題|修羅場3.0萬字5 86 -
完結第16話
月給 20 万の退職届
2 年間、毎日深夜まで単独でプロジェクトの全テストを担い、システムの根幹を守ってきた安曇あかり。 同じ部署の同僚は月給 100 万円前後、自分だけたった 20 万円。 部長の傲慢な搾取、成果の横取り、正当な評価の一切なし。 契約満了前日、人事が高額昇給とボーナスを餌に引き止めに来た時、彼女は一言も語らず退職届を机に置いた。 「君がいないとプロジェクトが回らない」 慌てた社長まで直に出向き、月給 120 万円、株式 5%、技術部長ポストまで提示してすがりつく。 だが彼女の心はもう動かない。 実力を正当に評価する新企業に内定を得、月給 70 万円からスタートする新生活が待っている。 彼女が去った後、無理なコード改修を繰り返した元会社は次々と致命的バグを発生。 1 億 5000 万円の違約金、口座凍結、部長解雇、会社倒産へと転がり落ちる。 一方あかりは僅か入社半年で技術副部長、月給 100 万円に昇進。 「本物の才能は、泥の中に埋もれても輝きを失わない」 搾取されるすべてのサラリーマン、不当な職場に悩む人必読の爽快復讐キャリア小説。 理不尽な環境に立ち向かい、自分の価値を取り戻す女性エンジニアの成長物語。退職金|金銭問題2.5萬字5 114